謁見2 怒り狂う皇帝の前に、かつての部下は奴隷にされた少女を出してきて対抗しました
「それよりもボニファーツ、私がケチで金に渋いとはどういう事だ!」
陛下はいきなりボニファーツに視線を向けると怒りだした。
凄まじい怒りだ。
さすがの図太いと言われる私も恐れるオーラなのだが、ボーファーツは平然としていた。
「姫様に比べればそうでしょう。我が姫様は陛下と違って儂の好きなように兵器を作らせてくれますからな」
私をださないで!
一瞬皇帝の怒りが私に向いたじゃない!
皇帝がこちらをぎろりと一瞥するや再びボニファーツに戻ってほっとしたら、怒濤の叱責が始まった。
「何が姫様が作らせてくれたじゃ! 笑わせるな!」
皇帝の大きな罵声がこの広い謁見の間に響き渡った。
思わず両耳を塞ぎたくなるほど大きな声だった。
皇帝の怒り大きさを物語っていた。
ボニファーツなんて皇帝の前で耳を押えているんだけど、良いのかそんなことをしても……
「貴様のおもちゃを作るために使った金はそこな王女の金ではないではないか! フッセン男爵の名を使って帝国の銀行から金を大量に騙し取った金ではないか! 詐欺で銀行を誤魔化して金を集めおって! これは歴とした犯罪じゃぞ!」
皇帝が叱責した。
「何が犯罪ですか? 銀行を騙したとは人聞きの悪い。そもそも今回の件は我がユバス王国の中継惑星サーリアに対して、陛下の手下のフッセン男爵が銀河法に禁止されている薬物と奴隷取引を行っていたことが事の発端です。陛下も銀行もフッセン男爵が悪事に荷担していることを知りながら見逃していたのです。これこそ、銀河法に違反する重大な犯罪では無くして何というのですか?」
ボニファーツも負けじと言い返した。
「なんじゃと! 私はそのようなことは聞いておらんぞ」
皇帝は怒って言い返したが、目が少し泳いでいた。
「何をおっしゃるのです。白々しい。陛下が知っていたことは既にアンドレイ補佐官が認めていますぞ」
ボニファーツがいきなり振ったので私達の傍にいたアンドレイはぎょっとしていた。
「アンドレイ、貴様、認めたのか?」
「いえ、陛下、そのようなことはございません」
皇帝に睨まれて慌てて思わずアンドレイは嘘をついた。
でも、ボニファーツの前で嘘は良くないのに……
「下らぬ嘘を言うな!」
ボニファーツが軽蔑した視線をアンドレイに向けて、ボッチに合図する。
「嘘などついてはおら……」
言い訳しようとするアンドレイの前にボッチとアンドレイのホログラフが現れた。
『「事実ではないですか? 陛下はフッセン男爵がサーリアにて麻薬販売と奴隷取引に手を染めていたのをご存じのはずです。そうですよね。アンドレイ補佐官?」
「いや、それはだな、陛下にもいろいろお考えがあってだな……」
「自業自得です」』
ボッチの質問に、アンドレイははっきりと皇帝が知っていたと認めていた。
「ボニファーツ、貴様、記録していたのか!」
怒り顔でアンドレイが言うが、
「アンドレイ! 貴様、何と言うことをしてくれたのだ!」
「も、申し訳ありません」
皇帝の叱責の前にアンドレイは平伏しそうな勢いで頭を下げていた。
「ふんっ、陛下も白々しいですぞ。陛下がフッセン男爵の悪事を掴んでいないとは到底思えません。そんなの少し調べれば判ることです。たまたま、今回はアンドレイがばらしたという事でゲラーシムでも、グレゴリーでも探りを入れれば即座にぼろが出たでしょう。往生際が悪いのです」
「なんじゃと、そもそも全ての原因は貴様じゃろうが!」
「いいえ、陛下が配下の不正を取り締まられなかったからです」
「何を言うか! 私も銀河全体を治めておるのじゃ。全てを取り締まるなど出来るか! 取り締まるにも順番があってだな……」
皇帝が言い訳し始めた。
しかし、その言い訳は辺境のユバスの事なんてどうでも良いと言っているのと同じだ。
その辺境の民にとってはたまったものではなかった。
「陛下にも色々と理由はございましょう」
ボニファーツは言い訳を始めた皇帝の言葉を途中でぶった切ってボッチに合図した。
「えっ?」
そこにはきょとんとした、アーダが映し出された。
「何じゃ、この娘は?」
皇帝が聞いていた。
「私はアーダよ。おばちゃんは誰?」
「こ、この娘、陛下におばちゃんなどと」
アンドレイは蒼白になった。
「だ、誰がおばちゃんだ、小娘!」
怒った皇帝の罵声が響いた。
「えっ、ええええん!」
いきなり怒鳴られてアーダは泣きだした。
「ちょっと陛下、いきなり怒鳴りつけるのは」
私が驚いて注意すると
「さすが陛下、あなたのせいで奴隷にされた女の子に怒鳴りつけるとは」
「な、なんじゃと!」
少し慌てた声で皇帝はどうしたら良いか戸惑って少しあたふたしだした。
「ぼ、ボニファーツ、謁見の間でいきなり他の者を出すのは礼儀に背きましょうぞ」
皇帝の横から年配の紳士が慌てて注意してきた。
「ほおおおお、その声はこの子が奴隷にされるのを黙認していたゲラーシム内務大臣ではないか。貴様、儂に注意するよりも先にすることがあるのではないか? 何が礼儀だ。礼儀ならば最初にこの子に謝るのが筋という物であろうが……私が取り締まらなかったばかりにあなたを奴隷にさせて申し訳ありませんとな!」
ボニファーツはボッチに合図して、泣き叫ぶアーダを大画面にしてゲラーシムの前に映し出した。
目の前の大画面で泣かれるとものすごい迫力があった。
「いや、それはだな……」
泣き叫ぶ女の子の前にさすがの内務大臣も皇帝も言葉を失っていた。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
昔から付き合いのあるボニファーツの前に普段は冷酷非道な皇帝もタジタジです。
続きは今夜です
お楽しみに!








