決意の時
異能力
それは頂上的な力の総称である。その力は2種類ある。
物理系、精神系、肉体系、五感系、生命系、干渉系、具現化系などの異能の力を持つ者達は宝石の様な瞳を持つ。
元素系、時空間系、超能力系、付与系、変換系、情報系、物質系、因果律、事象系などの異能の力を持つ者は花の様な瞳を持つ。
異能を持つだけで、人生が変わり、異能が覚醒すれば、その世界をも征服出来る者が現れるとも言われる。
この世界では、異能力とそしてその異能があるが故に生まれてしまった薬から始まってしまった物語である。
アメリカのとある屋敷でコーヒーを飲みながら新聞を読み耽る1人のハゲた初老の男性。
「ボス、アルバ様の居場所が分かりました」
「ふっ、、、、そうか。良くやった、すぐに計画を進めろ」
「はい、」
ボスと呼ばれた男性はニヤリと口角を上げ笑みを浮かべながら指示をする。
部下と思われる男性はお辞儀をしてから部屋を出る。
「クククッ、、アルバ、お前は私の手から離れる事なんて出来んのだよ」
男性はそう言って一口、コーヒーを飲み、新聞をクシャリと握りしめ笑う。
そして時が進み、冬のある日のこと。
月が雲に隠れているとある夜。
夜風と潮風の吹く港に1人の髭を生やし髪を結んだ青年が少し古びれた倉庫に入っていく。
青年は辺りを見たわし、少し怪しさを感じさせながら歩く。
「お前がアレを欲しいって奴か?」
緊張をしているのか青年は少し早足で倉庫内を歩いていると、窓際に帽子を被ってニヤッと笑みを浮かべた男が青年に声をかける。
青年はすぐに男の元にゆっくりと近寄って、緊張して乾いた喉から声を発する。
「、、あぁ、お前が売人だな。金は用意してある」
「そんな急かすなっての。ほら、これがお前の望んでる“悪鬼羅刹”だ」
男が取り出したの透明な袋にはカプセル型の薬だった。カプセルには鬼の様な絵が描かれており不気味さを感じさせる。
カプセルを見た青年は一瞬、ほんの一瞬怒りを含んだ目を向けた。
「、、、、金だ。こっちが言って来た金額通りだ」
「うわっ、マジで金額通り持って来たのかよ」
青年が差し出した封筒に入っていた金額は目視だけでも100万以上はあるのが分かる。
男は金を見た瞬間笑みを浮かべてニヤニヤとしながら青年を馬鹿にしたような表情で言い、封筒を受け取った。
「あぁ金額通りだな、、、、ほらよ、」
男は金額を確認すると、カプセルの入った袋を青年に投げる。
青年はそれを受け取り手のひらに乗せて見つめる。
「ありがとう」
青年は言うと袋を力ずく握りしめた。その力は憎悪を感じ取れる。
「にしてもお前も馬鹿だよな。そんな人生を壊して
“脳まで破壊する様”なもん
をわざわざ大金出して買うなんてさ」
「俺の勝手だ」
「そうかよ」
男の言葉に一瞬顔を顰めたがすぐに澄ました顔に戻して、平然と言う。
男はそんな青年の様子を見て呆れた様に言い、その場から立ち去ろうと足を動かそうとした。
が、暗闇から聞こえる無数の足音に動かす足を止める。
「何d」
バンッ
「動くな!」
男が最後まで言う前に遮る様に凛々しい女性の声が聞こえ、明るく丸い照明が男と青年に当てられる。
「なんだ!?これ!?」
「?」
突然のことに男は困惑、青年は不思議そうな表情をしながら声のした方に視線を向ける。
そこには黒いスーツを着て、肩まで伸びた髪に鋭い視線を向けた女性と、その後ろには女性と同じ黒スーツに筋肉質で髪を1つに結んでツリ目が特徴的な男性とベストを着ており筋肉が浮き出て三つ編みが特徴的な男性が居た。
