監視生活も楽じゃない
「は?、、、、薫、どう言う事?アルバが警察の監視になったって」
月曜日の朝、校門に立っていた薫に声をかけた光。
薫は真剣な顔をして光に伝えた言葉に、意味不明、と言う顔をしながら聞き返す。
それに、冷や汗を垂らしながら、再び説明をする薫。
「それが金曜日の時に襲われたでしょ?その時に監視カメラにアルバが映っていたからって事で、次も何かがあるかもしれないからって、、、、あとは多分半分疑われてる、っぽい」
「何それ、意味分かんない」
そう、監視カメラに映った映像を見た警察は、アルバを暫くの間監視する事を宣言した。
現在も朝から警察からの監視をされ続けており、行動が制限されてイラついていた。
光に監視が付いて居ないのは、家が関係しているのは日から自身がすぐに気づく。
「教えてくれてありがとう、薫」
「ううん。それとアルバからなんだけど、迷惑かけてごめん。だって」
「迷惑だとは思ってないんだけどな」
「俺もそう言ったんだけど、、、、って俺今から授業だからもう行くね!」
「おう!」
薫は光の元から立ち去って中等部へと向かった。薫はアルバから言われて居た。
あの日、光の部屋の中で。
『え?、今、何て?』
『だから、アイツらを集めて秘密基地に居とけ』
『話の意図が分かんないんですけど!』
『だから!お前は死ぬ。アイツらと居れば大丈夫だ』
『でも、それじゃあ 『俺の心配なんて必要ない』ッ、!』
『分かったな?』
『、、、、、、、、はい』
拒否権のない圧力に負けた薫はそう返事をした。
アルバからの願いだと理解していたからだ。だがそれと同時に年下だから何も出来ない自分に歯痒さを覚えていた。
アルバと薫の間には強い絆はないが、薫はアルバを大切なリーダーだと思っていた。
「、、、、そう言えば、何であのマフィア達はアルバを狙ってたんだろ」
1人になった光は教室に向かいながら風で崩れた髪を整えながら、先日の事を思い出す。
「ボスの所、とか言ってたしアルバを欲してる人が居る??、、、、それでもあそこまで必死になる?」
光は自分が貶した男ことブルックスの事を思い出しながら、何故狙われているのか、何故あんなにも必死だったのかを考える。
頭の中で、ふとある情報が思い浮かぶ。それは、昨日双葉から教えて貰った情報だった。
「、、、、ぁ、アルバって養父さんが誰かに殺された、んだっけ」
アルバの養父・闇雲光明の事だ。双葉が独自で調べたアルバの情報を覚えていて良かったと思うと同時に毎回何処からその情報を手に入れているのか不思議に思う光だった。
教室に着いて挨拶をし、自分の席に座り教科書などを出しながら頭の中で考えを続ける。
「(確か、結構な富豪だったんだよね?養父さんって、、、、じゃあもし、何か誰かにとっては負の情報を手に入れてたり、とかだったら?)」
SFチックな考えをしているな、と思いながらもそんな想像が辞められない光。
そんな考えがまさか殆ど当たっている事に気付いてはいない。
「(じゃあ、もしそのせいで誰かに殺害されていて、そのデータをアルバが持っていたら、、、、狙われるか!、それにアルバって頭がとっても良いらしいから、その頭脳自体を狙った輩も居るかもしれない)」
ある訳ないかもしれない、考えたくもない想像が頭の中で勝手に繰り広げられている光。
光自身、誰かに狙われるなんて言う事が辛いと知っているからこそ、アルバがそのせいでまた自己犠牲を払おうとしているんだと思うと何も出来ない自分自身に怒りが湧く。
「(何か、自分で出来れば良いんだけどな)」
そう頭の中で呟いた光は、教室に入って来た先生を見て立ち上がり授業を始めるのであった。
だが、この彼の呟きが本当に現実になる事をこの時の彼はまだ頭の中で構想していなかったのであった。
「、、、、あのさ、教室内だったら安全だし外出てくれよ」
「そう言う訳にはいかない。もしもの事を考えてだ」
「、、、、チッ」
監視生活が始まった事で下手に動ける状況下に置かれてしまったアルバ。刑事からの堂々たる宣言にイラつきを覚える。
