決戦 おんぼろ貨物船はなんとか出発しました
「姫様、全員揃いました」
護衛隊長のアードルフが報告してくれた。
作戦開始の朝、ポルヴィ工業の第25番ドッグに奇襲部隊は全員揃った。
今回は人員不足もあって改心した海賊含めてヨーナス曰くの最新貨物船『セラフィーナ丸』には約200名の人員が乗る事になっていた。
「では、まず、今回お世話になったポルヴィ工業の社長から一言お願い」
私がポルヴィに振ると、
「ポルヴィ工業の諸君、我々ポルヴィ工業の英知と力を結集して皆の努力のお陰で我らが姫様の最新鋭貨物船『セラフィーナ丸』の改良が完成した。
この船は見た目は散々姫様にぼろ船だとケナされたが、決して沈没寸前の船ではない。我がポルヴィ工業の全ての力を結集した最新鋭艦である。姫様と一緒に乗る技術者の者も精一杯頑張って欲しい。我々は地上から姫様のご武運をお祈りしております」
ポルヴィは余程私にぼろ船と言われたのが堪えているみたいで、何度も最新の船と言ってくれたんだけど。
「有り難う、ポルヴィ。それとこの短時間でこの改良を間に合わせてくれたポルヴィ工業の皆の頑張りは感謝に堪えないわ。本当にありがとう」
私が手を軽く振ると、
「「「おおおおお!」」」
作業員が歓声を上げてくれた。
「今回帝国軍は100隻もの大軍でこのユバスに乗り込んできた。彼らは楽勝気分でこのユバスに乗り込んでくる。その油断した隙を突く。そのために諸君等我が軍の精鋭をこの船に集めた。
銀河帝国皇帝の親征した戦いはこの25年間まだ負けがない。今回も勝つ気満々でいるだろう。
やる前から勝つ気満々で油断しているその鼻っ面を我々の奇襲で張り倒す。そして、皇帝の百戦百勝の戦歴に初めて我らの力で土をつける。我らなら出来る。そう、我らの行動一つ一つが世紀の大勝利に繋がるのよ」
私は握り拳を握って皆を見た。
「今回の作戦がうまくいくかどうかは全て我らの活躍にかかっているわ。諸君の奮戦を期待する。絶対勝つぞ!」
「「「おおおお!」」」
私が握りこぶしを握って突き上げると大声援が沸き起こった。
そのまま私達はその見た目はボロボロのセラフィーナ丸に乗り込んだ。
「艦内最終チェック終了しました」
新たに雇ったオペレーターのアウノが報告してくれた。
「お頭、いえ、間違えた姫様、発進準備完了です」
操縦席に座っているエッポが報告してくれた。
「ああ、姫様は勝てるために精鋭をこの船に集めたって言っていたのに、操縦士は宇宙海賊だぜ」
「確か辺境の赤髪だったか」
「違うだろう。卑怯な赤髪だ」
「お前らいい加減に名前を覚えてやれよ。辺境の赤切符だって」
アーロン等が好きに言い出してくれた。
「貴様等いい加減にしろよ。辺境の赤髭だ」
エッポはむっとして訂正した。
「そう、その赤髭」
「でも、今はひげがないぜ」
「怒り狂った姫様に燃やされてしまったんだろう」
「本当にこいつも馬鹿だぜ。姫様の前に何回も現れるなんて」
「なんせ姫様は厄災鬼だからな」
「ちょっとアーロン。あなた私を勝手に鬼にするな!」
私は傍のインカムをアーロンに投げつけた。
ガツン!
デカイ音がした。
アーロンは石頭らしい。
「痛い!」
泣きっ面をしているがいい気味だ。
そう、今回は人が足りないので、牢屋にいたアーロンを無理矢理忠誠を誓わせて連れてきたのだ。
「このままここにいて我らが負けても皇帝陛下は海賊が大嫌いだからな。公開処刑されるのが落ちだぞ」
「10年前の大海賊は生きたまま生皮剥がれていましたな」
「公開宮刑の上、奴隷にされた女どもになぶり殺しにされるかもしれないな」
ヨーナスとボニファーツに散々脅されてやむを得ずこの船の操縦士になってくれたのだ。
「本当に帝国に勝てるのか?」
最初は疑い深そうにしていたヨッポだったが、
グサリとナイフを目の前に突き刺されて、
「手伝わないのならばここで処刑してやろうか?」
陸戦隊長のイスモに凄まれてコクコクと頷いてくれたのだ。
まあ、脅すだけではあれなので、無事に勤め上げたら正式に雇ってあげるわと私が約束したので、生き残った海賊達は少しはやる気になっていた。
「では、発進よ」
「発進します」
エッポが操縦桿を引いてくれた。
開かれてドッグの天井からゆっくりと貨物船セラフィーナ丸は飛び立った。
ゆっくりとよたよたと揺れながら大気圏を航行する。
「姫様、これ本当に大丈夫なんですか?」
「なんか大きく蛇行していますけれど」
「大気圏外に行かずに墜落するとか」
アーロン達が青くなってくれた。
「大丈夫よ。そういう風にプログラムされているだけだから」
私がそう励ましたときだ。
「げっ、エンジン停止しました」
ヨッポが青くなった。
「おい、大丈夫なのか」
「落ちる!」
「お母ちゃん!」
アーロン達が叫び出した。
「ちょっとエッポ、大丈夫なの?」
私まで思わず叫んでいた。
「姫様大丈夫ですよ」
ポルヴィ工業から派遣されてきた機関士も兼ねているアウノが保証してくれた。
アウノの説明によると、元々中古船でいつ壊れてもおかしくない感を出すために定期的にエンジンが止まるようになっているんだとか……
ちょっとボニファーツ、そこまでする必要があるの?
この船本当に大丈夫なの?
もう少しちゃんと作れよ!
私は降下する船の艦橋で叫びそうになった。
「あっ、復活しました」
ほっとしたエッポの声がしてエンジン音が再びし出した。
ここまで演出するか?
ふらふらしながらゆっくりとセラフィーナ丸はやっと上昇を始めた。
本当にこの船で戦闘宙域にたどり着けるんだろうか?
私も含めた大半の乗組員が疑問に思う出立だった。
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