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Astral Fragments  作者: World Fragments³
昇華【路拡がりて、華昇る】
3/4

3.そして戦端は開かれる

―――――


「ん、、、」


朝日が目にかかり、気持ちよく目が覚めた。

昨日枕の下においたのであろう手紙を取り、中身を見る。

寝る前横に居た少年はどこかに行ってしまったようで、一人用のベッドの丁度四割程が人が居た痕跡とともに空いている。


視覚情報の次に舞い込んできたのは恐らくフレンチトーストが焼ける匂いで、その匂いに釣られるようにお腹が鳴った。


目を擦りながらベッドに腰掛け、その勢いの儘に立ち上がる。

昨日私が心を許した少年は()()()()()()()()()()と、心を躍らせながらリビングに向かった。


―――――


冷蔵庫に入っていた卵と食パンを利用して、フレンチトーストを作る。

わざわざ三時に起きてパンを卵液に四時間浸した甲斐もあり、パンは卵液でひたひたになっていて、、、お腹がすく匂いを漂わせながらじゅっ、と音を立てる。


「「、、、」」


いつの間にか起きてきていたルミナスさんとアロイスさんが無言でこちらを見ていた。

小隊室がリビングとキッチンの境となる壁が無いライブキッチン方式であることを利用して、フレンチトーストに焦げ目がつくところをじっと見ていた。


「あの、、、出来ましたんで、、、テーブルに座ってもらえると、、、」

「「、、、」」


またもや無言で移動し、テーブルに座る。

動かない口とは裏腹に、彼女らの目は飼い主に待てと言われた犬のように爛々と輝いていた。


「「「頂きます」」」


テーブルに料理を運ぶと、既に座っていた二人が手を合わせ、それに急かされるように俺も手を合わせ―――三人同時に頂きます、と声を発した。


その後はひたすら無言でフレンチトーストを貪る二人を見ながら俺もフレンチトーストを食べる。

長閑な空気感がそうさせたのか、それとも美味しそうに食べる二人を見たからか、とにかく美味しかった。


「「ごちそうさまでした」」

「お粗末様でした」



————Left pillar————



「リディア様―――貴方が用意した贄は確かに届きました」

【、、、報告、感謝する】

「故にリディア様、開戦の時が近づいております―――御準備はよろしいですか?」

【勿論。次の戦争は―――私一人で終結させる】

「、、、それは―――」

【異論は認めない。これは私とあの娘の為の戦い―――御母様にも御父様にも邪魔はさせない】

「、、、旗を掲げると?」

【そう。これからは全てが敵になる。貴女も退職したいなら今のうちにしておいた方がいい】

「ご冗談を―――貴女様に付いていきますよ、リディア様」

【なら家族を今のうちに呼んでおくといい―――殺されてしまう】

「有難う御座います___」



————liar and patient————



「さてアスト―――これから訓練を始める」


『訓練所』と書かれた部屋の中で、場所の名の通りに訓練が始まる。


「はい」

「君には専用装備が作られるそうだが、、、それが完成するまでは訓練用の旧式で我慢してくれ」

「了解しました」


【ANGEL CRY 45-NA】と刻まれたアサルトライフルは非常に簡素な造りで、ゴムグリップからは先の戦場で感じたものと同じ様な冷たさを感じた。


「その銃には弾を入れる場所がない。何を発射すると思う?」

「、、、わかりません」

「正解は魔力弾だ―――魔力について知っていることは?」

「ありません」


そう答えると、ルミナスさんは左手を肩ほどまで上げ―――そこに何かを創り始めた。


「魔力は体の中を流れている生命エネルギーと呼ばれる類のエネルギーの事だ」


最初は球体のようであったそれは段々と鋭く尖り、やがて銃弾の形となって彼女の手の中に収まった。


「これが魔力弾だ。と言っても私のこれは作るのが遅すぎて実戦では使えたものではないが」

「いえ、、、見せていただき有難う御座います」

「まぁ現代戦ではそもそも使わない技術だ。魔法銃に魔力さえ込められれば誰でも戦えるからな」

「なるほど、、、」


改めて手元の銃を見る。

先程の説明を聞いて、嫌でも考えてしまったからだ。

それは徴兵が容易になったということではないか、と。

否、徴兵を容易にするためにそうしたのではないか、と。

———その誰でもの中に惰眠を貪り平和を享受すべきものが含まれていないか、と。


「君の想像は正しいよ、アスト」

「、、、」

「君が思っているよりずっとこの軍は醜いんだ。昔は11あった小隊も今はここ一つだけ———この国を守っているのは強制徴兵によって集められた一部の人間と我々だけだ」

「それじゃ———」


それじゃ戦う能力も無いような民間人を、と言おうとしてやめた。

その言葉は聞き飽きた、という顔をしたルミナスさんの顔を見たからである。


「それじゃぁなんだって言うんだ!君が口にしようとしているのは理想論だ!何度も何度も言われてきたから嫌でも分かる!そんなものでこの国を救えるか?救えないだろう!」

「、、、すみませんでした」

「いや私こそ、、、すまな———」


互いの間に人がいることに気づいたのは、隊長が言葉を結ぶより数舜前のことだった。

その人は———いやその存在は、その何等かは、この場に、否、この世界に存在するには余りにも()()()()だった。


I finally (私はその光に)found(救いを) a ray of (見出した)hope.————』


目の前の何かがそう呟くと、空が真っ赤に染まった。

まるで初めからそうであったように、一瞬で太陽が遮られた。


『————I found (私はその心音に)solace (癒しを)in this (見出した)heartbeat.————』


緊張感で五月蠅いほどに響いていた自身の心音が消えた。

否、先程までわずかながら聞こえていた風の音も、聞こえなくなった。


————And (そして)I (私は)saw (彼女の中に)myself (私を)in her.(見出した)


そして■■■■■■■■■(俺は意識を失った。)



―――αστςμ―――



眼の前の存在、、、否、女を見る。

右手に王笏を持ち、天使が天使足り得る為のエンジェル・ヘイローを王冠のように輝かせ、三対の白い翼を威嚇するように大きく広げた少女は―――神のような、と形容する事すらおこがましいような力強さを秘めていた。


「こんにちは、ルミナス」

「、、、何故、私の名前を?」

「そんなことはどうでもいいはず。あなたが今聞きたいのはコレのことでしょう?」


そう言って左手を掲げ、手の中に収まったそれを見せてくる。

脈動し命の重さを感じさせるそれは―――心臓だった。


「誰の心臓だ―――いや、言わなくていい。分かっている、、、その上で聞きたい。少年はまだ生きている(・・・・・・・・・・)のか(・・)?」

「原理の説明が出来ない以上は信じてもらうしか無いけれど、、、生きている」

「わかった、、、それで要件は?」



「宣戦布告と提案をしに来た」

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