「(だが、これで光に危害が加わる事はない、、、、か)」
光の護衛の事を思い出し、自分も監視下に置かれれば暫くは平穏に過ごせる、と算段を打ち椅子に座る。
だがそれでも、刑事達に監視されていると言うだけでストレスがついてしまっている。その前に監視下に置くと宣言された時の事を思い出すと、吐き気を催してしまうアルバだった。
『何だよ、取り調べか?俺は被害者なんだがな』
『おいおい、そんな減らず口を叩いて良いのか?今回は我々がわざわざ監視下に置くと提案しているんだ』
『ハッ、海外かぶれのオッさんが何言ってるんだ』
警察の前でも軽口を叩くアルバ。そんなアルバを前にしてもイラつかず、寧ろ笑みが出ている刑事が1人いた。その刑事は徐に懐から数枚の写真を取り出した。
その写真を見てアルバはすぐに顔を顰めて視界に入れない様に背ける。
『とある筋から入手したもんだ。お前、ブルックスにこんな事をされてたんだな』
『!、警部、それは』
『黙れ』
『ッ』
『そんなもん見たくもねー』
『そりゃあそうだろうなぁ笑、、、、自分が犯されてる写真なんかな』
そう、刑事こと馬場はアメリカの警察に居た時の知り合いから入手した幼い頃のアルバがブルックスとその仲間に犯されている写真を机に並べて居たのだ。
それは大人の男でも見るに耐えない写真でその場に居た刑事2名は目を逸らした。
その写真を見たアルバは、その時の事を思い出して頭の中でフラッシュバックし、苦しそうにしていた。
『お前の安全の為に監視を付けるんだ。感謝して欲しいぐらいだ』
『警部、それぐらいにしましょう。ひとまず、彼を病院に連れて』
『チッ、分かった。連れてけ』
若手の刑事の提案に渋々受け入れ舌打ちをする馬場。
若手の刑事に連れられて病院で治療を受け終わったアルバは、心配で来ていた薫と合流する。
椅子に座り、顔を下に向けていたアルバに心配そうな顔をして近づく薫。
『アルバ!』
『、、、、薫』
『大丈夫ですか?』
『あぁ、、大丈夫だ』
『、、、、』
『なぁ、薫』
『?、何ですか?』
『アイツ、光が羨ましい。俺は』
『え?』
『だって、あんな簡単に飛ぶ事が出来る。俺には無理だ。光は光るある所でしか居れない、、、、俺は闇のある所でしか生きていけないんだ』
『それは』
『俺は所詮は囚われている。光るある所になんていけない。アイツが眩しく見える』
『アルバ、、、、』
アルバの諦めに近い姿を見てそんな事ない!と心の中で叫びながら泣きそうになる薫。
アルバは外を見て太陽の明るさが、光の眩しさに似ているなと思いながら、あんな場所には到底行けないなと思うと同時に、光を守らないといけないと思うのであった。
その2人の間に流れる時間は長くそれでいて暗いものだった。
「、、、、アイツは、大丈夫だろうか」
授業を受けながらボソッと呟くアルバ。養父の遺言の通りに守らないとと言う意思よりも今は、アルバ自身の意思が守りたいと言う意思に変わっている事に本人は気付いていない。
今のアルバにとってはただの保護対象ではなくなってきているのだ。
「?、視線?警察、じゃねーよな」
体育の授業で感じた視線の違和感にアルバは動きを止める。
その視線を感じた先に意識を向けると、40代ぐらい外国籍の男が木の陰からアルバを見つめていた。
バーンズの仲間か?とアルバは警戒しながら、授業を続ける。
「、、、、警察が気付いてない、って事はそれなりの手練れ、か」
アルバは頭の中でそう推理をし、いつでも接触してきて良い様に、鞄の中に入れていた銃を懐に含ませた。
もし、光をも狙っているのであれば容赦しないと言うばかりの目を一瞬男に向けた。
男はすぐに木の陰から姿を消した。
それから、2日経ち水曜日になっても男は接触して来なかった。
夕陽が差し込む教室で、帰り支度をしているアルバは不思議に思い、小声で呟く。
「、、、、こっちから接触してみるか」
昇降口を出る際に警察2名にトイレに行くと良い、姿を消し、監視している男を見つける。
校舎の陰で監視していた男はアルバが視界に居なくなり困惑しながら辺りを見渡す。英語を話しながら。
