海賊を退治したら、何故か客船が爆発して惑星に隕石シャワーが降り注ぎました
私が大出力ブラスターで海賊船の船首を一瞬で破壊、海賊船はその衝撃で離れてくれた。
そのまま回転してゆっくりと飛んで行く。
私の駆る機動歩兵ビーナスは我が国の誇るマッドサイエンティストのボニファーツが作り出した本人曰く史上最強兵器で人形の戦闘兵器だ。
現在帝国の誇る機動歩兵Z103をも軽く凌駕する能力だとボニファーツは豪語してくれるけれど、機動歩兵にしては火力が強すぎて使いづらいと私は常々思っているんだけど……
今回は大出力ブラスターで海賊船の船首を一撃で粉砕出来て正解だったけれど、これが最低の威力っていうのがちょっと難点なんだけど……
そして、私は回転して離れていく海賊船にトドメを刺すかどうか一瞬悩んだ。
破壊された客船の土手っ腹を見たら、まだ海賊共がわんさか居るのが見えたのだ。
海賊共は思ったよりも行動が早かったみたいだ。
既に大半が客船に入った後かもしれない。
襲撃する前に制圧したかったんだが、失敗したみたいだ。
これはまずい。
「アーロン! あなたは海賊船を見張って」
「えっ、俺一人でですか?」
「あなたの隊の四機連れて行っていいわ。アンネ。陸戦隊を送って。客船内の海賊を制圧させて!」
「えっ、姫様、前もって襲撃をお教えしたのに上陸阻止できなかったんですか?」
アンネが嫌みを言ってきた。
「ごめん。失敗した。思ったよりも行動が早かったみたい。イスモ、頼んだわよ」
私はアンネに言うんじゃなくて、真っ先に陸戦隊長のイスモに言えば良かったと後悔しつつ、イスモに頼んだ。
「了解です。おい、野郎共、出撃だ!」
画面の片隅に現れたイスモは簡単に了解してくれた。
またアンネにグチグチ文句を言われそう……
「残りの隊は海賊の突入口から機銃で海賊を掃討して、陸戦隊が来るまで時間を稼いで。ブラスターの使用は禁止よ。下手したら客船が爆発するから」
「ええええ! めんどいです」
ヘイモが文句を言ってくるが、
「貴方たち判っているの? 貴方たちがいつもめちゃくちゃやるから私が周りから『厄災女』とか言われているのよ」
むっとして私が言うと、
「えっ、俺達のせいですか? 姫様がいつもブラスターを所構わずぶっ放すからじゃないんですか?」
私は反論するヘイモ機すれすれにブラスターを出力を弱めて照射した。
「ギャーーーー! 姫様、何するんですか? 俺を殺す気ですか?」
「ギャーギャー言わずにさっさとやりなさい。次は無いわよ」
私は文句を言うヘイモを一喝して黙らせた。
「姫様はどうされるんですか?」
機動歩兵部隊長のアードルフが聞いてきた。
「私は客船の上から突入するわ」
「姫様、一人では危険です」
アードルフの隊の五機が後についてくれた。
私は展望ハッチから突入しようと客船の上に向かう。
でも、展望ハッチは見当たらなくて、代わりに大きな展望デッキのある部屋を見つけた。
中に人が無ければ蹴飛ばしてガラスを割って入ろうと近付くと中には多くの人がいるのが見えた。
拡大すると、中では貴族の女の子達が海賊共に襲われているのが見えた。
真ん中の女の子はどこかで見たことがあるように思ったが、今はそれどころでは無い。
ここで大出力ブラスターをぶっ放したら、おそらく中にいる者達は一瞬で蒸し焼きになる。貴族の女子達を殺す訳にも行かなかった。
本当にもう面倒だ!
