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■ 第十四話 「鍛冶屋とドワーフ魂」

「神様あああああああああ!!」


 朱の絶叫が宿の部屋に響いた。


 俺と竜星は同時に天井を見上げる。


 ……うん。

 神様はきっとどこかで笑っているに違いない。


 ドアの外から猫耳の受付少女の声が聞こえた。


「えっと……コップ置いておきますね……?」


「は、はい!ありがとうございます!」


 俺は必死に平静を装って答えた。


 カチャ。


 ドアの前にコップが置かれる音がして、小さな足音が遠ざかっていく。


 静寂。


 数秒後。


 俺と竜星は同時に朱を見た。


「……お前」


「……な、なんだよ」


「やっぱロリ好きだろ」


「好きだよ!!」


 開き直った。


 竜星が腹を抱えて笑い出す。


「こいつもう隠す気ねえ!!」


「いやだってさ!!」


 朱が立ち上がる。


「猫耳ロリだぞ!?好きになるだろ普通!!」


「普通じゃねえ」


 俺は即答した。


「あとロリって言うな。年上の可能性ある」


「……」


 朱が少し考えてから言う。


「……年上ロリ」


「概念作るな」


 俺は頭を抱えた。


「……もういい。今日は寝るぞ」


「明日は武器屋だ」


 竜星が頷く。


「モッスンのとこだな」


 朱もベッドに倒れ込んだ。


「武器楽しみだな……」


 こうして騒がしい一日は終わり、俺たちは眠りについた。



 翌朝。


『腹減った』


 三人同時だった。


 昨日あれだけ食べたのに、人間の胃袋は不思議なものである。


 宿で軽く朝食を済ませ、俺たちは街へ出た。


 朝の街は活気がある。


 荷車を押す商人。

 朝から依頼へ向かう冒険者。

 屋台の香ばしい匂い。


 完全に異世界の朝だ。


「おおー」


 竜星がきょろきょろしている。


「冒険者多いな」


「ギルド近いからな」


 俺は周囲を見ながら言う。


「武器屋もこの辺のはずだ」


 そして数分歩くと見えてきた。


 木製の看板。


 そこには大きく書かれている。


モッスン武具店


 店の奥からは――


 カン!カン!カン!