「何処行った?」
「此処だが?」
「!」
背後からのアルバは低い声で英語を話す。その言葉を聞き、男はビクッと体を震わせる。全身が一瞬凍る感覚になり、ギギギっと言う擬音が聞こえる様に振り返る。
その間も警察2名はアルバが戻ってくるのを待つ。
「ッ」
「お前何?俺監視して、バーンズの手下?それかブルックスの方か?」
「!、それは違う」
「じゃあ何だよ。もし、、光を狙っているんだったら容赦はしない」
カチャリと言う音を響かせ、男の腹部に銃口を押し当て低い声で言い放ったアルバ。
その一連の行動に、冷や汗を流し男は両手を上げ降参する意志を見せる。
それを見ても警戒は怠らない。油断を見せる為の行動だと感じ、睨み付けながら話を続ける。
「お前何?俺を監視して、どう言うつもりだ」
「FBI、と言えば分かるか?」
「!、義父さん、の」
「あぁ、、、、光明の元同僚だ」
男はしょうがないと言う表情をして言った。男の言葉に目を見開き、銃を下ろすアルバ。
そう、彼の養父であった闇雲光明は元FBI調査官でありこの男はFBI捜査官であるイギリスとアメリカのハーフのクリス・ベネットと言う名で、アルバの養父とは旧友であり飲み友でもあったのだ。
疑いが晴れた、と思い少し体勢を楽にするクリス。
「クリス、そうアイツの口から聞いた事はないか?」
「、、、、捜査官時代の相棒、とは聞いてた」
「そうか」
「何で俺を監視していた。FBIに言われてか?」
「違う。これは俺の独断の行動だ。今は休職している」
「どう言う事だ?」
「、、1ヶ月前、光明に会いに行こうと日本に来たらアイツが死んでいると聞いた。死んだ理由がまさかの刺殺、信じられなかった。だから、死ぬ前のアイツの身辺を調べた。そしたら、、、、悪鬼羅刹に行き着いた」
「!」
「やっぱり、お前は何かをアイツに伝えられてたのか。アイツならお前に何か残してると思って、お前に接触しようとした矢先、お前がブルックス達に襲われたと聞き、日本の警察の監視が付いた。だから」
「陰から俺を監視していた?どうにかして接触出来る機会を見つける、為に?」
「そう、頭頭良いな」
クリスの言葉にアルバは冷静になって頭を働かせる。刺殺したのが信じられない?それはどう言う事だ?そう頭の中で困惑しているアルバに気づくクリスはアルバにデコピンをする。
突然のことでびっくりして、目を見開きおでこを押さえるアルバ。
「な、何すんだよ!」
「いや、お前って案外、戸惑ったりすんだなって」
「何だよ、それ」
「別に、、、、んで、お前は悪鬼羅刹について調べてんだよな?」
「!、それが何か悪いのかよ」
「辞めとけ」
「は?何でアンタに言われなきゃならねーんだよ」
「悪鬼羅刹を調べた連中は今まで死か廃人になるかのどっちかだ。アイツの養子なら、止めないとだろ」
「ッ」
クリスの大人の言葉にアルバは口を噤む。だが、こんな所で止まってられない。止まれば養父の復讐も、光を守ると言う事もどっちも完遂出来ないからだ。
そしてアルバは気付いた。クリスの口振からして、養父が悪鬼羅刹を調べていたと言う事を知っていたと。
「、、、、アンタ、もしかして義父さんが死ぬ前に、悪鬼羅刹を調べてた事知ってた?」
「!、、、、、、、、あぁ」
「じゃあ、何で止めなかった」
「止めた!だがアイツは聞かなかった!!無謀だって言ったさ!俺は!」
「FBIだろ!?普通、権力使って止めろよ!!!」
「ッ、」
「ちゃんと止められなかった、アンタの指示なんて聞く気がない。俺は、、、、調べるだけだ。じゃあな」
「おい、待t 「今の俺は警察の監視があるから下手に動かない方が良いぞ」、、、、ハァァ」
アルバは冷たく言い放ってその場から立ち去った。クリスは図星を突かれたと同時に本心で心配しているのに反抗されたと言う苛立ちでその場に蹲る。
止めれなかったと言う責任と、死なせてしまったと言う後悔がクリスの心に深くのしかかる。その気持ちを表すかの様に、桜の花びらがゆっくりと落ちていく。




