男爵家暗部の独り言 辺境の小娘にナイフを突き刺しました
私はフーバー、代々このフッセン家に使えてきた暗部の長だ。
フッセン家は中世より母なる地球にあった領主の血を引く一族で超名門だ。
我が家は代々そこに仕えてきた。
2200年代にワープ航法が開発されて人類は太陽圏外に進出、帝国の始祖が第二の地球から更なる宇宙に進出されたのが2280年だ。我が主のフッセン家もそれについて行き、2325年にフッセンを当時の皇帝陛下から拝領し領地を作った。以来我がフッセン家は銀河帝国皇帝陛下とともにある。
2500年の第二次銀河大戦において、帝国はエカチェリーナ大帝の活躍によって銀河連邦軍を撃破、その後も帝国は年々近隣諸国を併合し拡大を続けて現在に至っている。
銀河帝国の威は周辺諸国を圧倒していた。
それに伴って俺の所属するフッセン家は今やこの辺りの盟主となっていた。周辺諸国は我が家に次々に貢ぎ物をし、大国、銀河連邦からも特使が挨拶に来たくらいだ。
そんな我が家の近辺で近頃ユバスの小娘が暴れているとの報告が入ってきた。ユバスなど新興の国で我が領地の半分の人口しかいない暗黒雲に覆われた小国だ。大戦時も暗黒雲に囲まれていたので連邦も帝国も面倒でしかないので関わらなかっただけだ。その小国の小娘が我が物顔で我が家の縄張りに手を出してきていた。
最初はユバスの小娘などほっておけば良かろうと見逃していたのが、我が家の傘下にある、辺境の赤ひげを撃破して、サーリアの領主を逮捕したとなれば捨て置くことも出来なかった。
元元サーリアは独立国で我が家の傘下にあったのだ。
しかし、距離も遠く、火山の噴火や飢饉もよくあるサーリアは我が家のお荷物になっていた。それを近くのユバスが我が男爵家の傘下に入ると言う口約束のもと管理したいと言ってきた。サーリアとの貿易は黒字だったが、当地にかかる援助が圧倒的に赤字だったので統治だけ任せれば良かろうと任せたのだ。
しかし、それが間違いだった。最初の数年はユバスも朝貢してきたのだが、代替わりするやそんなのは知らないと無視してきた。こちらも代替わりしたことと、統治しても赤字にしかならなかったので統治は形式上はユバスが統治し、実質は我が男爵家が支配するということで、両国で暗黙の了解になっていた。
その我が方の意にかなったサーリアの領主を逮捕、拘禁して、サーリア山の火口に投げ入れるなど、本来は許されることではないのだ。
それを様当然のようにやるユバスの小娘はどんな教育を受けてきたのだ?
その吊るされた領主のオスモの口から、閣下の名前が出たのは完全に計算外だった。
ユバスの小娘はわざとそれを記者会見で出してくれた。
こいつは絶対にわざとだ。
フッセン放送にはその部分を削除させたが、すべてのマスコミを黙らせることは出来なかった。特に連邦系の放送局が、大々的に述べだしたのだ。
『帝国男爵家が、奴隷取引か?』
『帝国貴族が銀河法違反か?』
それを黙らせるのは中々骨だった。
男爵家からユバスに抗議すると共に、カンカンに怒った閣下からは小娘の捕縛命令が出た。
サーリアには元々暗部やその配下も多く、すぐに小娘を捕まえられると楽観していた。
しかし、小娘は何をトチ狂ったのか、我が男爵家関係者を片っ端から捕縛してくれたのだ。
暗部や暗部に関わる遺憾にかかわらずだ。
普通は絶対に許されないことだった。
小娘は戒厳令を盾にして実行してくれたのだ。
こちらからは外務卿に抗議するも、その時は謝罪されるが、捕縛された者が解放されることはなかった。
更にはこちらから、新たに派遣したフリゲート艦も問答無用で艦砲射撃で撃沈されいた。
「どう言うことだ? 外務卿、我が国と戦争を始めるつもりか?」
閣下は激怒されていた。
「そのような、滅相もございません。しかし、セラフィーナ殿下は若いゆえか潔白な所があって、我らの言うことも聞かれないのです」
外務卿の言い訳は我らとしては認められるわけにはいかなかった。まあ、ユバスで対処出来ないのなら、我が国がやるしかあるまい。
閣下は暗部の精鋭を派遣されることを決定されたのだ。
私は25名の暗殺部隊の精鋭を組織してわざわざ連邦経由で現地に入ったのだ。
現地からの数少ない情報でどんな仕組みかわからないが、小娘は光学兵器を無効にするすべを持っているらしい。信じられぬ事だったが。
我が方は実弾の銃を持つ部隊とナイフ遣いで組織した。
基本は王女の捕縛だ。
まあ、しかしここまで来るとそうも言っていられないだろう。
俺は暗殺することにした。
我らは連邦の商人に化けて、サーリアに潜入した。
王女の予定を調べると避難所には毎日のように顔を出しているのが判った。
そこで連邦から来たボランティアスタッフになって避難所を訪問するようにしたのだ。
スタッフになるのはほとんど疑われなかった。
更にはその避難所にたまたま捕まらずに避難していた我が男爵家の暗部の一人と接触できたのだ。
そこで更に二人、その暗部の親戚としてつけることに成功した。
後は王女が慰問に来るのを待つだけだった。
そして、3日経って、我々が訪問していた丁度その時に王女が慰問に訪れたのだった。
俺様はほくそ笑んだ。
これで上手くいく。
歩いてくる王女の真ん前で、老婆として避難所に潜入していた暗部の者が盛大に転けてくれた。
「大丈夫、おばあちゃん?」
慌てた王女が駆け寄ってくれたのだ。
これはやれた。
俺は確信したのだ。
「はい、すみませんね」
そう感謝しつつ、老婆は胸に隠し持っていたナイフで王女の胸をズブリと貫いたのだった。
ナイフで刺された王女の運命や如何に?
続きをお楽しみに!








