必死に偽装してたのに駆逐艦に最新鋭貨物船が攻撃されてしまいました
私達の最新鋭貨物船『セラフィーナ丸』は予定通り航海していた。
そう、ボニファーツやヨーナスの予定通りに……
私的には……
「ちょっと、またメインエンジン壊れたの?」
私はいい加減に切れていた。
「さすが最新鋭艦。姫様のご機嫌をどうしたら損ねるかよくご存じで」
アーロンが茶化してくれたので、
「アーロン、グチグチ余計な事言っているとド悪ちゃんの担当にするからね」
私が睨み付けてやったら、
「ええええ! あの粘着質は勘弁して下さいよ。ブラスターもあいつの前だけは避けて通りそうですよ」
「んなわけないでしょ」
普通はそんなことは絶対にあり得ない。
「でも、ここで殺してしまったら天国行ったときに延々恨み辛み言われそうですよ」
アーロンの言葉に一瞬天国に行って、あのテンションで延々と嫌みを言われている自分を思い浮かべていた。
「大丈夫だ、アーロン、お前が行くのは地獄だから」
「何だと。ふんっ、それはアードルフだろうが」
「というかド悪も地獄だから一緒に地獄か」
「でも、あの粘着質というか執念が閻魔様に気に入られたりして」
「いやいや、あいつの性質からして絶対に閻魔様を追い出して、自分が閻魔様に成り代わっているぞ」
「あっ、それ言える。『アーロン、貴様はガールズバーの百合ちゃんを泣かせたから火炎地獄行きだ』とか宣告されそう」
「誰だよ百合ちゃんって……あいつは俺よりも姫様に怒っているからな。『貴様のせいで左遷されたのだ。セラフィーナ、貴様は無間地獄へ行け』とか……痛い! 何するんだアードルフ!」
「姫様に不敬だ」
私の代わりにアードルフがアーロンを叩いてくれた。
よくやったと言いたかったけれど、
「ド悪が閻魔でいるのか。それは最悪かも……」
私は騎士としてビーナスを駆って戦っている。いくら国民のためとはいえ多くの命を既に奪っているし、命じてもいる。死んだら天国には行けないだろう。そこにド悪が閻魔で待っていたら、それはそれで最悪だ。
「それよりも姫様、補給部隊は全部で25隻ですけど」
アーロンが余計な事を言いだしてくれた。
「また、25隻なの」
私はうんざりした。
「呪いの25隻」
「いやいや、ボニファーツによると今回は縁起が良いそうだぞ」
ヘイモとヨキアムが言い合っていた。
「お前ら、そんなことは取りあえずどうでも良い。それよりもやっぱりドワルスキーはこの巡洋艦にいますかね」
補給部隊の配置図の真ん中の先頭の巡洋艦をアードルフは指してくれた。
補給船は9隻、それに一隻ずつ駆逐艦がついてその先頭に巡洋艦がいて円陣を組んでいた。そして、その前に六隻の駆逐艦が前衛となって横一列に存在していた。巡洋艦1駆逐艦15補給艦9隻の計25隻だ。
「うーん、帝国は10隻で一つの戦隊組んでいるのが多いんだけど、前の六隻は何なのかしら?」
「まあ、補給部隊は別なんじゃないですか?」
「うーん、そんなことないと思うんだけど……」
適当なことをアーロンが言ってくれたが、私は少し気になった。
「姫様、そんなことより、敵さんから通信が入ってますよ」
アウノが教えてくれた。
「よし、騎士は全員騎乗して、全艦攻撃準備よ」
「了解しました」
「全艦、戦闘配置。繰り返す全館戦闘配置につけ」
全員が配置についていく。
私も艦橋の裏の格納庫のビーナスに飛び乗った。
「よし、通信を回して、こちらは映像は消してね」
「了解です」
次の瞬間、私の目の前にド悪のアップが映って私はげっとなった。
「遅いぞ、何をしていたのだ!」
「申し訳ありません。機械の調子が悪くて」
「ふんっ、映像まで出んのか」
ド悪が苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「申し訳ありません。何分機器の調子が悪くて」
「まあよい、それよりも貴様等の船は我が補給部隊の進行方向上にいる。すぐに進路を空けよ」
相変わらずの上から目線でド悪は命じてきた。
でも、出来ないのよね。どうするんだろう、ド悪は?
「な、何という無慈悲なことを。この船は今も危機の調子が悪くて修理中ですのに」
私は精一杯哀れっぽい声で演技した。
「それがどうした。我らはこの25年間、百戦百勝の栄光ある帝国の第一艦隊である。その栄光ある艦隊が航路を貴様のぼろ船のために曲げるなどあり得ん」
ドワルスキーには私の演技は全く通じなかったんだけど……こいつ血も涙もないの?
「おお、何という狭量な」
「何だと、婆」
私のストレートな嫌みにド悪は反応してくれた。
「皇帝陛下ですら我らの窮状を鑑みて進路を変更して頂けたのに、その部下たる高々補給部隊の長が陛下のお心を踏みにじる発言をするとは嘆かわしい」
「な、何だと、陛下は貴様のようなぼろ船の為に進路を変更なされたのか。その様相では既に沈んでいるのも一緒であろう。俺様が引導を渡してやるわ」
「えっ、何をする気だ?」
私はド悪の反応に慌てた。この船はいくら最新鋭艦と言えども高々中古の貨物船を改良しただけなのだ。大した設備も揃っていないはずだ。
「主砲発射用意、目標前方ぼろ艦」
「ちょっと閣下、それはあまりにも無慈悲では」
「馬鹿もん」
「ギャー」
画面の向こうで悲鳴が聞こえた。
でも、私は皇帝のためには民間船がどうなろうと知ったことでは無いというドワルスキーのあまりの無謀さに少し行動が遅れた。
「撃て!」
「嘘っ」
ドワルスキーの命令で真ん中の駆逐艦から主砲が発射されるのが見えた。
そして私が悲鳴を上げる暇もなく、ブラスターの炎が最新鋭貨物船『セラフィーナ丸』に到達した。
絶体絶命のピンチ
果たしてセラフィーナ達の運命や如何に?
続きをお楽しみに!