他にも数名の部下らしき人物達を連れた女性は男と青年を順番に見てから空気を変えるように言葉を発する。
「違法麻薬の所持、そして違法麻薬の売買の罪で貴方達を逮捕します」
「!警察かよ、最悪じゃねーか」
「、、、、」
女性の言葉を聞いた瞬間、男はすぐに表情を変えてイラつきた顔をして、小さく舌打ちをしながら一歩後ろに下がる。
青年は真顔で動かず、女性達の方に顔を向ける。
ヒューと窓の隙間から夜風が入ってくる。一瞬の沈黙の後、女性がまた口を開く。
「一真は売人の方をお願い」
「了解」
ツリ目の男性は一言、そっけなく言うが、その目はギラつている。
「天音さんは買い手の確保をお願いします」
「お任せ下さい、警視」
三つ編みの男性こと天音が丁寧に頭を下げてそう言ってから買い手である青年に近づく。
「クソッ、此処で捕まる訳にはいかないんだよ!」
ツリ目の男性こと一真が近づく前に、売人である男はすぐに逃げ出した。屁っ放り腰である。
「、、、、」
「おや、逃げないのですね」
「逃げてもしょうがないだろ」
青年はその場から逃げる事もせず両手を上げて天音が近づいても、抵抗しなかった。
諦め、と言うよりもこれを目的かのようにも感じ取れる。
その様子を見て天音は不思議そうに思うが、何も言わずにただ持っていた手錠をかける。
「チッ、、逃げるなよなぁ」
一真は逃げ出す男を見るとめんどくさそうに頭を少し掻いてから、手につけていた手袋を外して、手を銃の様な形にして男の方に向ける。
「氷、、、、で良いか」
一真の指先から氷の塊が現れると、銃弾の様な形へと変貌し鋭い物となった。それだけで倉庫内の空気が変化しており、少し強張っている。
一真はそれでも冷静にだが、口元は少しニヤついている。
その様子を見ている警視と呼ばれた女性はただ何も言わず、冷たい目をしていた。
「此処、、、、だな」
標準を合わせて、目を細め指先に力を入れた次の瞬間にはバンッと言う銃の様な音が倉庫内に響いたと思った矢先、
「ギャアアアアアアアアアア」
逃げ出した男の潰れる様な叫び声が先ほどの音を掻き消す様に響く。男は肩を手で押さえながら、その場に座り込む。
男の肩は先ほどの氷の銃弾に貫かれており、痛みが我慢出来ないのか苦しそうにしているのが分かる。
これが一真の異能の1つだ。
その叫び声を壊すかのようにカツンカツンと靴の音を鳴らして、近づく一真。
「逃げ出そうとした罰だ」
一真は氷のように冷たい声で男の耳元で言い放ち、肩を力強く握りしめる。血が滲み服に血が滲み出ているのが分かる。
「グアァァァ」
それにまた男は苦しそうに苦痛を口から漏らす。それでも一真は辞めず、グイッと自分の方向に引っ張る。
「逃げようなんて考えるなよ、分かったか?」
一真の命令のような口調に男は苦しそうな顔をしながらもこれでもかと言うぐらい勢い良く何度も頷く。
それを見て真顔のまま、懐から手錠を取り出して男の両手首にかける。
その音が倉庫内に響けば、外からパトカーの音が聞こえて来た。
「貴方もなんでこんな物を買ったんだ」
「、、、、、、、、人生に有意義を感じ取れない、、から」
天音の言葉に青年は明かりのない瞳に視線を向けて、そう言ってパトカーに入って行く。
「さっ、帰るわよ」
警視と呼ばれた女性は部下達を連れて倉庫をあとにするのであった。
場所は変わって、アメリカを感じさせる屋敷の電気の付いていない部屋に入って来たのは、綺麗で甘く人を惹きつけるような顔をしてまだ少し幼さを残したもののアメリカとイタリアの血を持ち金髪の髪を持った闇雲アルバと言う名の少年だった。
部屋の電気を付けて一歩入ってから一言。
