外務卿や騎士団長を煙に巻いて追いすがる妹聖女を置き去りにして大気圏外に向かいました
私がサーリアの領主を殴り倒して父を道連れに玉座から叩き落とした後に、私の部下達が謁見の間になだれ込んできた。
「姫様、なんて事を!」
アードルフが頭を抑えてくれた。
「さすが姫様」
「陛下と言えども手加減無し」
「ああ、やっぱり、さすが『厄災姫』!」
アーロン等が囃してくれた。
「殿下、さすがに国王陛下に手を上げられた事は見過ごせません」
呆然とみていた騎士団長が言いだしてきたが、
「姫様は俺等が守る」
アードルフ等が剣を抜いてくれた。
「皆、止めなさい。それと私は奴隷取引犯を逃がしたクフモを殴り倒しただけで父上はたまたまそこにいただけよ」
私は部下を止めると、言い訳した。
「そのような理由が通用するとでも」
騎士団長が眉を上げるも、
「何を言っているの、ヘンリク! あなたは今の父上の台詞を聞いていなかったのですか? 奴隷を認めるなんて発言をしたのですよ。それがしれたら他国からどのように言われると思うの? 私はそれを防いで上げたのよ」
私は平然と更なる言い訳をした。
「殿下、しかし、奴隷を連れたオスモがフッセンに向かったとのことですが、どうするのですか?」
外務卿のオイカリネンが尋ねてきた。
「そんなの追いかけるに決まっているわ。地の果てまで追い詰めようとも必ず奴隷にされた領民は助け出すわよ」
「しかし、帝国内に入ると領域侵犯になります」
オイカリネンは青い顔をした。
「ふんっ、先にこちらに手を出してきたのは帝国よ。それに皇帝陛下は奴隷は扱っていないと明確に否定してくれたのに、現実に扱っているじゃない。私は奴隷として連れだされた領民を助けに行くだけよ。まさか、帝国は文句を言わないはずよ」
私はちゃんとした良い訳は考えていた。
「しかし、相手は帝国の女帝ですよ。一筋縄ではいかないのでは」
オイカリネンが懸念材料を上げてくれたが、
「その時はその時よ」
私は平然と返した。
「いや、しかし、殿下……」
「それよりも、オイカリネン、サーリア星の治安回復をあなたに任せるわ。なんとかして、これ以上の麻薬の蔓延と奴隷にされる領民を増やしたくないの」
「しかし、陛下の許可なくしてはいくら私でも難しいかと」
「許可は取れば良いでしょ。もしちゃんとやってくれなかったら帝国内で暴れるからね」
「えっ、殿下、それだけはお止めください。国が滅びます」
私が脅すと、オイカリネン外務卿は青くなった。
「じゃあ、頼むわよ!」
「殿下、この後始末はどうするのですか?」
オイカリネンが気絶している父を指さしてくれたが、そんなのは知らない!
「取りあえずは全ては帰ってきた後よ。今は奴隷にされた領民を解放するのが先決よ!」
私はそう叫ぶと一同を引き連れて急ぎ、ジュピターに戻ろうと駆け出したのだ。
「「「殿下!」」」
叫ぶ騎士団長等は無視した。
「良かったのですか?」
ヨーナスが走りながら聞いてくれた。
「良くはないわよ。また、反省房行きかな」
私はそれを思うと憂鬱になった。
私のせいで気絶した父は絶対に私を許さないと思う。
「でも、あれは絶対に父上が悪いのよ。何がサーリアはサーリアで解決した方が良いよ! そんなことしているから領民が奴隷にされてしまったのよ」
私は絶対にこの件については父を許さないと心に決めたのだ。
「お姉様! 何で白の塔から出ているのよ」
私達の前に緑色に変色した服を着てずぶ濡れのエレオノーラが取り巻きを連れてこちらに向かってくる途中だった。
「この忙しいのに、何故妹に出会うかな」
私は最悪のシチュエーションに頭を抱えたくなった。
「セラフィ様、ここはお任せ下さい!」
そう叫んで先に走っていくのはついてこなくて良いのに付いてきたヴェルネリだった。
「そこのピンク頭退きなさい」
「誰がピンク頭よ」
「貴様、聖女様を愚弄するのか」
「誰が貴様よ。私はバミューダ王国の第一王女のヴェルネリよ。王女の近衛風情に貴様呼ばわりされる謂れはないわ」
両手を腰に添えて頭を上につんと上げたヴェルネリは王女に見えた。
「も、申し訳ありません」
慌てて妹の護衛騎士は頭を下げた。
「エレオノーレ殿下も一言あってしかるべきではありません事?」
更にはエレオノーラにまで謝らせようとしたヴェルネリはさすがだ。
「いや、私はそれよりも姉に」
「はああああ! 護衛騎士が王女である私を貴様呼ばわりしたのよ! 殿下はそれを当然の事と言われるの?」
「いえ、それは護衛が申し訳ありませんでした」
あの気高いエレオノーラが頭を下げたのだ。さすが、王女と言えた。
私達はその間にジュピターのタラップに足をかけたのだ。
「ちょっと、待ちなさいよ。お姉様!」
「エレオノーラ殿下。それが謝罪なの?」
「えっ、今私はあなたに頭を下げたじゃない」
「頭を下げたら良いって物じゃないわ。心がこもっていないわよ」
「な、何ですって!」
「もう一度、今度は一同揃ってよ」
偉そうにヴェルネリは指示していた。
「王女殿下、申し訳ありませんでした」
深々とエレオノーラ達が頭を下げた瞬間だ。
ヴェルネリは脱兎の如く駆け出した。
エレオノーラが頭を上げたときは、ヴェルネリはタラップに足をかけていた。
「ちょっと、何逃げているのよ! 待ちなさいよ!」
「さようなら。確かに謝罪は受けたわ」
ヴェルネリが人を馬鹿にしたような笑みを浮かべてタラップを駆け上がってくる。
エレオノーラが慌ててタラップに向かってきたときは、タラップは収納し始めていて、ゆっくりとジュピターは浮かび上っていた。
「マルコ、大気圏外に最大船側で頼むわ」
艦橋に入ると私は後悔しに指示した。
「了解です」
マルコは船首を空に向けてくれた。
「ちょっとお姉様、待ちなさいよ」
地上で叫んでいるエレオノーラ等を置いて、ジュピターは大気圏外に向かった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
今度はオスモを追いかけます。
果たして追いつけるのか?
続きをお楽しみに!