 金属を打つ音が響いていた。


 竜星の目が輝く。


「うおおおお!!」


「鍛冶屋だ!!」


 子供か。


 俺も正直ワクワクしているが。


 扉を押し開ける。


 ギィィ……


 中は熱気と金属の匂いに満ちていた。


 そして奥でハンマーを振るっているのは、小柄で筋肉質な男。


 髭もじゃ。


 完全にドワーフである。


 男がこちらを見た。


「おう」


 低い声が響く。


「昨日のガキどもか」


 モッスンだった。


 竜星が元気よく言う。


「武器できた!?」


「朝からそれか」


 モッスンが鼻で笑う。


「安心しろ」


「できてる」


 俺たち三人の目が輝いた。


「まじ!?」


「本当ですか!?」


「うおおお!!」


 モッスンは棚から布に包まれたものを取り出した。


「まずはお前だ」


 俺を指差す。


 布が外される。


 そこにあったのは――


 二本の黒いタガー。


 そして籠手。


 ハサミをベースにした独特の刃の形。


 籠手の内部には収納機構が組み込まれている。


 さらに鎖が内蔵されているのが見える。


「言った通り作った」


 モッスンがニヤリと笑う。


「まず装備してみろ」


 俺は籠手を腕に装着した。


 ……軽い。


 見た目よりずっと軽い。


「いい出来だろ?」


「すごいです」


 正直、想像以上だ。


 するとモッスンが言った。


「次に――魔力を込めてみろ」


「魔力ですか?」


「お前、魔法使えるだろ」


「武具にも魔力回路を仕込んである」


「流せば動く」


 俺は少し驚いた。


 そんな機能まであるのか。


「……分かりました」


 俺は籠手に意識を向ける。


 体の中の魔力を、ゆっくりと流す。


 すると――


 カチッ。


 小さな音がした。


「よし」


 モッスンが満足そうに頷く。


「そのまま、言った通りにやってみろ」


 俺は軽く手を握った。


 次の瞬間。


 シャキン。


 籠手の甲から、タガーの刃が飛び出した。


「おお……」


 思わず声が漏れる。


 さらに手をひねると、内蔵された鎖が動き、刃が引き戻される。


 竜星が叫ぶ。


「かっけええええ!!」


 朱も興奮している。


「忍者みたいだな!」


 モッスンが満足そうに腕を組んだ。


「次はそこのバカだ」


 竜星を指差す。


「お、俺か!」


 竜星が嬉しそうに前に出る。


 モッスンは棚の奥から、別の布包みを取り出した。


 それを作業台の上に置き、ゆっくり布を外す。


 現れたのは――


 二本の剣。


 刃は片手半剣。だが普通より少し長い。


 いわゆる片手半剣だ。


 竜星の目が輝いた。


「おおおお!!」


 完全に少年の顔である。


「二刀流できるように軽めに作ってある」


 モッスンが言う。


「だが刃はちゃんと鍛えてある」


 竜星は恐る恐る一本を持ち上げた。


「軽っ!」


 驚いた声を上げる。


「それでいて折れねえ。振ってみろ」


 竜星は軽く振る。


 ヒュン。


 空気を切る音がした。


「うわ、振りやすっ!」


 さらにもう一本を持つ。


 そして両手で構えた。


「おお……」


 俺も思わず声を漏らす。


 似合っている。


 竜星は嬉しそうに言った。


「かっけえ……」


 モッスンがニヤリと笑う。


「気に入ったか」


「めちゃくちゃ!」


 竜星が元気よく頷いた。


「じゃあ最後だな」


 モッスンは今度は少し重そうな包みを持ってきた。


 それを机の上に置く。


 朱がごくりと唾を飲んだ。


 布が外される。


 そこにあったのは――


 拳甲(ガントレット)だった。


 金属製の籠手。


 だが普通の防具とは違う。


 拳の部分が厚く、打撃用に強化されている。


 さらに指の関節部分には可動構造があり、握りやすそうだ。


「拳闘士なんだろ?」


 モッスンが言う。


「だから拳用だ」


 朱が目を輝かせる。


「おお……!」


 手に取る。


「重っ……いや、ちょうどいい!」


 装着して拳を握る。


 ギシッ、と金属が動く音がした。


「殴ってみろ」


「え?」


「そこの木の板」


 モッスンが壁際の木材を指差す。


「いいんですか?」


「いいからやれ」


 朱は少し距離を取り――


 拳を振り抜いた。


 ドン!!


 鈍い音が響く。


 木の板にヒビが入った。


「おおおお!!」


 朱が叫ぶ。


「すげえ!!」


 拳を見つめる。


「痛くない!」


「当たり前だ」


 モッスンが鼻で笑う。


「衝撃吸収構造入れてある」


 竜星が羨ましそうに言う。


「いいなそれ」


「交換するか?」


「やだ」


 即答だった。


 俺は苦笑する。


 三人とも完全に少年だ。


 モッスンが腕を組んだ。


「どうだ」


「気に入ったか」


『最高です!』


 三人同時だった。


 モッスンが満足そうに頷く。


「それでいい」


 そしてふと聞いてきた。


「金はあるのか?」


 俺は昨日の報酬を思い出す。


「あります」


「白金貨が……」


「待て」


 モッスンが手を上げた。


「白金貨?」


「……はい」


 モッスンが少し目を細める。


「ガキにしてはずいぶん持ってるな」


「……まあ色々ありまして」


 俺は曖昧に答えた。


 モッスンは深く追及しなかった。


「まあいい」


「武器三つ」


「籠手一つ」


「特注も入ってる」


 指を折りながら計算する。


「……金貨三枚でいい」


 俺たちは固まった。


「安くないですか?」


 思わず聞く。


 モッスンは鼻を鳴らした。


「材料持ち込みだったろ」


「それに――」


 ニヤリと笑う。


「久しぶりに面白い注文だった」


 少し照れくさそうに言った。


「腕が鳴った」


 俺は少しだけ嬉しくなる。


「ありがとうございます」


 金貨三枚を渡した。


 モッスンが受け取る。


「大事に使え」


「壊れたら持ってこい」


「直してやる」


 俺たちは同時に頭を下げた。


『ありがとうございました!』


 武器屋を出る。


 太陽が少し高くなっていた。


 竜星が剣を見ながら言う。


「冒険者って感じしてきたな」


 朱も拳を握る。


「強くなった気がする」


 俺は自分の籠手を見る。


 確かに。


 昨日までとは違う。


 そして竜星がニヤリと笑った。


「よし」


「初依頼行くか」


 朱が頷く。


「行こう」


 俺も笑う。


「……冒険の始まりだな」

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