銀河帝国皇帝視点 辺境の小娘にしてやられましたが、次は必ず小娘を平伏させると心に決めました
私はユバスの小娘を今回こそ捕まえられると思っていたのだ。
なにしろ相手は25機の機動歩兵と貨物船しかいないのだから。
こちらは機動歩兵は300以上、艦艇は100隻もいるのだ。
後方のユバスの巡洋艦に10隻残しても圧倒的にこちらの方が多かった。
仕方が無いから降伏勧告をしてやったのだ。
「ここにサーリア、いやユバス王国の民に成り代わりて私が成敗してくれるわ」
しかし、私が親切にも降伏勧告をしてやったのにユバスの小娘はそれを拒否してきたのだ。
それもこの状況で私を成敗するなんてどうすればそんな戯言を述べられるんだろう?
私には信じられなかった。
「陛下、いかがいたしますか?」
アンドレイが聞いてきた。
「ふんっ、やるしかあるまい。あの生意気な小娘を宇宙の藻屑に変えよ」
「宜しいのですか? ボニファーツがへそを曲げるかもしれませんが」
「高々一技術者の為に忖度など出来るか? 私は銀河帝国皇帝ぞ」
私がアンドレイを睨み付けると
「失礼いたしました」
アンドレイが頭を下げてきた。
「しかし、陛下、アノボニファーツの事です。何か秘策があるのかもしれませんぞ」
「秘策とは何だ? 高々25機くらいの機動歩兵に何が出来る?」
私は余裕だった。機動歩兵の大軍が敵の機動歩兵に向かって行くのを淡々とみていた。
「機動歩兵200、敵セラフィーナ王女部隊との距離2万」
「艦隊の先頭との距離3万です」
オペレーターが次々に報告してくれる。
「へ、陛下、あの真ん中のビーナスでしたか、偉いデカイ物を持っていますがあれは何ですか?」
アンドレイがのんきに聞いてきた。
「何か持っているのか?」
私はその機動歩兵を拡大させた。
ユバスの小娘の機動歩兵は自分の身の丈の倍以上もあるずんぐりむつくりな大きな物を持っていた。
「なんかでしょうな? 素人目には何かの大砲のようにも見えますが」
「ユバスの秘密兵器でしょうか?」
アンドレイとグレゴリーが所見を述べてくれた。
「秘密兵器か?」
私は首をかしげた。
「しかし、この兵器は機動歩兵に比べて、場違いに大きいぞ」
「確かにこの機動歩兵には過大ですな」
「普通は機動歩兵が兵器を使うのですが、これではあたかも何か兵器に機動歩兵が付随しているように見えます」
「本当にこれで使えるのか?」
「さあ」
「どうでしょうな」
私の言葉に残りの2人も首をかしげてくれた。
「何をするのか判らんが、あのような大きすぎる兵器は機動歩兵では扱えまい」
私は楽観していた。
まさか、あの兵器があんな威力があるとは露程も思わなかったのだ。
「機動歩兵距離1万艦隊もあと少しで2万です」
「さて、あのおもちゃどうするか見物だな」
私は急速に展開して四方八方からユバスの小娘の部隊に襲いかかろうとする機動歩兵の群れの動きを見ていた。
「我が方遠距離攻撃を受けて10機損傷」
「相も変わらず奴らの射程は長いな」
「こちらもブラスターの口径を上げた新型を早く配置いたしましょう」
私の忌々しげな言葉にアンドレイが提案してくんれた。それは早急に検討せねばならないだろう。
「しかし、奴らは何故展開しないのでしょうな。あのままでは集中砲火を受けてしまいますが」
不思議そうにグレゴリーが固まったままでいるユバスの機動兵器を指さてくれた。
確かに変だ。機動歩兵は守るよりも攻めるのが基本だし、あんなに固まっていては集中砲火を浴びて全滅するのが落ちだ。
今は敵の機動歩兵の砲が射程が長いから遠距離攻撃で利があるが、あと少しでこちらの射程に入る。そうなったら固まっていた方が不利なのに、何故展開しない?
「敵機動歩兵射撃体勢に入りました」
「高エネルギー反応あり」
「何だと!」
私は思わず目を凝らした。
ピカッ
次の瞬間ユバスの小娘の機動歩兵が持つ兵器が光ったのだ。
慌ててフィルターが画面にかかるが、間に合わない。
私は一瞬視界が真っ白になった。
「「「ギャーーーー」」」
私はその瞬間、多くの物の悲鳴を聞いたような気がした。
ダーーーーン
巨大なエネルギーの塊が我が艦にも襲いかかった。
必死にバリアが唸りをあげるが、それだけでは足りないようだ。
凄まじい衝撃がこのマーズにかかる。
私は玉座の肘掛けを掴んで衝撃を耐えた。
立っていたアンドレイとグレゴリー達が地面に投げ出される。
艦橋の中でシートベルトをしていたオペレーター以外は皆地面に叩きつけられていた。
私はその間呆然としていた。
まさか、ユバスがこのような秘密兵器を持っていたとは思いもしなかったのだ。
完全に油断した私のミスだった。
「陛下ご無事ですか?」
衝撃が済んだ後慌てて近衛隊長が私の無事を確認してくれた。
「私は大丈夫だが他の者は大丈夫か?」
私が尋ねると
「大丈夫です。騎士達は打撲ぐらいでしょう」
隊長は首を振ってくれた。
「艦隊の被害はどうだ?」
私が尋ねると
「第十戦隊応答無し」
「第九戦隊も応答ありません」
「第八第七無し」
「第六戦隊は旗艦のみ無事です」
「本第一戦隊は大半の駆逐艦が半壊。巡洋艦も中破、旗艦マーズは故障多数ですが、航行に支障は来しません」
私はその報告を暗澹たる気分で聞いていた。
帝国の中で史上最強と謳われていた第一艦隊の半数が失われたのだ。
オペレーターも周りの将兵達も唖然としていた。
「ボニファーツがあのような兵器を開発していたとは」
「完全にユバスにしてやられましたな」
アンドレイの呟きにグレゴリーが首を振っていた。
「本当だな。物の見事にやられたか」
そう言うと私は自嘲した。
敵があまりにも少数だったために油断したというのもあるだろう。
後方部隊を殲滅させられて焦ったというのもあったのかもしれない。
「陛下ね悪黒流の流れが強力になりつつあります」
「何だと、状況を解析せよ」
アンドレイが指示を出した。
艦船や起動歩兵の半数以上がやられこの旗艦のマーズも満身創痍だった。
暗黒流の流れが強くなってきたのならもうこの上の長居は無用だった。
「全艦直ちにこの星域を離脱する」
私は決断した。
「陛下宜しいので? 一京ドルの件もありますが」
アンドレイが尋ねてきたが、補給も無しにこれ以上この地で戦える訳も無かった。
「致し方あるまい。ここは再戦を期すしかあるまい」
「さようでございますな」
私の言葉にグレゴリーは頷いてくれた。
「ふん、取りあえず、一旦中断するだけじゃ。ユバスとボニファーツを許した訳では無いわ」
私は言い訳した。
そうだ。まだ戦いは終わっていないのだ。
一旦休憩するだけだ。
私は必ずこの地に帰ってきて小娘達をふん捕まえて謝罪させると心に誓ったのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました
皇帝視点でした。
短編書いたのでこちらも読んで頂けたら幸いです
『AIに乗っ取られた男』
https://ncode.syosetu.com/n7779ku/








