襲撃中だった海賊船の船首を怒りにまかせて吹っ飛ばしました
幾多のお話しからこのお話を選んで頂いてありがとうございます。
本格的に活動を始めてから初のSFです。
楽しんで頂けたら嬉しいです!
私は真っ暗闇の中に浮かんでいた。
周り全てが暗黒に包まれた中で。
ふうっー、ふうっー
そして、私の呼吸の音だけが暗闇に響いていた。
後は何も聞こえない。
真っ暗な中に私の呼吸の音だけが響いている。
でも、ここは完全な闇の中では無い。
目を凝らすとそこかしこにキラキラ輝く小さな点が一杯あって……そう、周りには星々が輝いていた。
私の足下にも……
私の周りには広大な宇宙空間が広がっていた。
私は子供の頃からこうして宇宙空間に浮いているのが好きだった。
一人でいると大宇宙に吸い込まれそうになる。
本当に宇宙は広かった。
そして、自分の存在がとてもちっぽけなものに思えた。
こうしていると一人で宇宙にいれた。
そう、何もかも現世の煩わしさを忘れられて一人になれた。
「許せない!」
本当にあの父はむかつく!
私は3日前に父に言われた嫌なことを思い出していた。
「お前にお見合いが来たぞ」
父が喜々として話し出してくれた。
「父上、私はまだ18です。お見合いなど必要ないでしょう」
むすっとして私が言い返すと、
「そう言わずに見てみろ。とても美形だぞ」
まあ、見目麗しい男を見るのも良いかもしれない。
そう思った私が間違いだった。
私はそのホログラムを見て目が点になった。
「父上! これはどう見ても女ですが!」
私はそのホログラムを地面に叩きつけていた。
「当たり前だろう。お前と違って女装ではないしぞ」
「はああああ! 私は女装では無くて正真正銘の女です!」
次の瞬間には私の手が父の頬に飛び出していた。
張り倒された父が吹っ飛ぶ。
周りの重臣達が思わずビクッと震えていた。
「このように乱暴だから男と間違われるのだ」
「何ですって!」
そう宣った父は、更に切れて剣を手にした私を見た瞬間、這々の体で逃げ出してくれた……
あのまま斬り下げていれば良かった。
むかついた私はそのまま王宮を飛び出したのだ。
時に西暦2525年。人類は幾多の大戦を経て宇宙に進出していた。
私が飛び出した宮殿のある惑星は母なる地球のある太陽系から遙か離れた第25恒星系のヤムサの第三惑星ユバス。私は実際に行ったことはないが、母なる地球と気候は似ているという。元も昔の地球だそうだ。地球自体は第二次宇宙大戦で戦場になって核の絨毯爆撃を受けてもう人が住めるような環境では無くなったそうだ。本当に人類は愚かだ。
私はこのユバス王家の第二王女で、物心ついたときから機動歩兵を駆って宇宙を飛び回る騎士達に憧れていた。
男勝りのお転婆姫と周りからは揶揄われていた。
鎧を被った様は初代国王陛下に似ているそうで、何度男に間違われたことか!
まあ、金髪碧眼の典型的なお姫様だったのだが、長い髪は邪魔になると短髪にしていたから、本当に良く男に間違われた。
名前はセラフィーナ・ユバスなのだが、略称でセラフィ殿下と新聞に書かれて、時々、男と間違える不届きものがいるのだ。私に婚約を申し入れてきた姫は遠国の姫で私の活躍に憧れて申し入れてきたのだとか!
もっとちゃんと調べてから申し入れろよ!
私は完全に切れていた。
でも、それを聞いた私の周りの者達は大喜びしてくれた。
本当にむかつく!
