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番外編 リアの支度

更新が本当に遅くなりました。申し訳ありません。

「リア、準備できたの?」



 建国祭当日。

 活気盛んな街中の大きな商店の一室で、リアは鏡に映る自分と睨み合っていた。

 ひょこっと扉から顔を出したリアの従兄弟であるララは、難しい顔で髪を整えているリアに尋ねる。


 すると、鏡越しにララの方を見たリアは険しい表情から一転、どこか困ったような表情で振り返った。



「ララ……変なところ、ない?」

「可愛いよ」



 リアがうるうると目を潤ませながら聞いてくるものだから、6歳年下の従兄弟に久しぶりに可愛らしさを感じたララはそう言う。

 しかし、次の瞬間リアはすんっと可愛らしい表情を消し去って口を開いた。



「私が可愛いのは知ってる。変なところがないか聞いてるの」



 前言撤回。全くもってこの従兄弟は可愛くない。

 ララはにっこりと深く微笑みながらリアの耳をぐいーっと引っ張る。



「調子に乗るなよ、おバカさん」

「バカじゃないし! 放して、痛い!」



 今度こそ本当の涙目で訴えるリアにため息をつきながらララはその手を放す。

 ララの目の前で「絶対耳赤くなってる、最悪」と悪態つきながら鏡に振り返るリアは、彼女のお気に入りのワンピースと綺麗に編んだ三つ編みを揺らしている。

 これはまた気合が入ってるな、と思いながらララは口を開いた。



「変なところはないよ、安心しな。きっと相手も可愛いって思ってくれるだろ」

「……そんな意図はないんだけど」

「えー? てっきりデートかと」

「違うわよ。相手はただの生徒会の先輩」



 前髪を調整しながらそう言うリアにララは首を傾げる。

 だってどこからどう見てもリアの装いには気合が入っている。去年の建国祭では幼馴染に一緒に回ろうと誘われ、その提案に乗っていたリアだが、当日は待ち合わせの30分前に起きてきて最低限の身だしなみだけ整えて外出していた。ひっそりとリアに想いを寄せていた幼馴染は可哀想なことに、リアにその気は全く無かったわけだ。

 その一方、今年は昨日から念入りにスキンケアやら今日着る服のチェックやらしていて、待ち合わせは夕方過ぎだというのに昼頃から支度を始めていた。そのうえ、着ているのはお気に入りのワンピース。



「……無自覚か?」

「なにか言った? ララ」

「いや、なにも」



 ララの小さな呟きはリアに届ききっていなかったようで、薄いピンク色のリップを唇にのせているリアがちらりとララを見ながら聞き、ララは肩をすくめながらそう返した。

 ララが部屋の壁にかけられている時計に目を移すと、時間はもう18時過ぎ。確かリアの待ち合わせは18時半だったはずだ。



「そろそろ広場に向かったほうが良いんじゃないの? もう16分だよ」

「嘘っ!? ほんとだ、もうこんな時間!」



 ララの言葉に素っ頓狂な声を出したリアはあたふたと持っていたリップを小さな鞄に押し込んで、ララの目の前でくるりと一回転してみせる。



「本当に変なところ、ない?」

「ないってば。可愛い可愛い」

「それは知ってる!」

「早くいけ、バカ」

「バカじゃない! いってきまーす」



 べーっとララに軽く舌を出したリアは足取り軽く部屋を出ていく。



(……鈍感なリアにも春の到来、かな? 応援してあげないとねー)



 一人残されたララは、可愛い妹分がつけていた香水の残り香にふっと軽く笑いながら心の中で小さく呟いた。小さい頃からどこか大人びていて、6歳も差があるのに自分と同い年のような言動をとるリアの年相応の姿にララは楽しげに口角を上げる。


 リアが今日建国祭を一緒に回るのは確か公爵家のお坊ちゃんだったか。

 身分の差は覆しようがないが、妹分が手助けを求めてきたときは手を尽くそうと思いながらララは部屋を出る。

 そして____



「お母さーん、おばさーん。リアに好きな人できたー!」

「「その話詳しく!!!!!!!!!」」



 階下から食い気味に響く声にけらけらと笑いながらララは階段を下りる。ララに彼氏ができたとき、速攻でリアに母親と叔母へバラされたときのお返しだ。

 帰宅したときに質問攻めにされるであろうリアは、広場に向かう道のりで大きなくしゃみをするのだった。

 

お読みいただき、ありがとうございました!

番外編を3話で終わらせるつもりが、3話だとまったく収まりそうにないのであと1話か2話更新しようと思います。

そちらはあまり間隔をあけずに更新したいと思っているので、お付き合いいただけると幸いです。

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