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作業開始

 言いつけられていた仕事を終えて主の元へ帰還すると、主は珍しく世界を眺めていた。

 普段は放置されている円形の器をじっと見つめている様子は真剣で、何かあったのかと小走りに傍へ寄る。


「我が主?どうかなさいましたか?」


 声を掛けると、主はちらとこちらを見た。

 そして、世界の方を示す。それと同時に、おかえり、とでもいうようにふわりと纏うように主の気配が傍に降りてくる。


「人間が、また滅んだようでね」

「……また、でごさいますか」

「うん。私としては、別に人間だけが構成要素ではないし、それでいいだろうと思ったのだけれど」

「そうおっしゃったのですか?」

「うん。駄目だと言われてしまった。だから、人が滅ぶ前に戻してやり直さないと」


 示されるまま世界を覗き込むと、確かにそこに人間の姿は無く、何度目かになる滅びを迎えたらしいことが見て取れた。


「どこまで戻そうか?」

「そう、でございますね、ひとまず、国が残っている必要はあるかと」


 答えながら、既に姿のない人間たちに憐れみの目を向ける。

 人が慈悲深き主神として崇める我が主は、実際のところ特別慈悲深いわけではない。それどころか、人間にさほど興味がない。


 今回の滅びも、人を滅ぼさないように世界を巻き戻してやり直すのは、人への慈悲からではなく他の神々から言われたから、仕事として行うことだ。

 人の主神であることに違いはないが、我が主の力は強く、人が無ければ存在出来ない訳ではない。


 なので人が生きようが滅ぼうが興味は無く、困るのは主ではなく他の力の弱い、人からの信仰で成り立っている神々である。

 人が言うように常に世界を見守ってはいないし、人が祈りを捧げなくなると加護が切れるのは、人の怠惰への怒りなどではなく、祈られないと人間の存在を忘れるからだ。


 加護が切れたことに気付かず過ごし、慌てた人間たちが祈り始めればそれに気付いて加護を授ける。

 人はそれを神の許しだと言って祈りを怠ったことを恥て改める、というが、主はそんなことに興味は一切ないのだ。


 我が主の興味は全く別のところにあり、人がたとえ自らの事を忘れ全く別の物を信仰したとて気付かずに放置するだろう。


 自分としても、主が要らないというのならば人間にさしたる思い入れも無いし、そのまま世界を進めても良いと思うのだが、主は今回も他の神々に願われた通り、人間の存続のために世界を巻き戻すことにしたらしい。


 主がそうするのだと言えば、自分が何か言うこともない。

 今回も、主が出来るだけ早く趣味の世界に戻れるように、人間が存続する世界線を探す手伝いを始めるのだった。

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