「?、なんで電気が付いてないんだ」
アルバは不思議そうな表情をしながら、部屋を見渡すと荒らされておりその部屋はこの屋敷の持ち主の所在と見受けられる。
書類やグラスなどが部屋中に散乱していて、アルバは不審に思いながら歩いていると、隣の部屋から物音が聞こえ動きを止める。
「義父さんの部屋から?」
どうやら、この屋敷の持ち主は彼の養父らしい。
アルバは、警戒しながら隣の部屋のドアノブに手をかけゆっくりと引き、中に入る。
「?、血の匂い?」
微かに感じ鼻に届く血の匂いにアルバは顔を顰める。そして、部屋の中で見た光景に言葉を失うアルバ。
「、、、、は?」
そこには、日本人で40代ぐらいに見えるアルバの養父である闇雲光明の胸にサバイバルナイフが刺さって口から血を流して壁に横たわり死んでいた。ナイフの刺さった胸の付近には服に血が滲んでいる。
窓は開けられており、カーペットには土足で誰かが歩いていたのが一目瞭然だった。
「義父さん、、、、?」
アルバは震える声で言い、すぐに養父の元に駆け寄り、膝をついて両手で両肩を掴む。触れると、まだ暖かく亡くなったのにまだそんなに時間が経って居ないのが伺える。
それを察したアルバは震える口で言葉を発する。
「義父さん、大丈夫か?なぁ、、、、なぁ!?」
「、、、、」
アルバはそう声を荒げながらも話しかける。が、当然ながら返事などない。
アルバだけの焦った震える声だけが部屋の中で反響するだけだった。
「ねぇ、義父さん、義父さん、返事、返事しろよ」
アルバは涙目なりながらも、血を流した腹部を見つめ、返事のない様子をただ見ることしか出来ない。
「、、、、ふぅ、、、、ふぅ、、、、落ち着け。落ち着け、俺」
アルバは深呼吸をして冷静になろうとするが、誰かに殺されたかもしれないと言う怒りで体が震える。
「、、、、ん?なんだ、この紙」
アルバが下に視線を向けた先に養父が何か紙を握りしめているのに気付いた。アルバは優しく握りしめている手を離して、紙を取り出す。
「よし」
何が書かれているかさえ分からない紙を読む決意をし、アルバは紙の中身を確認する。
『アルバ これを 見たら お前の金庫 に 入って いる 手紙 を確 認しろ』
と文字は間が空いて震える手で書かれたのが分かり、若干血が滲んでいる。
「(俺の金庫?なんでだ?と言うか、なんで義父さんは殺されないと、誰が義父さんを???)」
アルバは混乱する頭の中でなんとか整頓しようとするが、目の前で死んでいる義父さんを見ても出来ない。
そんなアルバを冷静にするかのように、部屋の入り口から物音とヒッと言う悲鳴が聞こえる。
アルバはすぐにそっちに視線を向けると複数名の使用人達が居た。
「だ、旦那様?!」
「ぁ、アルバ様、これはどう言う?」
「きゅ、救急車を、早く!」
「、、、、」
焦り、恐怖、混乱しながらも養父の死体を見ないように目線を逸らす使用人達の様子を見たアルバは自然と冷静になった。
今この場に居る中で彼らをまとめ上げれるのは自分しか居ないと感じ取ったらしい。
アルバは部屋の空気を変えるように一言。
「警察を呼んでくれ。その間、この部屋は誰にも入らないでくれ」
アルバの言葉を聞いて、使用人達は指示に従った。部屋の扉を閉めて、アルバは自分の部屋へと向かった。
その足取りは早く体を前のめりにしながら勢い良く部屋の扉を開けた。アルバは部屋の中にある金庫の前に胡座で座り、震える手で暗証番号を入力して鍵を開ける。
「中に、、、、何が入ってるんだ」
ただ1人の空間、誰にも見られてないはずなのに、不安を感じながら金庫の扉を開ける。
