表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/83

帝国戦隊長視点 小国の小娘に虚仮にされたので追跡したが、逃げ切られてしまいました

「何が『悪いと思ったらさっさと謝りなさいよ!』だ! 舐めるな、小娘!」

 ガシャーン

 俺は手に持っていたインカムを地面に叩きつけていた。

「閣下落ち着いて下さい」

「これが落ち着いていられるか!」

 インカムを踏みつけていた俺は俺を止めようとした副官の胸ぐらを持ち上げて叫んでいた。

「閣下、苦しいです……ギャッ」

 そう叫ぶ副官を離すと地面に落ちて悲鳴を上げていた。

「あの小娘絶対に許せん!」

 俺は歯ぎしりして悔しがった。


 俺の名はドワルスキー少将だ。畏れ多くも帝国の主星と同じ名の戦艦キエフを旗艦とする帝国第一艦隊第二戦隊の指揮官だ。

 何しろ皇帝陛下の初陣から25年、ずっとこの艦の責任者だ。25年前はこのキエフの艦長で、20年前からはこの第二戦隊の指揮官になってはいたが……第二戦隊は帝国の第一艦隊の中でも歴戦の戦隊で旗艦以外に巡洋艦3駆逐艦6隻の陣容を誇っていた。

 他艦隊への転出の話しもあったのだが、俺様は皇帝陛下の騎士兼突撃隊長を自認ししており、陛下のお側を離れるという選択肢はなかった。俺の艦隊勤務の歴史はすなわち、皇帝陛下の進撃の歴史と同じなのだ。陛下の輝かしい百戦百勝の戦いの全てに俺様は絡んでいた。俺様の第二戦隊はどの戦いでも常に最前線にあり、どんなに戦況が厳しいときでも後退したことが無いのが俺様の自慢だった。

 そんな俺を畏れ多くも陛下は賞賛して5年前に男爵位を頂いた。

 その辺りの辺境の小国の男爵位ではないぞ。この銀河帝国の男爵位なのだ。下手な王国の国王よりも偉いはずだ。

 あの生意気な小娘は王女だと自慢してくれたが、良く考えれば俺様はこの銀河帝国の男爵様で辺境の小国の王女よりも余程偉いのだと言ってやれば良かったのだ! 完全に失敗した。


