白の塔で暇していたら、隣国の王女が襲ってきました?
私は白の塔で暇していた。
最初の一日は久しぶりに寝たんだけど、寝て起きてだけでは暇だった。
まあ、武器は取り上げられていないから、昼間は、ただ、無心で木刀を振っていた。
そして、夜は昔、スージーに見せせてもらったように満点の星空だった。
昔スージーに教えてもらった星座を私は見つけようとした。
でも、なかなか見つけられなかった。
暗黒星雲に囲まれることの多いユバスでは本当に星を見られる日なんて数えるくらいしかないのだ。
今年はこれだけ長い期間見られるなんて異常だった。
まあ、たまにこんな時があるらしい。
でも、私は唯一「あれが姫様の星です」と言ってくれて見せてくれた星が赤いガニメデだった。
これはすぐに見つけられた。
ガニメデは赤く輝く大きな星でこの地からも良く見えた。
昔から赤く光り輝くガニメデは信仰の対象で、ガニメデを守り星として崇める人も多いのだ。
「でも、スージー、ガニメデはボニファーツが超新星爆発で吹っ飛ばしてしまったんだけど……」
そう、赤色巨星のガニメデはボニファーツが実験で最終兵器を発射したら超新星爆発してしまって、この世にはもう存在しなくなったのだ。遠くに離れているからここからは輝いて見えるけれど……既にこの世に存在しない星が輝いて見えるのはとても不思議な気分だった。
「私の守り星が爆発してしまったってことは、私も爆発しちゃうのかな……」
私は不吉な物を覚えた。
本当にここのところ最悪だった。
ガニメデは超新星爆発を起こすわ、ボランチの宇宙ステーションを地上に落とすわ、惑星サーリアに流星雨を降らせるわ、『厄災姫』の名に恥じないことをいやほどしていた。本当にこんな二つないらないのに!
その上、今は、白の塔に閉じ込められていた。
必死に良い王女になろうとした結果がこれだ。
「でも、お父様も酷くない? 今迄散々惑星サーリアを食い物にしてきたフッセン男爵率いる帝国の艦隊を殲滅したのに、私の話を聞くでもなく褒めることもなくて、こんな所に閉じ込めるなんて」
私は天国のスージーに文句を言っていた。
その事を考えると、目がうるんできた。
「あれっ、涙が出て来た!」
私は目を押えた。
お父様もお母様も見るのはエレオノーラだけだ。私なんて、全く気にしていない。その分スージーに甘えたけど、スージーも私が我が儘言ったから、フッセン男爵に殺されてしまった。
まあ、私の事を全く気にしないから、好きなことをしてきたと言うはあるんだけど……
少しくらい、褒めてくれても良いのに……
まあ、あれだけ色々と問題を起こしてしまったら、仕方がないかもしれないんだけど……何か少し納得できない……
「スージー、良い王女になろうとすればするだけ大変なことを引き起こしているんだけど、私って駄目な王女なのかな」
私はスージーに愚痴りつつ、その日は涙に暮れて寝てしまったのだ。
その翌日だ。
「セラフィ様!」
私は私を呼ぶ甲高い声を聞いた。
この声はどこかで聞いたことがある。余り思い出したくないような声だ。
「セラフィ様!」
今度はもう少し近くで聞こえた。
返事をしようとして、私の本能が警報を鳴らした。絶対に返事をしてはいけないと……
そうだ、この声はヴェルネリだ。バミューダ王国の王女で、私を男と間違えて、釣書を送ってきた不届き者だ。もっとも、本人は私を女と認識していたそうだが……更に危ない奴だ。私は少なくとも女に興味はない!
やばい!
あいつ、まだ国に帰っていなかったんだ。
でも、何故、この塔にいるんだろう?
この塔は許可得たものしか入れないはずなのに。
私はどこかに逃げようと思った。
でも、ここは最上階だ。
これ以上はどこにも行けない。
隠れるところって言ってもベッドがあるだけだ。
「どうしよう?」
私が困惑したときだ。
「セラフィ様! こんなところにいらっしゃったのですね!」
感極まったヴェルネリが現れたのだ。
私はにげようとしたが、後ろはベッドしかなかった。
「お会いしたかったです!」
ヴェルネリはそういうと私目掛けてダイブしてくれた。
「ギャーーーー!」
私は思わず悲鳴をあげていた。
悲鳴がかわいくないがそんなの関係ない。
貞操の危険を感じたのよ。
そこで絶対防御システムが作動してくれた。私はこの時ほどこれを開発してくれたボニファーツに感謝したことはなかった。
バシン!
「キャーーーー!」
ヴェルネリは悲鳴をあげると弾き飛ばされた。そして、白い棟の壁に叩きつけられる。
私はほっとした。
「ひ、酷いですわ、セラフィ様、私を弾き飛ばしてくれるなんて!」
しかし、何故か、ヴェルネリは気絶していなかった。そんなばかな、普通はあれくらいの勢いで壁に激突したら気絶するはずなのに!
「セラフィ様!」
また、抱きついて来てくれたんだけど、信じられない!
でも、絶対防御システムは無敵だ。
再び、ヴェルネリを弾き飛ばしてくれた。
でも、ヴェルネリはそれにも負けずにまた、抱きついて来るんだけど……
私は自分の貞操の危機を覚えた。
「ちょっとボニファーツ、何とかしてよ!」
私は必死に助けを求めたが、ボニファーツの奴、無視してくれたのだ!
信じられない!
「セラフィ様!」
しなを作って、私に抱きついてくるヴェルネリに私は本当に身の危険を感じたのだ……