中には、複数の札束の上には、1つの少し膨らんだ封筒が置かれていた。
「これが、義父さんの、、」
アルバはそれを掴み、中身を開けて取り出し開く。
その手紙は以下の通りだ。
『アルバへ
この手紙を読んでいると言う事は俺は死んでいると言う事だな。ごめんな、また1人にしてしまってな。
俺は誰かに殺された。
「!」
だからと言って復讐なんて考えるな。お前は自分の幸せだけを信じていれば良い。ただそれだけで良いんだ。
お前はもう二度と誰かの為に自分を犠牲になんてしなくて良いんだ。
だが、もし、もしも俺の為に何かをしたいのだと思ったらこれを残しておく。
決して口に含むなよ。含んだら、俺はお前を許さないからな。
これの名前は『悪鬼羅刹』だ。俺はこれを調べていたせいで死んだと思ってくれれば良い。
これはお前のトラウマを与えたバーンズも関わっているのが俺の調査で分かった。お前はまだ狙われ続けている。
「ッ」
だからもし嫌なら、お前は辞めた方良い。お前のトラウマを知っているからこそ、言っている。
お前の人生はお前の人生だ。だが、俺の最後の願いはお前に幸せになって欲しい。ただそれだけだ。
アルバ、もし調査をするのであれば必要な書類であるデータを入れておいた。
それと、お前以外にも狙われている日本人が居るのが分かった。偶然にもお前と同じ学校でビックリしたがな。
その子の場合はその子が持つ異能力もだが、お前と同じ理由も含まれている、らしい。
だから、お前が守ってやって欲しい、と馬鹿みたいな事を頼んでいるな、俺は。
最後に、たった2年間半だったがアルバの父親になれて嬉しかった。
俺を義父さんと呼んでくれてありがとう。俺を父親にしてくれてありがとう。
お前のこれからの人生に彩りがある事を願っている。お前を愛してくれる人、お前の為に泣いてくれる人が必ず現れる。
だから、それまでは俺の元には来るなよ。
闇雲光明、義父さんより』
手紙を全て読んだアルバはその場に崩れ落ち、大粒の涙を流し、手紙を握り締めそうになる手をカーペットを力強く掴む。
先ほどまで張り詰めていた部屋の空気が破れるように変わった。
「義父さん、義父さん、、、、なんで、なんで死んだんだよ!!」
声を荒げても戻って来ないと分かっているが辞められないアルバは長い時間涙を流し続けた。
沢山泣いた後、深呼吸をしてから、封筒の中からデータが入っているであろうUSBメモリを取り出すアルバ。
その中からは、一種に透明な袋からカプセル型の手紙に書かれていた『悪鬼羅刹』だと思われる薬まで出て来た。
「これに、データが。そしてこれは、義父さんを殺す原因になった、薬、、、、チッ」
アルバは薬を壊したいと言う衝動に駆られながらも、なんとか養父の言葉を思い出して落ち着こうとする。
アルバの脳内には手紙の中に書かれていたバーンズ、最初に出て来たボスと呼ばれた初老の男性が現れていた。
バーンズはアルバの前の養父であり縛りつけていた人間である。
「アイツ、どんだけ俺に関わろうとして、、、、許さない。義父さんを殺したかもしれないアイツを俺は許さない」
アルバは立ち上がり決意した目で言った。
その瞬間、部屋の空間を支配するかのように冷たく変化した。
彼の心には唯1つ、養父である闇雲光明を殺した者と自分自身を狙う者達への完全なる勝利だった。
これが彼・闇雲アルバにとって人生の最大の転換ポイントであるとこの時の本人は気付いてなかった。
窓の外では夜風が吹き、パトカーのサイレンがうるさくなり屋敷の前で止まる。