私は愛機のコクピットを開けてレイガンを構えた。
ここから襲っている海賊を撃ったら襲われている女の子まで犠牲になるだろう。
私は男の髪の毛に狙いをつけると発射した。
「ギャッ!」
男が悲鳴を上げた。
男の頭をかすめて女の子を押し倒して両手を押えていた男の手にかすったみたいだ。
我ながらナイスな腕前だ。
「何奴だ?」
海賊が私を見上げて叫んできた。
「海賊に名乗る名前はない! 全員手を頭に置いて降伏しろ!」
私は降伏を勧告してやった。
私の後ろにはブラスターを構えた五機の機動歩兵がいる。
「セラフィ様! 私を助けに来て頂いたのですね」
何故か女が私を知っていたみたいで、喜んで声をかけてきた。
「ええい、煩い! 貴様こそ動くな。この女にの命がどうなっても良いのか?」
海賊はその女を後ろから抱きしめて剣を女の首に押し当ててくれた。
「ちっ」
私は舌打ちした。さっさと男だけ殺しておけば良かった。
最近アンネが煩いから仏心が働いたみたいだ。宇宙海賊は全宇宙の敵なのだ。宇宙法においても本来宇宙海賊は見つけ次第殺して良いことになっていた。
女を人質に取られてとても面倒なことになった。
「全員、銃を捨てろ!」
海賊の頭らしき男が言い出してくれた。
そんなこと言っても後ろの機動歩兵のブラスターはコードが綱がっていて、捨てるなんて無理なんだけど……私もレイガンを捨てるつもりはないし……
「セラフィ様!」
女が私に悲鳴を上げてくれた。
「せ、セラフィだと!」
でも、今度は周りの海賊達が真っ青になった。
「せ、セラフィって、お頭、こいつ『厄災女』です」
海賊の一人が余計な事を言いだしてくれた。こいつらは後で処刑だ!
「はああああ? なんだ、その『厄災女』ってのは?」
この海賊の親分は知らなかったらしい。
「お頭知らないんですか?」
「バロンの衛星カロンを破壊したっ噂ですぜ」
「何言うんだよ。それよりは惑星ボランチにステーション落下させて大陸一つを消滅させたって噂の女だぜ」
「いや、それ以上に赤色巨星のガニメデに熱核爆弾をぶち込んで超新星爆発を引き起こしたって聞きましたぜ。辺り数光年に人が住める星は無くなったとか。何億って人間が死んだそうです」
海賊の奴らは好き勝手なことを言ってくれた。そもそも恒星ガニメデの周囲数光年に人が住んでいた星なんて存在しなかったし……私は勝手に話を作るなって叫びたかった。
「ふんっ何を恐れていやがるんだ。こちらには人質がいるんだぞ」
「お頭。相手は『厄災女』ですぜ」
「人質なんて気にする訳内でしょ」
「そうでさ。ガニメデの時は何億人も殺しているという噂ですぜ。一人の人質なんて見捨てるに決まっているでしょ」
なんか海賊共は私の事をめちゃくちゃ言ってくれるんだけど。私も一応この国の王女なんだけど……当然、民間人の命は大切にする。
まあ、私は銃を下ろすつもりは無いんだけど……でも、人質の命は助けるつもりは満々だ。
「セラフィ様、私なんかに構わずにこの海賊諸共殺してください! セラフィ様に殺されたら本望です」
海賊に人質に取られた女は決意した顔でとんでもないことを言いだしてくれた。
「何を言ってやがる。この尼! ここで犯してやろうか!」
海賊ははだけた服からはみ出した女の胸に手を差し入れていた。
「何してくれるのよ! この変態!」
「グウォ!」
その瞬間女は切れたみたいで、肘鉄を下卑た笑みをした海賊の鳩尾に決めていた。
「えっ?」
唖然とする私の前でそのままスカートのまま中の下着が見えるにもかかわらず、胸を押えてもだえている海賊の股間を蹴り上げてくれたんだけど……
「ギャーーーー」
海賊は口から泡を吹き出して悶絶して倒れていた。
「この尼、お頭になんて事してくれるんだ!」
男達が女に襲いかかろうとしたので、私は慌ててレイガンをぶっ放したのだ。
5射した。
5人の海賊が倒れる。
私はガラスを蹴破って中に降り立った。
蹴破ったガラスはあっという間に修復ペイントが飛んで来て塞いでくれる。
「セラフィ様! お会いしたかったです」
女が私に抱きついてくれた。
私が女を落ち着かせようとしたときだ。
ドドドドドド
なんか船底から腹に響く音が聞こえてきた。
「姫様。船底から爆発音がしています。直ちに退避してください!」
「えっ、なんで? 誰が何したのよ?」
今回は私は何もしていないはずだ。
「さあ判りませんが急いで」
直ちに飛び込んできたアードルフ達と協力して私はできる限りの多くの乗客と乗組員を助けたのだった。
その後客船が爆発したのだ。
更にはアステロイドベルトの方で大爆発が起こった。
「えっ?」
私には信じられなかった。
あの方向だと海賊船が飛んで行った方だ。
そして、その結果として惑星サーリアに大量の隕石がシャワーとなって降り注いだのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
『厄災女』ここに至りです。
厄災女の歴史がまた1ページ
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