ズヴァイグズネ帝国の危機
メグリがサウラインスの湖を浄水した夜に、ズヴァイグズネ帝国が夜襲を受けていた。
街の8割が炎に包まれ、家屋や教会、城まで被害が拡大していた。
「なんてことだ。コイツの部下まで止められんぞ……クッ……市民をこれ以上の被害に遭わせるわけにはっっ!!キィーリスはまだこんのか、あぅぅっっ!!」
周りは半壊した家屋や全壊した家屋で、炎に包まれた何軒もの家屋に眼を背けたくなるヴァイログスだった。
目の前で細剣一本で、私を圧倒する青年は何者だ。
俺の得物は長剣だ。
長剣で対峙する俺は、細剣一本だけを振り回し、ズヴァイグズネを火の海にした目の前の青年を相手するだけで手一杯だった。
ヴァイログスは重い鎧を身に纏っているが、敵の青年は軽装だった。
「おいおい、現代はこんな軟弱者が弱者の上に立っているのか、アァンッッ!!もっと手応えのある強者はいねぇか!!」
細い刃なのに、一振りしただけで吹き飛ばされそうになる。
「うりゃぁあーっっ!!」
青年は筋肉が付いてない細腕なのに、何故だ?
青年の最後の一振りに半壊した家屋まで飛ばされ、血を吐いた俺だった。
「ハァハァ……ここでしたか。ヴァイログス隊長、私の隊の部下たちはやられました。ハァハァ……このままではヴァイログス様まで——」
「ハァハァ……キィーリスはなんとか無事か。コイツらは一体何者だ?」
「私にもどのような団体かまでは……ハァハァ。国王は無事なんですか?」
副隊長のキィーリスが身体中傷を負いながら、話す。
「この状況では確認は出来ん。手練れはコイツだけか?」
「もう一人手練れがいました。ハァハァ……危機一髪で攻撃を逃れたんです、合流はヤバいですよ!」
「ハァハァ……アイツに攻撃が当たらんのだ。こんなやつが居たとは驚きだ……」
地面に長剣を突き刺し、柄にしがみつくことで倒れるのを耐えていた。
「昔ィはァ戦いがいがあった奴ばっかりだったが、なんだこの軟弱者共はァッッ!能力を使うまでも無ェとはとんだ外れを引いたぜェ!!」
半分だけ残っている家屋の屋根に立っていた青年が吠える。
「ゼメス、任務は全うした。そろそろ戻るぞ」
組織のローブで身体を隠し、フードを深く被った人物が青年の隣に来て呟く。
ヴァイログスと対峙した青年がローブのフードを深く被った人物に反抗した。
「おいおいヴェリュさんよォ〜あの御方からの命令はズヴァイグズネ帝国の殲滅と崇拝してた奴の骨を届けることだろ!?まだ死んでねぇ奴ら、まだいるぞ!!」
「ゼメス、殲滅ではない。抵抗する者共はもういない。名乗って帰るぞ」
「そりゃねぇぜ。はいはい、俺様は《五恐指》の一人、ゼメス・クロノだ。お見知り置きを」
ゼメスと名乗った青年は隣の人物と飛んで消えていった。
「《五恐指》……だと」
ヴァイログスはそう呟いて口を閉じた。
ズヴァイグズネ帝国が夜襲で滅びかけた一件は、メグリが知ることはなかった。




