帝国男爵視点 会見でばらしてくれた辺境の小娘をこの手で生きたまま残酷な処刑をしてやることにしました
「ほれ見た事か! あの女、余計な事をするから神の怒りを買ったのじゃ」
儂はサーリア山が噴火する様を伝えるローカル局のニュースを見てほくそ笑んだ。
余計な事を辺境の王女がしてくれたので神の怒りが火山の噴火に繋がったと思ったのだ。
「さようでございますな。そのような噂でも流しますか?」
暗部の長のフーバーが提案してきた。
「フーバーよ、噂ではないぞ。事実じゃ」
儂はフーバーの提案を修正した。
「確かに。サーリア山は男神の山でございます。余計な事を女がしたので男神がお怒りになられたのでしょう。生け贄が必要かもしれませんな」
「そうじゃ。あの女を生け贄として生きたまま火口に放り込んでも良いぞ」
儂は良いことを思いついた。
「それも良い案ですな」
「命乞いする様を全世界に放送してやっても良かろうて」
儂は余計な事をしでかしてくれて便利使いで来たオスマを捕まえて儂の奴隷共を不明にさせた辺境の王女に対する仕返しを考えついて溜飲の下がる思いがした。
「噂によるとサーリア山にセラフィ王女が衛星軌道から艦砲射撃を命じた結果サーリア山が噴火したという噂もあり住民の間で不満が高まっています」
キャスターが良いことを言ったくれた。
さすが儂が金を出しているフッセン放送なだけはある。
なんならこの女も褒美に抱いてやろうかの!
儂はこの時までは超ご機嫌だった。
「スタジオ、聞こえますか?」
現地のキャスターの声が聞こえた。
「なんでも、ユバスの王女が緊急会見を行うようです。ご自身の愚行でサーリア山が噴火した点について釈明されるのでしょうか」
こやつは儂の下で調教してやっただけあって声もなまめかしい。
また、褒美をやらねばなるまいて。
儂はほくそ笑んだ。
「釈明と言っても今更噴火したものはどうしようもありませんよね」
「本当です。どのような釈明をされるのか聞いてみましょう」
画面がスタジオからどこかの会議室のようなところに切り替わった。
なんとも質素な作りで、村か何かの公会堂みたいな感じだった。
カメラのフラッシュが焚かれて、その前に写真で見た生意気な金髪の小娘が映し出された。
フラッシュの数から考えて多くの報道陣が詰めかけているのが見て取れた。
「セラフィ殿下、フッセン放送ですが殿下が衛星軌道からサーリア山を攻撃させて火山が噴火したというのは本当ですか?」
儂の女が叫ぶのが聞こえた。
よく言った!
儂は心の底から喝采を送った。
「それは違います。この地の領主のオスモが反逆したので衛星軌道上からオスモの邸宅を攻撃させただけです」
な、何だと! 衛星軌道上から邸宅を狙い撃ちにしただと、そんなことが出来るのか?
王女の横に衛星軌道から攻撃する艦に王女の旗艦ジュピターとテロップが出て、邸宅を艦砲射撃する様子が映っていた。
「反逆とは穏やかではありませんね。先日セラフィ殿下が宇宙海賊討伐の余波で隕石雨をサーリア全土に降らせたのが原因ですか?」
その横の穏やかな男性が写っていた。
この男は帝国の3大ネットワークの一つ帝都放送のリポーターの一人のはずだ。
何故そんな男がここにいるのだ?
まあ、しかし、こいつも良いことを聞いてくれた。儂は喜んだ。
「領主が反逆したのは隕石雨ではなくて海賊の方ですね」
「海賊ですか?」
「お恥ずかしい話ですがオスモが海賊と繋がっていたのです。海賊を捕まえた私から繋がりを追求されるのを恐れたのでしょう」
「なんと辺境の海賊赤ひげがこのサーリアの領主の配下だったというのですか?」
リポーターが余計な事を聞いてくれたが、
「大ボスは別にいたみたいですが」
「それはどちらですか」
辺境王女の言葉に男が食い下がった。
なんだと、この女、私が黒幕だとでも気付いたというのか?
儂は少し不安になった。
「それよりも、私はオスモと海賊が銀河法に違反して我が国の民を奴隷として扱っていた事実を掴んだのです」
儂は目が点になった。
画面が変わって儂も見たことのあるオスモに作らせた奴隷収容所が映し出された。借金で首が回らなくなった者達を奴隷として調教する施設だったはずだ。奴隷達は顔は隠れていたが、鎖に繋がれた女達を助ける王女達が写っていた。
現地の奴らは何をしていたのだ?
儂は現地の奴らが自分たちだけが生き残るために奴隷を残して逃げ出したと後で聞いた。そいつらは処分するように暗部に伝えたが。逃げるなら奴隷共を何故先に処分しない。貴様等が余計な者を残したから事が露見したではないか!
「火山爆発で取り残されていた者を救助していたときに見つけ出したのです。奴隷を扱っていたオスマに対してサーリアの神もお怒りになったのでしょう」
「サーリアの領主は海賊と組んで奴隷取引をもしていたのですか?」
リポーターは鷹揚に驚いていた。
「本当にとんでもないことをしてくれたものです」
王女は笑ってくれた。
儂は王女がそれ以上余計な事を言わなくてほっとした。
「これは一大スキャンダルですね」
喜々としてリポーターが言い出した。
「貴国の皇帝陛下ならこういう場合はいかがなさいますか?」
「陛下は曲がった事や不正を憎まれます。私などの申せることではございませんが、神の怒りを鎮めるために領主を生きたまま火山の火口に放り込まれないお方です」
「やはりそうですよね」
王女がそう笑った途端に画面が切り替わったのだ。
そこには機動歩兵に縛られて吊り下げられているオスモが映っていた。
その先にはサーリア山の火口が見えた。
「助けてくれ! 俺は命令されただけなんだ。フッセン男爵に王女を攫って連れてこいと言われて従おうとしただけだ。頼む、助けてくれ」
此奴余計な事を言いおって!
さすがの儂も頭の中が真っ白になった。
そこで画面がブラックアウトした。
「ギャーーーー」
オスモの悲鳴だけを残して。
「私は我が国民に迷惑をかけてくれた宇宙海賊も我が民を奴隷にするなどと言う神をも恐れぬ行為をした者共も許すつもりはありません。例え帝国にいようが連邦にいようが地の果てまで追い詰めますからそのつもりで」
そう叫ぶ用に宣告すると小娘は立ち上ってくれた。
「ちょっと、殿下!」
「帝国の男爵がこの奴隷販売に関わっていたという事ですか?」
「殿下!」
画面がいきなりブラックアウトした。
『電波状況の悪化のためにしばらく映像は映りません』
のテロップが出て来た。
遅いわ!
儂の手は怒りに震えていた。
儂は手に持っていたワイングラスを地面に叩きつけていた。
ガシャン!
地面にワインとグラス片が飛び散った。
「おのれ、おのれ小娘。こうなったら絶対に身ぐるみ剥いで生きたまま一枚一枚その生皮を剥いでやるわ」
儂は絶対に小娘を許さないと心に決めた。
「フーバー、直ちにこの子娘を生きたままこの地に連れてくるのじゃ。腕の一本や二本なくしていても良いが、必ず生きてじゃぞ」
私はフーバーに命じていたのだ。
帝国の魔の手がセラフィに襲いかかります。
何百何千と抱えている男爵の暗部に対してセラフィは無事にいられるのか?
続きをお楽しみに!








