奇襲と睨みあい
私はジェルズと散策を続けて腹が鳴った頃に飲食店に入り、食べられないと思っていた炒飯をたべられた。満足して店を出た一歩目の刹那、ジェルズの荒い声で命令され、命令に従い地面に伏せ、身体を丸めた。
「メグリっ、伏せろ!!」
「あぅっ……はぁぅ!!」
勢いよく飛んできた冷たい液体が衣類に穴を開け、肌を掠め、血が流れる。
「はっ……ぁあっ!!はぁはぁ……」
ジェルズの足許辺りの地面にばしゃっと液体が落ちた音が聞こえる。
「誰だぁ……俺らを狙ってきた奴ぅっ、出てこい!!」
彼が呟いてから叫んだ。
「……ジェルズさん、立っても良いん——」
「まだだっ!安全が確保できちゃいねぇんだ、まだそのまま……」
「わかりました」
私は彼に従い、身体を丸めたまま地面に伏せた。
「おいっ!早く狙ってきた奴ぅ、姿を現わせ!」
沈黙が続いて、3分程経った頃に沈黙が破られた。
「オマエぇ、見た目以上にやるな。姿ァ現せば良いのか?ほれェ、姿を見せたぞ。反撃出来るかァァっっ余所者ンンっっ!!!」
「ンンっっっ!!!!なぁんでぇっっ……俺らに攻撃したぁぁっっ!!ンンぁぁうぅぅっっっ、ハァハァなぁにがハァハァ……目的だぁぁっっっ!!!!!!」
攻撃してきた者の声が荒く叫ばれた刹那に、私たちのそばに近づかれた。
金属と金属が触れ合う物音がして、私は頭を下げてより丸まる。
「オマエらがどれだけの者かを知りたくてなァ。此処ォ、ティークルスに滞在すんのかァ?」
「そうだがぁっ、悪いか!!」
「悪かぁねぇぞ!!反撃しても良いんだぞ、オッサンんんっっ!!なぁあぁぁああぁぁぁっっっ!!!!」
「おぉお俺らぁに逃げてほしいぃぃっっのか……ハァハァ……此処で殺したいのかぁっ……うぅぅっっ……どっちぃぃだぁっ!!!」
「俺ァどっちでもかまわねぇよ!!オマエの実力ァ次第だ!!!」
私は頭を上げられず二人の会話で判断するしかなかった。
ジェルズは今にも負けそうな声音で相手は余裕のあるざらざらとした声音だった。
「殺しは規則違反だろ、主ィ!!弱い者いじめは見ていて耐えんモンがある。ほらぁ長剣を鞘におさめんか、アトビル!!」
攻撃してきた者とは明らかに違う幼い子供のような甲高い声が聞こえた。
「だがよマリー俺ァ——」
「うるさい、主!!ほれ、今にも死にそうだ此奴。ほれ早くせんか」
「おうぅ……マリー悪かった」
「うぅむ。分かればよろしい」
「オッサン悪かったな。闘いに飢えていてつい……」
攻撃してきた者のざらざらした声が落ち着いたものになり、ジェルズに恐る恐る声を掛けた私だった。
「ジェルズさん、私はもう立っても——」
「ハァハァ、良いぞもう……なんだ一体?」
私は立ち上がり、攻撃してきた者の姿を見た。
青を基調したコートの襟を立たせ、胸ポケットに特徴のある銀の飾りを付けているコートに袖を通した青年が立っていた。
青年の顔の横に飛んでいる妖精みたいな生物に驚く私だった。
「えっとその顔の横に飛んでいるのは妖精ですか?」
「妖精っっ!?もしかしてこの高い声のか?」
ジェルズが割り込んできた。
「あぁ。妖精の一体で水精のマリーだ。さっきは攻撃して悪かったな。マリーが見えるのか、あんた……?マリーが見える奴に初めて逢った、いや居たか……まあそれは良いか。俺はアトビル。《哀れな舞踏》っていう冒険者パーティの一人だ。まあ今後ともよろしくな」
アトビルと名乗った青年は二度も頭を下げた。
「《哀れな舞踏》か。メグリさん、彼を許すかい?」
「私は……許す許さないとかは。ジェルズさんが一番の被害を受けた訳で……なんとも」
血が流れた箇所を見ながら、返答した私。
「そりゃメグリさんの言う通りだが……うぅ〜ん、関わらないことを祈るよ俺ぁ」
私は大量の汗をかいたジェルズを連れて、宿屋に帰ることにした。




