聖女視点 姉から専用巡洋艦を取り上げることにしました
私はエレオノーラ・ユバス、このユバス王国の聖女様よ。
私は小さい時から花よ蝶よと周りからはそう言って育てられたわ。
この桜のようなきれいなピンク色の髪に、緑の瞳、このユバス王国の初代聖女様と同じ髪と瞳の色を持つ私はとても可憐だった。
そう、私はこのユバス王国にて、奇跡の力を持つただ一人の聖女なのだ。
奇跡の力が何かは知らないけれど……
そんな私には一人の姉がいるの。
おしとやかでエレガントな私と違って、姉はがさつで喧嘩早くて、いつも誰かといがみ合っていたわ。
今は特にお父様とかお母様とやり合っているんだけど……お姉様のやることにお父様もお母様はいつも頭を抱えていた。
お姉様はその二人によく叱られているわ。
叱られても、全然効果が無いけれど……
心優しい聖女の私から見ても、お姉様は本当の問題児よ。
何しろついたあだ名が厄災姫なんだから。
本当にどうしようもないわ。
私は聖女として崇められているのに、厄災姫なんて姉がいるからたまったものじゃないわよ。
縁談が来てもお姉様のせいで話がなくなるかもしれないじゃない!
本当にお姉様は女伊達らに戦闘艦を駆って海賊退治にせいを出している変わり者よ。
野蛮なことをして何が嬉しいんだろう?
私にはよく理解できなかったわ。
今回も帝国の男爵に喧嘩を売ってその艦隊を殲滅していたけれど、帝国の怒りを買っても大丈夫なの?
また、お父様やお母様がお詫び三昧することになるのではないかしら。
お姉様はこの前も赤色巨星を超新星爆発させたところだし、近隣諸国にお父様もお母様も必死に頭を下げて謝っていたもの。
心の清らかな私はやっかいごとに巻き込まれたらいけないから、お姉様の船には近寄らないと決めていたのよ。君子危うきに近寄らずよ。
でも、この前、トピアス様に言われたの。
トピアス様って誰って? 私の崇拝者の一人よ。隣国のシネッタ王国の王子様なの。まあ、私くらいの美貌とこのユバス王国の跡継ぎという地位があると、何もしなくてもたくさんの男達が群れて来るのよ。
その中でもトピアス様は有望株よ。我が国より大きいシネッタ王国の王子様だし、見目麗しいし、ある程度鍛えているし、まあシネッタ王国の跡継ぎというのが私にはネックだけど……
私はこの国の聖女様だから基本的に私が婿を取ってこの国を継がないといけないのよ。
「セラフィーナ様は専用の艦船を持っているんだよね。今度私も乗せてほしいとお願いしておいてくれないかな」
そんな彼がこう言い出してくれたのだ。
うーん、トピアス様と船に乗って宇宙デートというのも良いかもしれない。
お姉様の船がもっと優雅でエレガントな船なら、聖女権限で取り上げたのに!
あんなずんぐりむっくりじゃ、この聖女様の乗艦にするには少し格好悪いし……
私はそう思ったのだけど、
「うーん、エレオノーラ嬢には男のロマンが判らないのかな。あのずんぐりしたところにこのユバス王国の最新鋭機のマーキュリーが二十機も格納されているんだろう? 凄いじゃ無いか! その指揮官も凜々しいセラフィーナ様だし、セラフィーナ様ごと我が国に欲しいよ」
トピアス様はそう言ってくれるんだけど。
そうか、他国の王族からみてこのジュピターみたいなずんぐりむっくりとした船体でも魅力的なんだ。
じゃあ、私の乗艦にしても良いかも。
この船に乗ってシネッタ王国を訪問したらものすごく歓迎してもらえるんじゃないか?
そうして、私はどうすればジュピターをお姉様から取り上げられるか考え出したのだ。
丁度そんな時に帝国のフッセン男爵と艦隊決戦をやり合ってお姉様が帝国の艦隊を殲滅したのだ。
お父様は帝国の怒りを買ったらこんな国は一溜まりも無いと蒼白になっていた。
「お父様。こうなったら帝国の皇帝陛下のお怒りを逸らすためにも、お姉様には白の塔に入ってもらって、少し反省してもらった方が良いんじゃなくて」
「そうだな。さすがエレオノーラだ。今回の主犯のセラフィーナを責任を取らせて白の塔に幽閉したという事にすれば帝国の皇帝陛下の怒りも収まるかもしれんな」
「さすがエレオノーラよ。そうすればセラフイーナも少しは反省するでしょう」
お父様もお母様も賛成してくれた。
「でも、そう簡単にお姉様が白の塔に入るのかな?」
私がこてっと首をかしげると、
「うーん、それは難しいな。セラフイーナには口うるさいアードルフやヨーナスがいるからな」
「陛下、セラフイーナ様とアードルフ等側近達を一緒にして宣言するのでは無くて、セラフイーナ様お一人にしたところを近衞騎士等に囲ませて白の塔に連行することにすればいかがですか?」
近衞騎士団長が提案してくれた。
「それは良いな。側近がいなければあの厄災姫も何も出来まいて」
お父様が頷いてくれた。
「じゃあ、お父様。お姉様が白の塔に入っている間、あの船を私が借りて良い?」
私はここぞとばかりに握りしめた手を前に持って来て、お父様に上目遣いにおねだりしたのだ。
これが通用しなかったことは今まで一度もなかった。
「あの船を借りるって巡洋艦なんてどうするんだ?」
「そうよ、エレオノーラ、あんな危険な船にエレオノーラが近付くのは止めた方が良いわ」
なんと私が頼んだのに二人はすぐには賛成してくれなかった。
「でも、お父様。お姉様に白の塔で反省してもらっている間、あの船の管理はどうするの? そのままにしておいたら反逆してお姉様を奪回しかねないんじゃないかしら」
「いや、それはそうだが」
「その点、私はこの国の聖女よ。お姉様の妹でもあるのだから、私が船に行ったら皆も私の言う事をきいてくれるんじゃ無いかしら」
「いや、まあ、それはそうかもしれんが」
反対するお父様のトーンが弱くなった。
「ねっ、お父様、厄災姫と呼ばれているお姉様よりも聖女の私の管理下においた方が絶対に安全よ。それに私は聖女だもの。皆諸手を挙げて歓迎してくんれるわよ」
「そ、そうだな」
「しかし、陛下、奴らがエレオノーラ様を受け入れるでしょうか?」
騎士団長が反対してくれたけれど、
「ふんっ、受け入れられぬなら、反対する奴らを首にすれば良いだろう」
お父様はそう言ってくれたのだ。
結局、お父様からジュピターの指揮権を私に変更すると言う命令書を作ってもらった。
「これでトピアス様を宇宙デートに誘えるわ」
私は喜々としてお姉様が帰って来るのを心待ちにしたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
悪巧みする聖女でした。
でも、そんなことが通用するのか?
続きをお楽しみに!








