侍女の仇の帝国の暗部の男を討ち果たしました
グサッと刺された瞬間だ。
私は優しかったスージーの笑顔を思い出していた。
これでスージーのに所に行ける。
私はそう思った。
スージーを看取った後、私は半狂乱になっていた。
全部我が儘を言った私が悪いんだと自分を責めて泣き叫んでいた。
周りは驚き呆れていたが、もうそんな私を抱きしめてくれる者はいなかった。
結局、何故スージーが殺されたのか、私には誰も教えてくれなかった。
私が知ったのは大分経ってからだった。
私にイチゴを買おうとイチゴ農園にわざわざ行ってくれた目の前で帝国貴族が残りのイチゴを全て買い取ったそうだ。
スージーはその貴族に一つだけで良いから分けてくれないだろうかと必死に頼んだのだ。
でも、貴族は笑って頑なに聞き入れてくれなかった。
そのスージーが必死にお願いした時に下げた髪の毛がその貴族に一瞬触れたそうだ。
「無礼者!」
帝国貴族の護衛の剣が一閃した。
スージーにも護衛をつけていたのに、護衛は全く動くことすら出来なかった。
「何をする!」
慌てて騎士が叫んだときは、もう遅かった。
「それはこちらの台詞だ。こちらのお方はフッセン男爵家の若さまでいらっしゃるぞ。王女の侍女風情が触れていい相手ではないわ」
「……」
スキンヘッドの男の言葉にイスモは何も出来ずにスージーの体だけをなんとか連れて帰ってきたそうだ。
後日大きくなった私がその時の護衛のイスモを問い詰めて判明した。
当時、帝国貴族は治外法権を持ち我が物顔で我が本星を歩き回っていたそうだ。
その時に知っていれば私はそのままそのフッセンの若様に斬りかかっていただろうし、その時に返り討ちにされてここにはいなかっただろう。
私は自分の至らなさを肝に銘じ、それからは我が儘なこととは言わないように努力した。
そう、努力はしたのだ。
私なりに。
私の専用巡洋艦とか、専用機動歩兵も普通の王族が持っているものだ。きっと……
そして、そんなことよりも私は自分の力のなさを実感した。
自分が力さえあればスージーを無礼打ちなんてさせることはなかった。
そして、犯人をこの国から出すことなんてさせなかった。
帝国の貴族は許さない!
でも何も出来ない!
全ては自分に力が無いからだ。
それからは必死に剣術を磨き射撃の腕を上げ、機動歩兵の操縦の能力を上げるようにした。
でも、それだけでは駄目だ。
のぼり調子の帝国貴族には勝てない。
敵を知らねばと何回か帝国に社会見学と称して遊学した。
その時にスカウトしてきたのが、ボニフアーツと、ヨーナスだ。
彼らと私の専属工房となっていたポルヴィ工業を引き合わせて、私は兵器の増産計画を推し進めたのだ。
まあ、帝国と全面戦争するだけの戦力なんてこの小国には無理だったが、帝国の小部隊と互角の戦いをするくらいまでの戦力にはなったと思う。
まあ、でも、私の気も知らずに、ボニフアーツは第25恒星の赤色巨星を超新星爆発させてくれるし、第25ステーションは惑星に落ちてくれるし、25年ぶりにサーリア山まで噴火してくれた。
帝国のあの貴族に復讐するなんて夢の又夢だ。
私は自国を守るだけで精一杯だった。
でも、それはスージーと約束したことだった。
立派な王女になるのはスージーの希望だった。
おろそかにする事なんて出来ない。
まあ、私一人では何も出来ないけれど、私の周りにはアンネを始めとして優秀なスタッフがいる。
彼女らが賢明に復興計画を立ててくれていた。
「そんな予算などないぞ!」
父はあっさりとそう言ってくれたから、私はへそくりから懸命に作り出すしかないのだ。
またマーキュリーの増産型M103を売り込まねばなるまい。
ヨーナスに頼むしかない。
確か、ヨーナスの同級生で連邦の武器商人がいたはずだ。
それに我が国より少し大きなシネッタ王国の王子に売り込もう。彼とは帝国に遊学中に知り合ったのだ。彼なら私が頼み込んだら買ってくれるだろう。
そんなことが走馬灯のように私の頭の中を通り過ぎた。
ここまで本当に私は頑張った。もう良いだろう。
私はスージーの所に行って褒めてもらうんだ。
私がいい気になったときだ。
「何をふざけた事を考えている! 姫様、左正面、探していたスキンヘッドの男じゃないのか?」
私の脳裏にボニフアーツの罵声が響いた。
頭がガンガンする。
だから、絶対防衛システムはいやなのだ。
バリアを張ってくれる代わりに、ボニフアーツとボッチに私の事は丸わかりなのだ。
目の前にデータが現れる。
スキンヘッドの男?
右手20メートルにこちらを爛々と怒りの顔で見ている男がいた。
カツラを被っているようだが、取ると、指名手配の男の顔になった。
あの事件の後にイスモに似顔絵を描いてもらったのだ。
その男とぴったりだった。
スージーを殺した男だ。
その瞬間、私は現実世界に帰ってきた。
「貴様!」
次の瞬間、目の前の老婆の首をアードルフが刎ねていた。
老婆に化けた暗部の人間だろう。
容赦する必要は無いはずだ。
私は絶対防御システムをしているから体に受けたのはショックだけだ。剣は私の体を守っているバリアに振れた途端に溶けていた。
後でボニファーツに怒られたんだけど、センサーが危険マークを出していたはずだと言うのだ。私はスージーに言われたお年寄りに優しくすると言う行為をすることを優先していてよく画面を見ていなかったらしい……
そして、私はアードルフに構わず駆け出した。
スキンヘッドの男目がけて!
絶対にスージーを手にかけた奴は許さない!
「ウォーーーー!」
私は男に向けて駆けていた。
慌てた男は銃を取り出して私に向かって撃ってきた。
しかし、ボニフアーツの自慢する絶対防御システムはびくともしなかった。
全ての弾丸を弾き飛ばしていた。
一気に男の前まで駆け込むと、光剣を振り下ろした。
しかし、さすが、暗部の男だ。
銃でそれを受けとめてくれた。
しかし、銃なんかで私の光剣は受け止められない。
あっという間に銃が両断される。男は必死に後ろに飛びすさろうとした。
「喰らえ!」
「ギャッ!」
しかし、後ろから駆け込んできたイスモが男の後ろから光剣で斬り下げたのだ。
男は勢いで私に飛んで来た。
「死ね!」
私は光剣をその男の胸に突き刺していた。
「うっ!」
男は信じられないという顔をして固まっていた。
次の瞬間男は口から血を吐いて倒れ込んだ。
私はスージーの仇をやっと討てたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
侍女の仇の一人を討てたセラフィーナ。
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