「ええい、まだトレースは完了しないのか?」

「もう少しお待ちください」

「皇帝陛下の補佐官のアンドレイはまだ出ないのか?」

「どこのどいつだ? こんな夜中に!」

 そこにやっと皇帝補佐官のアンドレイが不機嫌極まりない顔で出て来た。

「遅いぞ! アンドレイ!」

「何だ? ドワルか、こんな夜中に、何のいたずらだ?」

寝ぼけ眼のアンドレイはまだ起きていないらしい。こちらは徹夜だというのに優雅に就寝とはいい身分だ。

「いたずらな訳は無かろう! 今、ユバスの小娘の艦がキエフの大気圏外からワープしたのだが、皇帝陛下のご命令が下ったのか?」

「ユバスの小娘? ああ、セラフィーナ王女か? それが何だって」

「惑星キエフからワープしたが良かったのかと聞いている?」

頭の回っていないアンドレイにむかつきつつ我慢して俺様は再度説明していた。


「はああああ! 何を言っている? ジュピターならば皇宮の外に駐留しているはずだぞ」

「何をふざけた事を言っている。確かに目の前でワープアウトしたぞ。小娘は皇帝陛下の命令だと抜かしおったが」

「何だと! そのような訳無かろう! 陛下がそのような許可を許される訳はなかろうが!」

「それだけ聞ければ十分だ。第二戦隊は直ちに小娘を追うぞ」

俺は艦橋のオペレーターを見た。


「閣下、座標特定できました。距離10光年先、太陽系テグラの外縁部です」

「よし、直ちにワープだ。あの小娘を逃すな。奴は我が帝国の銀行から多額の金を詐欺で巻き上げた凶悪犯だ。絶対に逃すな!」

「了解しました。直ちにワープはいります」

「緊急ワープ20秒前」

「おい、ドワルスキー、本当にジュピターだったのか? ジュピターは皇宮の横にいるはずだ」

「ふんっ、調べればすぐに判ろう。こちらは追跡で忙しい」

「3、2、1、ワープ」

「おい!」

 アンドレイの声を残して我が旗艦キエフとその僚艦全10隻はワープした。


 画面がホワイトアウトする。

「よし、全艦第一級戦闘配置。ジュピターが抵抗した場合は威射した後捕獲する」

「了解しました。全艦第一級戦闘配置」

「全艦第一級戦闘配置」

「主砲発射準備」

戦艦キエフの主砲は50センチブラスター6門だ。巡洋艦一隻などこの斉射で絶対に黙らせられるはずだ。

「おのれあの小娘。良くも俺様に嘘を述べてくれたな。絶対に許さん」

俺は陛下の命令だと平然と嘘をついて俺様に頭を下げさせたあの小娘に目にもの見せてやると怒り狂っていた。



「ワープアウト」

「敵、ジュピター発見しました」

「距離2万」

「よし、全艦あの小娘の船に向かえ」

俺は指示を飛ばした。

「小娘の艦に通信をつなげろ!」


「小娘、貴様、良くも嘘をついてくれたな。陛下は貴様の出航など許可していないそうではないか」

俺は通信が繋がるや叫んでいた。

「ああら、もう判ってしまったのね。でも、その鈍足の戦隊で我がジュピターに追いつけるのかしら」

小娘は俺を笑ってくれたのだ。

「何を言うか、小娘。直ちに停戦しろ。しない場合は攻撃する」

「それはここまで追いつけたらね。そうしたらその時に聞いてあげるわ」

そう小娘は宣言してくれると通信を切ってくれた。


「敵船、高速で逃走を始めました」

「ええい、全艦全速で追いかけろ」

俺は叫んでいた。

「全艦最大戦速」

「全艦最大戦速」

キエフのエンジンが火を噴く。

他の艦も最大戦速で追いかける。


「閣下、敵のパワーが違います。急激に差をつけられています」

「おのれ、まだ射程に入らないのか」

「まだ無理です」

「やむを得ん。戦艦のパワーを最大にしろ。この艦のみで追いかける! 僚艦は追いつかなくても仕方が無い」


俺はパワーのある戦艦一隻だけで追いかけることにした。

戦艦一隻だけならばパワーでは巡洋艦などに負けん!

絶対に追いついてやる。


俺の意地が乗り移ったのか急速に距離を縮めた。


「小娘。追いついたぞ。素直に降伏しろ!」

俺は小娘の船を射程に捕らえてほくそ笑んだ。


「本当に面倒くさいわね。じゃあ、ドワルさん、バイバイ」

ホログラムの小娘が俺様を馬鹿にしたように手を振ってくれたのだ。

そして、通信を再び切ってくれた。


「おのれ、主砲で威嚇射撃しろ!」

「了解。目標ジュピター、威嚇射撃用意」

「撃て!」

戦艦キエフの主砲が唸りをたてて発射された。

それは小娘の艦をかすめて小娘を驚かせるはずだった。

しかし、ブラスターの炎が到着する前に、ジュピターは俺桁の目の前から消えてしまったのだ。


「敵ワープしました」

「何だと、すぐに追え!」

俺様は激怒していた。

「無理です。どんなに頑張ってもこの戦艦キエフでも次のワープまで3時間は必要です」

無情にも副官の声が艦橋に響いた。


「おのれ! 小娘め!」

俺は怒りのあまり、目の前の計器に手を叩きつけていた。


バリン!

計器が割れてしまった。

副官達はぎょっとして俺を見るが俺は地団駄踏んで悔しがるしかなかった。


「おのれ、小娘! この屈辱必ず晴らしてやるからな!」

俺は血まみれの両手を握って心に誓ったのだった。


ここまで読んで頂いて有り難うございます

追跡戦はセラフィの勝利でした。

ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾


続きをお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

新作

『母に叩かれ家出して魔術学園に入学したら何故か王子様と親しくなりました 平民少女のシンデレラストーリー』https://ncode.syosetu.com/n8270ll/

短編

『AIに乗っ取られた男』https://ncode.syosetu.com/n7779ku/

前作

『モブですらない小さい聖女に転生したので、小説の世界を堪能しようとしたら、何故かヒロインになっていました』https://ncode.syosetu.com/n4848kz/

私の今一番熱い人気の作品はこちら

表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

■【小説家になろう記載ページ】『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



5番人気の話

『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n3871kh/

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