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冥府の祷廟

 冥府の祷廟(とうびょう)はアドミニストの管理している(ぼしょ)だ。

 アドミニストはある人物の書物(たましい)を読んでいた。

「シャーネという者もつまらん死に様だったか……妾を愉しませる奴はおらんのか」

 シャーネの書物(たましい)を手繰っていたが、雑に放り投げたアドミニストだった。

 アドミニストはヴェーストネを眼だけを動かし、探した。

「はぁー……魔王って勇者に敗れたっけ?どうだった?」

 アドミニストはため息を漏らし、独り言を呟いた。

 眼前に広がるのは所狭しと本棚が並んでいる。

 どこかの国が呼び出した日本人なる者が飲むコーヒーという飲み物を一度飲んでみたいものだと思っていた。

 シャーネの書物(たましい)は、並んでいた本棚に収まった。

 アドミニストは館内で、出られないのを嘆いていた。

「ヴェーストネ!今日から数日のうちに来る書物(たましい)はどれくらい?」

 何処からともなく、ヴェーストネが返答した答えが返ってきた。

「数千から数万になるようです」

 橙色の髪を掻き分けるヴェーストネが脳内に過ぎるアドミニストだった。

「のから始まる名前の勇者の書物(たましい)は?」

 館内に声を響かせたアドミニストだった。

 数十もある本棚から黄色の革の書物が浮かんで、アドミニストの手の内に飛んでくる。

 書物の表紙に名前が載っていた。

「あぁ、こんな名前だったか……間違えた」

「アドミニスト様、珍しく侵入者が数名います」

「侵入者……妾の感知に手を施したか。余計なことをしやがって。口が滑った……」

 ヴェーストネが、アドミニストの感知能力に手を施したようで、侵入者の気配を感知できなかった。

「アドミニスト様が熱心に書物を読まれていたものですから」

「ほう。ケルベロスを向かわせろ」

「承知しました」

 ヴェーストネが片腕の片手の指を咥え、鳴らした。


 冥府の祷廟の番犬であるケルベロスはそこら辺の人間では勝てない魔物だ。

 ケルベロスも冥府の祷廟を造った人間が産み出した魔物だ。

 妾ですら逢ったことのない人間だ。

 何が目的で冥府の祷廟やケルベロスを創ったのか不明である。

 知る気もさらさらないアドミニストだ。

 手摺に腰を下ろしたまま、つまらない書物を読み続けたアドミニストだった。

「退屈だわぁ〜まったく」


 アドミニストは侵入者に出会さず、暇で欠伸をしていた。


 メグリが冥府の祷廟を訪れることも知ることもない。

 冥府の祷廟は、日本でいう墓所である。

 冥府の祷廟はある日本人が造り、ヴェーストネという人型の精霊を造り、ケルベロスという魔物を産み出した。

 冥府の祷廟は聖域にあり、一般人では脚を踏み入れることすら叶わない。


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