専用艦の建造費の値段を皇帝の補佐官から聞いて気絶しました
「セラフィーナ・ユバス殿下に改めてご挨拶申し上げます。私は銀河帝国皇帝陛下の補佐官を務めておりますアンドレイ・コンドボガと申します」
丁寧にアンドレイは挨拶をしてくれた。
私は直ちに帝国の戦艦ビスマルクに招かれたのだ。
そこにはボニファーツやヨーナス達もいた。私の後ろにはアードルフの隊の護衛騎士が並んでいた。
その前に勝手に1人で飛び込んではいけないと散々怒られたが……
「ご丁寧な挨拶有り難うございます。私がセラフィーナです」
私も挨拶を返す。
「姫様。こやつは帝国の伯爵家の出でしてな。何でも100年前に皇女様が降嫁されたそうで、それだけがこやつの唯一の自慢でして」
なるほどと私は頷いた。
「ボニファーツ、余計な事は言うな」
アンドレイは気分を害したみたいで、隣のボニファーツを睨んでいた。
「まあ、殿下、ボニファーツとは帝国の大学時代の悪友でして」
「さよう、アンドレイは色々といたずら好きでの。いろんな悪事に加担させられましたぞ」
「嘘をつけ。貴様がやらかしたいたずらのせいでどれだけ苦労させられたか……」
アンドレイが学生時代の話を始めそうになった。暇なときならその話を聞いても良かったが、今はそれどころでは無かった。
「それで、アンドレイ様。早速ですが、先程おっしゃった意味がわからないのですが。ジュピターの建造費の件をどうして帝国にお話ししないといけないのですか?」
私は帝国に詳しい話をするつもりなんてなかった。
というか、資金調達はヨーナスとボニファーツ達に任していたのだ。
「さようでございましたな」
そう言うと改めてアンドレイは咳払いをして表情を取り繕った。
「殿下、本来ですとユバス王国の巡洋艦の建造費の事など他国の帝国にお話し頂く必要はございますません」
アンドレイの言葉に私達は大きく頷いた。
「ボニファーツ、貴様、何を頷いておるのだ」
私の横で大きく頷いたボニファーツをアンドレイは怒鳴りつけていた。
「事実ではないか」
「何が事実じゃ。貴様じゃろう。余計な事をしおって」
何かボニファーツが色々やってくれたらしいことを私は悟った。
でも、何をしてくれたんだろう?
「ボニファーツがマッドサイエンティストでいろいろなことを考え出す天才なのはご存じでしょう」
「ええ」
私はアンドレイの言葉に大きく頷いた。
横でボニファーツも頷いている。
「ただし、こやつの考えることはとてつもなく金のかかることが多いのです」
確かにそうだろう。ボニファーツの考える兵器は金がかかるのだ。いつも工面するのに四苦八苦している私も大きく頷いた。
「ふん。偉大な物を作るのには金がかかるのは当然じゃ」
ボニフアーツ1人平然としていた。
「こやつが帝国を去る前に計画した『最終兵器』なる物の予算を聞いて私は目が飛び出ました。何と銀河帝国の国家予算の半分を使うというのです」
「えっ?」
さすがの私も目を剥いた。
この巨大な帝国の国家予算の半分ってどんな金額だ。
私には想像もつかなかった。
ちょっと待てよ。その兵器ってジュピターに搭載したような気がするんだけど……
いやいや、待て待て、まだ同じ物と決まった訳ではないし……
「私は『そんな物は作れるか!』と拒否したのです。そうしたらこやつは帝国を出奔してユバス王国に行ってしまいました。陛下はボニファーツの能力は愛しておられましたが、金がかかりすぎるのが難点だと常々申しておられてその当時はボニファーツを遠ざけておられました」
そこに現れたのが私だったという訳だ。
「そこにユバスに移住したいという申し出があり、陛下も一度は慰留をされましたが、ボニファーツの意思が堅くて仕方なしに認められたのです」
えっ、ボニファーツって皇帝の寵臣だったんだ……知らなかった。
私は新事実を知り唖然とした。
「私はあんな金のない国でボニファーツがやっていけるのかととても危惧したのです。でも、人づてに聞くとそこの王女と仲良くやっていると聞いてほっとしていたのです。それが間違いでした」
アンドレイはぎろりとボニファーツを睨み付けた。
「最終兵器はとてつもなく金食い虫です」
「威力の強い物は仕方があるまい」
「貴様がそれを言うな!」
「偉大な兵器は金を食うのだ」
「食い過ぎだ!」
「その費用を捻出するのが施政者の仕事じゃろうが」
「何を言う。費用対効果が全くペイしないだろうが」
2人が凄まじい言い合いを始めた。
「ヨーナス、それで費用はどこから捻出したのですか?」
私は言い合いを始めた2人を無視して青くなっているヨーナスに聞いた。
「それは……」
ヨーナスが言葉を濁した。
「費用を捻出しようとボニファーツ達はフッセン男爵に目をつけたのです」
横から喧嘩を止めたアンドレイが教えてくれた。
「そうですね。フッセン男爵は我が領地に銀河法で禁止されている麻薬を蔓延させて、奴隷に落としてそれを帝国貴族に売ったと聞いております。その費用を返してもらったと聞いていますが」
私はボニファーツ達に言われた通り返事した。
「確かにフッセン男爵はあくどいことに手を出していたのは認めます。我が皇帝陛下も激怒していらっしゃいましたから」
「そうじゃ。悪徳領主から金を巻き上げるのがどこが悪い?」
「はああああ! 巻き上げた金額がでかすぎるだろうが。それも人の名前を使っていろんなところから借金しおってからに」
「大した金額ではあるまい」
「そんな額ではないだろうが!」
大声でアンドレイが叫んでいた。
「そのう、どれくらいの額なのですか?」
私は恐る恐る尋ねた。
「一京帝国ドルです」
「一京ですって!」
私はアンドレイの言葉に一瞬で気が遠くなったのだった。
生まれて初めて気絶してしまった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
気絶したセラフィーナ
続きをお楽しみに








