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■ 第十六話 「並んだ影が途切れる時」

「待て、朱!」


 竜星が叫んだ。


 だが朱は振り向かなかった。


 森の奥へ、そのまま走っていく。


 俺も一歩踏み出しかけた。


 けれど――


 足が動かなかった。


 さっきの光景が、頭から離れない。


 拳。


 鈍い音。


 倒れる人影。


 動かなくなる身体。


 それはゲームじゃなかった。


 画面の向こうでもない。


 目の前で、人が死んだ。


 しかも、友達の手で。


「……」


 竜星も動けないでいた。


 俺たちはただ、朱が消えていった森を見ていた。


 助けられた男が、ゆっくり立ち上がる。


「……あの子」


 かすれた声だった。


「行ってしまったのか」


 俺は頷いた。


「娘さんは、どこに」


 男は森の奥を指差した。


「山の廃砦だ」


 古い砦らしい。


 今は盗賊の巣になっているという。


「人数は?」


 竜星が聞く。


「……十人以上」


 重い沈黙が落ちた。


 竜星が顔を歪める。


「一人で行くとか……」


 無茶だ。


 完全に。


 俺は拳を握った。


 追うべきだ。


 そう思う。


 でも――


 さっきの光景が離れない。


 竜星が言った。


「……どうする」


 俺は答えられなかった。


 すると男が言った。


「無理にとは言わない」


 目はもう覚悟していた。


「本来は、私の問題だ」


 拳を握る。


「だが……」


 声が震える。


「娘は、まだ十歳なんだ」


 その言葉が胸に刺さった。


 十歳。


 まだ子供だ。


 俺は目を閉じる。


 頭の中で、朱の背中が浮かぶ。


 さっきの言葉。


『さっき人を殺した』


『だったら最後までやる』


 ――あいつ。


 覚悟決めてる。


 竜星が歯を食いしばる。


「……くそ」


 そして俺を見る。


「どうする、龍凱」


 俺は少し考えた。


 そして言った。


「……俺たちは戻る」


 竜星が驚いた顔をする。


「は!?」


 男も同じだった。


 俺は続ける。


「今の俺たちじゃ足手まといだ」


 悔しいが事実だ。


 さっきだって動けなかった。


 朱だけが戦った。


 竜星が何か言おうとしたが、俺は先に言う。


「ギルドに知らせる」


 男が苦く笑う。


「……誰も来ない」


「それでもだ」


 俺は言った。


「それが今の最善だ」


 竜星はしばらく黙っていた。


 そして小さく言った。


「……わかった」


 納得したわけではない。


 でも理解はしたらしい。


 俺たちは街へ戻ることにした。



 一方その頃。


 朱は森を走っていた。


 呼吸が荒い。


 胸が痛い。


 だが足は止めない。


 頭の中に浮かぶのは、さっきの光景。


 盗賊。


 拳。


 鈍い音。


 倒れる身体。


「……」


 拳を見る。


 少し震えていた。


 でも。


「……殺った」


 小さく呟く。


 殺った。


 殺ってしまった。


 人を殺した。


 普通なら、吐くかもしれない。


 震えるかもしれない。


 でも。


「……」


 胸の奥にあるのは――


 別の感情だった。


 恐怖。


 罪悪感。


 そして。


 怒り。


「娘さらったんだろ」


 拳を握る。


「だったら」


 歯を食いしばる。


「殺されても文句ねえよな」


 自分に言い聞かせるようだった。


 森の奥に、石の壁が見えてきた。


 崩れかけた砦。


 男の言っていた場所だ。


 朱は立ち止まる。


 深く息を吸う。


 拳甲を握る。


「……よし」


 覚悟を決めた。


 そして砦へ踏み出す。


◇◆◇◆◇


 その頃。


 街へ戻る途中の俺は、胸の奥に嫌な感覚を抱えていた。


 嫌な予感。


 理由は分からない。


 でも確かに感じる。


 ――朱が戻らない気がする。


 この時、俺はまだ知らなかった。


 この選択が


 朱の運命を大きく変えることになることを。

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