番外編 リュシールの恋愛相談
番外編として、リアとリュシールのお話をちょこちょこと書いていきたいなと思っています。
あまり話数は多くならないはずですが、おそらく投稿はスローペースになりそうです。
よろしくお願いします!
リアはモテる。本当にモテる。
なにせリアはとてつもなく難易度の高い『特待生制度』の試験に合格し、学園内で成績優秀者しか入れない生徒会で活躍している。
彼女は明るく元気な性格だが、その所作は洗練されていて平民ながらも貴族のマナーを把握していて、そのうえ容姿は端麗で、ベルローズやリオネといった次期侯爵夫人や次期伯爵夫人とも親交がある。そして彼女の実家は裕福な商家だ。
これだけの要素がそろうと、彼女が貴族でなくても彼女を婚約者にしたいと願う貴族令息はかなり出てくる。
そんな彼らのほとんどが高位貴族の次男や三男であったり下位貴族の嫡男であるが、皆リア本人の魅力に惹かれて、婚約を交わせば彼女が平民であっても貴族令嬢と遜色ない利益が生まれることから堂々と彼女にアプローチができるのだ。
リアは婚約や恋愛に興味がないと言って彼らのアプローチを躱しているが、彼女に接近する令息は途絶えることがなかった。
そしてリアと同じ生徒会役員で、モテまくっている彼女に思いを寄せるリュシールはというと__
「リアがまた建国祭のパートナーに誘われていた……」
恋敵たちからかなり出遅れていた。
「あいつが人気とは……世も末だ」
「ルシウス」
目の前でうなだれるリュシールを眺めながら言ったルシウスを、レインが諌める。
そんな唯一の親友兼未来の義兄の呼びかけに、ルシウスはわざとらしく肩をすくめてみせた。
リュシールとレイン、ルシウスはリアとリオネと学年が上がり生徒会役員となったベルローズが生徒会の仕事をしている間、こうしてガゼボに集まって彼女たちを待っている。
「リュシール先輩。そんなに気にするのなら、あなたが誘えばよかったんじゃないですか?」
レインの言葉にゆっくりと顔を上げたリュシールは暗い表情のまま口を開いた。
「全員断られてるんだよ……6人の令息がリアをパートナーに誘っているが、全員すげなく断れてる」
「ははっ、徹底的ですね」
ルシウスはケラケラと笑いながら言うが、リュシールの表情は晴れない。
まともにリュシールの恋愛相談に乗る気がないルシウスの頭を軽くはたいたレインは、再びリュシールに向き直った。
「だとしても彼らと違って先輩はリアと同じ生徒会役員じゃないですか。それも生徒会のなかでも二人は親しいですし……誘うだけ誘ってみては?」
「誘って断られたら距離ができそうじゃないか……?」
弱々しいリュシールの言葉にレインがなんて返そうか迷った一瞬の合間に、ルシウスが口を開く。
「まあ、できるでしょうね」
「ルシウス!」
あまりにもストレートすぎる発言に、レインが思わずルシウスの名を大きな声で呼ぶが、彼は口を止めることなく話し続けた。
「怒るなよ、レイン。どう考えたってそうでしょ?」
「そうじゃないかもしれないだろう」
「いや、でもあいつこの人のこと『優しい先輩』とか言ってたんだよ? 脈ナシでしょ」
「優しいことのなにが悪い!」
リュシールを庇うようにルシウスと言い合いするレインだが、わりと二人してリュシールを追い詰めていた。
その証拠にリュシールの顔色はより一層悪くなっていっている。
どうにか持ち直したリュシールは目の前で言い争う二人に向かって質問を投げかける。
「リアに他の男のパートナーになってほしくない、と言うのはお門違いだろうか……?」
考えすぎて少しだけ斜め上の方向に舵を切りだしたリュシールの質問に、きょとんとした表情で彼を見つめたレインとルシウスは揃って口を開いた。
「いやまあ、そんなことはないですよ」
「お門違いですね」
前者がレイン。後者がルシウスの言葉である。
隣に座るルシウスを信じられないものを見つめるような目で見てしまうレインに気がついていないのか、ルシウスはリュシールの方を見つめながら言葉を続けた。
「思いを寄せ合っているわけでもないのに、そんなこと突然言われても普通困るでしょう?」
(お前が言うか!!!!!!)
平然としたルシウスの言葉にレインは心の中で叫びながら、愕然とする。
彼の発言はベルローズの交友関係から徹底的に他の男を排除してきた人間のものとは思えない。
「やはりそうだよな……」
ルシウスの言葉を受け取ってリュシールはずーんと落ち込む。
「だから、外堀を埋めれば良いんです」
「外堀?」
にやりと笑いながら言うルシウスにリュシールは首を傾げた。
「外堀を埋めて、あなたしか頼りようがなくする__」
「もうそろそろ3人とも仕事が終わる頃じゃないですか!」
恋愛に初なリュシールに、教育上とてもよろしくないスキルを伝えようとしていたルシウスの言葉をレインは大きな声で遮ったのだった。
お読みいただき、ありがとうございました。
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