殺された侍女のお墓に参って、白の塔に入りました
私は近衛にいきなり銃を突きつけられて唖然とした。
私は国の為に帝国と戦闘してそれを殲滅して帰ってきたのに、いきなり近衛に銃を突きつけられるってどういう事?
まあ、元々お父様もお母様も妹の聖女のエレオノーラしか見ていないからそんなに期待していなかったけれど、この扱いは無いんじゃないかと一瞬ピキピキと頭の筋が鳴ったのは事実だ。
そもそもボニファーツの絶対防衛装置を発動させれば、こんな近衛達なんて一瞬で吹っ飛ばせる。
ジュピターも傍にいるのだから逃げ出すのなんてとても簡単だ。
まあ、でも、二日酔いで凄まじい頭痛がしていたので、あまりうまく考えられなかった。
両親の叱責を聞かなくて良くなったのならば白い塔で反省しても良いかと思ってしまったのだ。
私は不平ながらも近衞騎士達に囲まれて、白の塔に連れて行かれた。
昔、スージーに頼んで夜空を見るために連れてきてもらった塔だ。
王族が反省するための塔だとは知らなかった。
そして、その白い塔の前に、スージーのお墓があったのだ。
「少し待ってくれますか?」
「何をなさるのですか?」
騎士団長が驚いて聞いてきた。
「お墓参りです」
私はそう言うと、スージーのお墓の前に進んだ。
「で、殿下」
近衞騎士達が止めようとするが
「構わん」
騎士団長が近衛達を止めてくれた。
私はスージーのお墓の前に跪いた。
「スージー、やっとスージーの仇が討てたよ」
私はスージーのお墓に報告した。
「本当に遅くなってゴメンね」
私はスージーが首を振ってくれたように感じた。
「私は今もスージーとの約束守っているよ。良い王女になるように必死にやっている。お父様達は私がやり過ぎると怒って白い塔に入れられるんだけど、私はサーリアの民の為に必死にやっただけなのに!」
後ろで疑い深そうな騎士団長の視線が気になったけれど……私は無視した。
「サーリアの領主がスージーの仇の帝国のフッセン男爵等と組んでサーリアの民に、麻薬を販売していたんだ。その上、弱い女の人達を捕まえて帝国貴族に奴隷として送り出していたのよ。私はこの国の王女なのに、その事を掴んでいなかった。本当に王女失格だよ。
スージーには立派な王女になるって誓ったのに……ごめんね」
私はそう言いながら、涙が溢れてきた。
「殿下、そろそろお時間です」
騎士団長が私を動かそうとした。
「ヘンリク!」
私はその騎士団長の名前を呼んだ。
「はい?」
騎士団長は名前を呼ばれてぎょっとしていた。
「私を白い塔で反省させるというのならば、今回のサーリアの麻薬販売と奴隷の取引を見逃していた父上の反省はどうなるのだ? 一番責任を取らねばならないのはこの国のトップたる父上だろう?」
「いや、それは……」
騎士団長は戸惑ってくれた。まあ、父は全く反省するつもりはないようだ。
しかし、今までサーリアを食い物にしていた巨悪のフッセン男爵等を退治したのは私だ。
その私が反省坊入りして、見逃していた父が何も無しというのは納得いかなかった。
「父上と話すときにその話もじっくりと聞きたい。そう、父上にはしっかりと伝えておいてくれ」
私は釘を刺したのだ。
少女達が奴隷に落ちていたのだ。
私はその少女の絶望した目の色が未だに忘れられない。
当然私も王女だから責任の回避は出来ないが、一番上に国王である父がいるではないか?
当然父も責任を取るべきだ。
「判りました」
騎士団長はそう言ってくれた。取りあえず私はそれを信じることにした。
私はそのまま騎士達の案内を固辞して白い塔に一人で入った。
そして、一番上の反省室の中に入ったのだ。
白い塔の名の通り、室内は全て白だった。
何か少し気が滅入る。
そう言えば、アードルフ達をおいてきてしまったとその時になった私は気付いた。
これはまずい。
アードルフ達なら下手したら反乱を起こしかねなかった。
「ボニファーツ」
私はボニファーツに呼びかけた。
「これは姫様、どうされたのですか? 白い塔に入られたみたいですが」
ボニファーツの声がした。
私の防御をボニファーツは担当しているので、私の情報は筒抜けになる。
「そうよ。本当に父にはむかつくわ」
「姫様がそこで暴れられなかったのが信じられん」
「今日は二日酔いで頭痛が酷いから……って違うわよ。私も大人になるわよ」
「まあ、今回も姫様はいろいろとされましたからな」
「誰のせいだと思っているのよ!」
「……」
私がむっとして聞き返すと無視された。
「それよりも、それを知ったアードルフ達が暴れようとしておるが」
「それは止めさせて! 私は白の塔で1週間くらい休むから他の者達もじっくりと休むように伝えてほしいの」
「判った。でも、姫様はそれで良いのか?」
いやなことをボニファーツは聞いてくれた。
「出来たら父にも1週間くらい白の塔で反省してほしいけれど、それは中々難しいでしょう?」
「それはそうじゃが、まあ、判かった。いろいろと考慮しよう」
「いや、良いわよ。あなたに頼むと1年間くらい閉じ込めそうだから」
ボニファーツの返事に私は慌てた。
「まあ、でも、我らの姫様を閉じ込めてくれたのじゃ。国王にも責任を取ってもらわんとな」
ボニファーツの言葉に私はボニファーツの怒りを感じて更に慌てた。
「ボニファーツ、本当に何もしなく意良いからね」
「まあ、姫様は気にめさるな。我らは勝手にやるからの」
そう言ってボニファーツは笑って通信をきってくれたんだけど……
何するつもりなんだろう?
私は少し不安になった。
その翌日に妹のエレオノーラが深泥池に放り込まれるなんて私は想像だにしていなかったのよ!
セラフィーナを白の塔に入れた王家の人間達にボニファーツ達の怒りが炸裂します。
続きをお楽しみに!








