中継星領主の独り言 王女が召還されたので権力を取り戻して、奴隷を連れて新帝国男爵に挨拶に行くことにしました
「ギャーーーー!」
王女なんて捕まえるのは簡単だと俺は思っていた。
それが間違いだった。
なんと王女のセラフィーナは『厄災姫』だった。
俺は王女が色々馬鹿なことをしているとは聞いていたが、あそこまで常識知らずだとは知らなかったのだ。
なんと、俺様達は銃でセラフィーナ達を囲んで脅したのに、いきなりセラフィーナの側近が俺の右手をレイガンで撃ってくれたのだ。
普通、銃で囲まれているのに、俺様を撃つか?
俺には信じられなかった。
だが、慌てた俺の部下達がレイガンで逆襲したら反射されて大半はやられてしまった。
そして、最後はこの『厄災姫』は衛星軌道上から艦砲射撃をこの領主邸にしてくれたのだ。
普通あり得なかった。
衛星軌道上からの艦砲射撃なんて大気で拡散されて被害なんてそう簡単に出ないのに、セラフィーナの艦はこの領主邸を一瞬で直撃してくれた。
凄まじい爆発が起こった
「ギャーーーー」
吹き飛ばされた俺様はこの世が終わったと思った。
でも、日頃の行いの良い俺様は命は助かった。
最悪なことに薄暗い地下牢に入れられたけれど。
まあ、いずれは釈放されるはずだ。
取引先のフッセン男爵も黙ってはいないだろう。
それにこのサーリアの地は俺様の領地なのだ。
文官達も全て俺様の手の者だし、幹部連中には麻薬や奴隷の売買で良い目を見せさせていたのだから。
いくらセラフイーナが粋がっても一人では何も出来ないだろう。俺は高をくくっていた。
でもセラフィーナは何故か俺様がフッセン男爵の元に輸出しようとしていた奴隷をおいていた館を急襲し、奴隷達を解放してくれたのだ。
本当に碌な事をしてくれない。
更には俺の部下達が次々に捕まえられていった。
俺は倒れている間に自白剤を飲まされて一切合切自白されていたなんて知らなかったのだ。
俺様の幹部連中は尽く捕まってしまった。
更にはなんと、フッセン男爵が俺様を助けるために艦隊を率いてくれたのを、あろうことかセラフィーナが破ってくれたのだ。
俺様は開いた口が塞がらなかった。
フッセン男爵の艦隊はそんじょそこらの艦隊ではない。確か戦艦も揃えていたはずだ。この辺りの国の艦隊が束になっても勝てないはずなのに、どんな手を使ったか知らないが、殲滅してしまったのだ。
これは幸運な俺様もさすがにやばいかもしれない。
俺様が真っ青になった時だ。
神は俺を見捨てなかった。
なんと、セラフィーナがユバス本星に召還されたというのだ。
帝国の艦隊を破ったことに気の弱い国王が激怒して呼び戻したらしい。
我が国の国王が小心者で良かった。
俺は喜んだ。
更には後を任されたのが、俺様の親戚のクフモ男爵だったのも幸いした。
クフモはあっさりと俺達を釈放してくれたのだ。
「いやあ、一時期はセラフィーナが我が物顔で我が領地内を闊歩していてどうなることかと思いましたが、本国に召還されて良かったですな」
クフモは俺に笑いかけてきた。
俺は完全にこの役に立たないクフモのことを忘れていたが、それが幸いしたらしい。
取りあえず、俺様は修道院の施設に入っていた俺様の奴隷達を再び捕らえたのだ。
「な、何をするのよ! 殿下は私達はもう自由だと言われたわ」
一人の気の強そうな女が反論してくれた。
パシーン
俺はその女の頬を張り倒したのだ。
「「「キャーーーー」」」
他の女達の悲鳴が聞こえた。
「な、何をするのよ!」
女は脅えながら必死に俺を睨んできたが、俺はその女を蹴り飛ばしていた。
「ギャッ」
女は悲鳴を上げて地面に転がった。
「屑が誰様に向かって物を話している?」
女はもう何も言えなかった。
「貴様等は俺様の奴隷なんだよ。俺様の言う通りしていれば良い。判ったな!」
女達は何も言わずに下を向いた。
俺はその一人の胸ぐらを掴んだ。
「返事はどうした?」
「は、はい」
パシーン!
俺はその女を張り倒した。
「キャッ」
女が地面に転がる。
「『はい、ご主人様』だろうが、貴様等は礼儀も知らんのか」
俺は全員を見回した。
皆びくりと震えてくれた。
「返事は?」
「はい、ご主人様」
声が小さい。
「「「はい、ご主人様!」」」
「そうだ。それで良い」
俺は頷いた。
俺は以前のつてを頼ってフッセン男爵の後がどうなったか調べた。
フッセン領はフッセン男爵の弟が継ぐことになったようだ。
俺は直ちにフッセン男爵との通信を希望した。
俺のつてが聞いたみたいで、新フッセン男爵が即座に応じてくれた。
「フッセン男爵様におかれましてはご機嫌麗しう。私はこの地サーリアの領主オスモ子爵と申します」
俺が挨拶すると
「うむ、しかし、オスモ子爵はセラフイーナ王女の御不興を買って失脚されたと聞いたが」
「まあ、王女は我が国王に断りもせずに勝手に処分を下しただけでございます。私めは我が国王陛下の覚えはめでたいので問題はございません」
「そうなのか?」
「さようでございます。我が陛下も前フッセン男爵様と戦闘に及んだことを大層気に悩んでおりまして、早急に新たに就任された男爵様と厚誼を結びたい由でございます」
「しかし、セラフィーナの件は?」
難儀なことに男爵はすぐにはこちらに靡かなかった。
「その件は申し訳ございませんが、我々ではどうしようもなかったのでございます。正義感の強い王女を我々も止められずに、私自身もセラフィーナ王女によって拘束された旨はそちら様も掴んでおられるはずです。セラフィーナ王女は現在陛下の御不興を買って白い塔に幽閉中であります。閣下におかれましては、ご就任祝いもかねて女奴隷をお送りさせて頂きますので、それで許して頂くわけには参りますまいか」
「女奴隷とな」
男爵が思わず舌なめずりするのを見て、俺様はほくそ笑んだ。
「さようでございます。見目麗しい女奴隷を10名ご用意いたしました。お納め頂ければ幸いです」
「さようか、それならば考えんでもない」
「早急に、閣下のところにこちらからお伺いいたします」
「ん、待っておるぞ」
尊大な新領主は頷いてくれた。
奴隷を10名もだすのは俺様の財布には響いたが、それでチャラにしてくれるなら良いとしよう。
何事も鉄は熱いうちに打てだ。
俺はフッセンの新領主に挨拶に向かう為に、急遽側近を連れてフッセン本星に向けて旅立ったのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
セラフィーナは黙っているのか?
続きをお楽しみに