ヨーナスなんて腹が痛くて死にそうだと笑い死にしそうだったので、思いっきりその顔に肘鉄を食らわせてやった。
二三日顔を腫らせていたけれど、本当にいい気味だった。
そのむしゃくしゃした気分を晴らすために本星のユバスから十光年のこの地サーリアに海賊退治にやってきたのだ。
私の右手遠くには第25太陽系の恒星カンノンが輝いていた。
そして、すぐ傍には砂漠の惑星サーリアが赤く光っていた。
惑星サーリアは他国と我が国を行き来する船舶の中継惑星で、我がユバス王家が管理していた。
私はそのすぐ傍のアステロイドベルトの岩石の上に愛機ビーナスを止めていた。
ここならば海賊船は気付くまい。
この場所は海賊が最近よく出没する宙域で、商船や豪華客船が二度襲撃されていた。
現地軍では対処出来ないとのことで本星から私が出張ってきた。
むかつく王宮から飛び出す理由にしたのもあるが、この怒りを私は晴らしたかった。
「姫様。くれぐれも抑えめにお願いします。姫様が本気で暴れられたら惑星サーリアが壊滅しかねませんから」
私の側近のアンネが本気で心配して注意してきたのにもむっとしたが、
「ガニメデ、ボランチの宇宙ステーション、衛星カロン……今までの姫様が破壊された現場の数々です」
アンネにそう言われれば何も言い返せなかった。
全部わざとじゃないのに!
そもそもこのビーナスの能力が高すぎるからいけないのだ。
私が一人で納得していたら、
「姫様酷いですぞ。儂は持てる能力の全てを姫様の愛機ビーナスに注ぎ込んでいるのです。周りに比べて桁外れな戦力なのは当然なのです。それを暴発させた姫様が悪いというのに、ビーナスのせいにするとは」
開発者のボニファーツまでが文句を言ってきて煩いことこの上なかった。
「ボニファーツさんがビーナスに機能つけすぎるからですよ。それを俗に猫に小判とか言うんですよ」
「違うぞ、馬耳東風だ」
「豚に真珠だろう」
同じ機動歩兵乗りのヘイモ、ヨアキム、アーロンが間違いだらけのことわざを言ってくれた。
「あ、アーロン、姫様を豚に例えるなんて」
「いや、違います。姫様。嘘です」
「それを言うならきちがいに刃物だろうが」
私はそう言うと逃げだそうとしていたアーロンを張り倒していた。
本当にどいつもこいつも一言多い!
それを思い出して私は爪が食い込むほどきつくこぶしを握った。
周りは静かな宇宙空間なのに、私の頭の中は怒りがぐるぐる沸いていた。
そんな時だ。
ピロピロピン!
その私の感情を逆撫でするような馬鹿にしたような音楽が鳴った。
「姫様、姫様の近くにワープする物体があります」
母艦のジュピターからアンネが連絡してくれた。
この呼び出し音をなんとかしてほしいんだけど。やる気がなくなること甚だしい。
ボニフアーツ曰く姫様の気分を表したとのことだったが、確かにアンネから小言の連絡がくることが多いから、私の気分は下降することが多いが、戦闘前にやる気をそがれるのは頂けなかった。
私がため息をついたときだ。
近くに大重量の船がワープアウトしてくる空間震が感じられた。
空間自体が揺れる。
そして、一隻の客船が現れた。
しかし、空間震が終わらない。
「ん?」
私は眉を上げた。
「姫様、続いて、ワープアウトする船あります」
「正気なの? ぶつかるわよ」
私がそう叫んだ時だ。
ダアーーーーン!
真っ黒な宇宙船がワープアウトしてきた。
宇宙海賊船だ!
黒に真横にドクロマークがデカデカと書かれていた。そして、その船はそのまま、その客船の横っ腹にぶつかってくれたのだ。
大きな穴を開けて海賊船は停まる。
海賊船からはアンカーが飛び出して自らの船を客船に固定した。
ここから海賊船の船首から海賊共が客船になだれ込んで占拠するつもりなんだろう。
「全軍攻撃開始」
私はマイクに向けて叫んだ。
そして機動歩兵ビーナスのバーニアを全開にするや、一気に海賊船に接近した。
そして、海賊船と客船を繋いだ海賊船の船首を大出力ブラスターで狙い様に一射したのだ。
ピカッ
ズバッ
一瞬だった。
ドカーーーーーン!
爆発が起こり、海賊船の船首が爆発したのだ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
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