我が国の民を奴隷として搾取していた帝国男爵を許さないと心に決めました
「セラフィーナ! これは、どう言うことなのだ?」
お父様の顔のアップがいきなり艦橋に現れて怒鳴り声が響き渡った。
私はやっと一騒動終わって艦橋で一休みしようと帰ってきたところだった。
「どういう事と言われますと?」
思わず喧嘩口調で言い返していた。
「どうもこうも無いわ! サーリアでいきなり戒厳令なんて敷きおって! いろんな所からクレームの嵐だぞ」
「仕方がないでしょう! いきなりガマガエルが、私に反逆したんですから! それ言うなら領主の動向くらい掴んでおいてくださいよ」
「お前がまた、ろくでもないことをしたのではないのか?」
「何を言ってるんですか! 私はいきなり呼び出されて、銃を突き付けられたんですよ。どう見ても被害者ですよね」
「陛下、その点については、まごうことなき事実です」
私がヨーナスを見ると、ヨーナスも頷いてくれた。
「そうか、しかし、戒厳令は外聞も悪いと外務卿が文句を言って来くてだな」
「さようでございます。この辺りを管轄する帝国のフッセン男爵様から船舶の航行が邪魔されたとクレームが入っておりますぞ」
横から外務卿が顔を出してきた。
「これはオイカリネン、久しいな」
私は笑顔をオイカリネンにむけてやった。
「久しいとは異な事を。昨日宇宙港でお見かけいたしましたが」
オイカリネンが眉を上げたが、
「そうだったかな。それよりも貴様はフッセン男爵と懇意にしているのか?」
「懇意にとはどういう意味でおっしゃられているか判りませんが、フッセン男爵はこの辺りの周辺国を見ておられる帝国の領主様です。当然色々とお話しはしております」
少し警戒気味に外務卿は応えてくれた。
「ならば、サーリア山が爆発してし大変なときに逃げだしたいとはあまりに薄情なのではないか? 普通は帝国のお貴族様ならば避難のお手伝いをいたしましょうくらい申し出てくれるのが当然ではないか」
私がそう言うと、
「殿下、火山が噴火した時の援助をこの国のことをあまり知らない他国の人間に求めるのも酷ではありませんか」
「何も知られぬと。フッセン男爵がですか?」
私は笑いたくなった。
「今回、避難民を救助するために、私はオスモの秘密の館を訪れましたが、なんとそこには奴隷に落とされた20名者もの見目若い女性がいたのです。父上、オスモは銀河法で禁じられている奴隷を扱っていたのですよ。どうされるつもりなのですか?」
「な、なんじゃと、それは確かか」
父が目を剥いた。
「捕まえたオスモを訊問いたしましたが、しらを切りましたので、薬を使いました」
平然とヨーナスが報告してくれた。
「薬の使用は銀河法で禁じられているのでは」
オイカリネンが慌てて言いだしたが、
「奴隷の訊問には問題ないでしょう」
私は首を振った。全銀河の敵には容赦する必要は無いのだ。
「しかし……」
「訊問した結果、そのフッセン男爵に奴隷を提供する予定だったとオスモは白状いたしましたので、直ちにフッセン男爵の船を強襲し、その関係者を拘束いたしました」
「な、なんですと、外交問題に発展いたしますぞ」
オイカリネンが目を剥いてくれた。
「オイカリネン。あなた、えらくフッセン男爵の肩を持つのね。ひょっとしてオスモとフッセン男爵が銀河法で禁じられていた奴隷の取引をしていたのを知っていたのでは無いでしょうね」
私がオイカリネンを疑いにこもった目で見ると
「そ、そのようなことはございません」
「本当に?」
「当たり前でございます」
「そう、なら良いけれど」
「ただ私といたしましてはこれで帝国との関係が悪くなりますと、我が国の立場が悪くなると懸念しているだけでございまして」
オイカリネンは汗をだらだら流しながら説明してくれた。
「我が国の立場が悪くなろうがなかろうが、我が国の住民が奴隷として売られようとしていたのは事実です。私はこれを許しはいたしません」
私は宣言した。そう、私はこの国の王女なのだ。
「しかし、殿下、帝国は艦船だけで千隻以上を有しております。有事になれば我が国などひとたまりもございませんぞ」
「何を言っているのです、オイカリネン。我が王国の始祖ユバス一世は、おっしゃっています。『例え帝国であろうと間違っている事をしたら間違っているとはっきり正せ』と。陛下はサーリアの戦いで帝国軍100隻に対して奇襲攻撃でこれを撃破していらっしゃいます」
「しかし、当時の帝国と今の帝国は規模が違います。領土で10倍の広さになっているのですぞ」
「オイカリネン、私は何も帝国と戦争をしようとしているのではないのです。悪いことをしたら罰を受けるというのは子供でも知っていることではありませんか? 直ちに帝国皇帝に対して抗議文を送るべきでしょう」
「しかし、殿下、フッセン男爵は長年、我が国と帝国の間に入ってご尽力賜っているのです」
「その見返りが奴隷取引ですか。悍ましい。何でしたら私が一太刀浴びせるためにフッセン領を攻撃いたしましょうか」
私は自ら攻撃に向かいたかった。
「まて、セラフィーナ、貴様が出ると絶対に帝国との全面戦争になる」
お父様が慌てて言いだしてくれた。
「さようでございます。それだけは絶対に避けてください」
「では、帝国に対して抗議文を送ってくれるのですね」
「判りました。考えておきましょう」
オイカリネンの言葉とともに慌てて通信が一方的に切れた。
「外務卿が帝国に抗議文を送りますかね?」
アードルフが疑い深そうに聞いてきた。
「無理だろうな」
私は首を振った。
「だから姫様が記者会見されたのだ」
横からヨーナスが解説してくれたけれど。
「でも、勝手にして良かったんでしょうか?」
ミカエル艦長が心配そうに聞いてきた。
「父上はうやむやにするからな。でも、私は今回のことは絶対に許せない!」
虐げられた少女から聞いた内容は到底言葉に出来ないほどの悍ましいものだった。
私は10歳の時に王女として国民の前にデビューしたときに国民に誓った。
『この国の民を必ず守ると』
我が国の国民を性行奴隷に落としして搾取していたなど許せることではなかった。
絶対に許せない!
私はフッセン男爵を許す気はさらさら無かったのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
帝国エロ男爵対曲がった事の大嫌いなセラフィーナの対決開始です。
しかし、敵の戦力は王女に比べて圧倒的です。
どうなるセラフィーナ。
続きをお楽しみに








