臭気漂うサウラインスに到着
私と《鉄の騎士》の面々がヴァリス村を出発して15日程が経ち、一ヶ月が数日経ち、リエトゥミに脚を踏み入れた。
リエトゥミに馬車が入ると空気が汚染されていて、御者が咳き込む。
操られた馬もなんだか速度が遅くなっている。
私と《鉄の騎士》の面々が乗っている木箱の扉の隙間から臭気が入ってきて、咳き込む。
「メグリさん、今さらだけどこんな臭気が漂っているところになにしに来たんだ?」
「稼ぎに来たんですけど、予想外すぎますね。臭気は専門外なんですけど……」
ザルシュに聞かれ、窓の外の景色から彼に視線を移し、咳き込みながら応えた。
窓の外の流れる景色は草原なのだが、臭気で汚染されており、紫色がかっていた。
応えたように、私のスキルは【浄水】なので液体しか浄化出来ないのだ。
これだけ臭気で汚染されているとなると、依頼する機関も機能していないように思う。
リエトゥミ近辺に住もうと思っていたが体調を崩しそうで心配だ。
「いつもなら寄りつかねぇよ、こんなとこ!」
ブルンスが咳き込みながら、口を抑え、吐いた。
6時間後ぐらいに壁に囲まれた街?に馬車が停まった。
鎧を着込んだ入国審査をする二人が馬車の扉を開けて確認した。
「おい、早く閉めてくれ扉ァ!咳が止まらないだろうが」
ブルンスが鎧を着込んだ兵士に愚痴を吐いた。
ブルンスの剣幕に腹が立ったらしく兵士の一人が扉をバタンと勢いよく閉めた。
入国料を払って、私と《鉄の騎士》の面々は馬車を降りた。
ザルシュが御者に二言くらい交わし、戻ってきた。
相変わらず咳き込みながら、私たちは冒険者ギルドに赴いた。
冒険者ギルド内は閑散としており、冒険者一人も居ない。
受付カウンターには一人の受付嬢しか居らず、その女性の元へ歩み寄った。
「ようこそ、サウラインス冒険者ギルドへ!ご用件は——」
「護衛依頼の達成報告に来た」
ザルシュが受付カウンターに依頼書を置いた。
「護衛依頼主のメグリさんですね、サインを」
受付嬢は依頼書に眼を通し、私にサインを促した。
私がサインしている間に受付嬢が奥に消えて、戻ってきたら8枚の金貨を載せているトレーを持っていた。
ザルシュが金貨を受け取り、麻袋に入れる。
「長旅お疲れさまだったな、メグリさん。俺らはもう帰るよ。こんなところに長居は御免だからね」
「メグリさんともっと居たいけど、流石にここに滞在はキツいよ。今までありがとう、メグリさんのことは忘れないから」
ザルシュが別れの言葉を言って、メルンスも別れを惜しんだ。
ザルシュとメルンスとは握手も交わした。
「長い間楽しかったよ、メグリさん元気でね。さようなら」
「長旅お疲れさまね。一緒に旅ができて良かったわ。さようなら」
「儂もたのしかったわい。元気でな、メグリさん。またどこかで逢えたらよろしくな」
ブルンスとジルシュ、ペレークスも続いて別れの挨拶をした。
「私こそ長旅を受けてくれてありがとうございました!皆さんもお元気で。さようなら」
私と《鉄の騎士》の面々は冒険者ギルドを後にして、別れた。
《鉄の騎士》の面々は馬車に乗って、サウラインスを発った。
臭気の漂う街——サウラインスでの暮らしが始まった。
まずは宿屋を見つけなければね。




