我天心酔の最終回!己が道、求め進むが万物流転! その⑧
ガラ空きとなった私のメインサークルに攻撃が迫るッ!
「闇」の決闘者であるリーシャ先輩――
彼女の刃たるスピリット、《水舞台の花影、ガーベラ》だ!
先攻:リーシャ・ダンポート
メインサークル:
《「主演の化身」Mock turtle》
BP1111(+6250UP!)
=7361
サイドサークル・デクシア:
《水舞台の花影、ガーベラ》
BP2750
サイドサークル・アリステロス:
《水舞台の大輪、デンドロビウム》
BP3500
領域効果:
[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]
後攻:ユーア・ランドスター
【シールド破壊状態】
メインサークル:
なし
サイドサークル・アリステロス:
《聖輝士団の一番槍》
BP1900
豪奢な宮殿の中を流れる水路。
亀の甲羅を足場にして決闘をする私たちのバトルは、いよいよ佳境となっていた――ここが正念場、光と闇の争いの最前線。
今、まさに私にトドメを刺そうとするリーシャ先輩の表情は歪んでいた。
それもそのはずです。
「闇」の決闘で私を倒すということは、私の意志を奪って操り人形にしてしまうということなのだから。
「(あー、なんだかムカムカしてきました……!)」
『光の巫女』がどうとか、世界の命運だとかはピンと来てないけど……!
リーシャ先輩の心の弱みに付け込んで、こんな戦いを強いる、「闇」の勢力……!
『堕ちたる創作論』だけは……絶対に許せません。
この私が光のパワーで先輩を正気に戻して見せますッ!
「インタラプト召喚――守って、《聖焔城壁》!」
手札からスピリット・カードをセットすると、爆炎が広がった。
攻撃を防がんと轟々と燃えたける炎の壁!
その有様に、水着姿のリーシャ先輩は狼狽した。
「インタラプト召喚だって!?」
「このスピリットは相手の攻撃宣言時、インタラプト扱いとして手札からメインサークルに召喚することができるんです。そして、そのBPは戦闘する相手スピリットと同じBPになる!」
ゆらりゆらりと燃える炎の壁は、次第に輪郭を変えていく。
その姿は煌びやかなドレスをまとった人魚姫――マーメイド・スピリットである攻撃者、《水舞台の花影、ガーベラ》と同じ姿になっていた!
後攻:ユーア・ランドスター
【シールド破壊状態】
メインサークル:
《聖焔城壁》
BP2750
リーシャ先輩は唸る。
「BP2750……ッ!? これでは我がガーベラはユーア君のヴァフルロギと相打ちになってしまうということかッ! 厄介なスピリットだよ、君は!」
「……バトルですッ!」
この炎は現実の炎ではない。
ルーン魔術が敵対者の抱く攻撃本能に呼応して生み出した幻影の炎。
故に、その炎をやっつけようとしても無意味だ。
何度、拳を振るっても――その攻撃は己に返ってくるだけ!
結果は両者相打ち。
互いのスピリットが破壊されるッ!
「《水舞台の花影、ガーベラ》、撃破ですッ!」
「だとしてもッ!
これで再びユーア君のメインサークルの守りは消えた!」
リーシャ先輩にはまだ、攻め手が残っている。
「闇」のスピリット――
ワンダーランドの住人たる創作化身!
宙に浮かぶ亀の甲羅に映るのは、己こそがセカイの主人公だと嘆き叫ぶ、リーシャ・ダンポートの分身――華やかな機能美を惜しげもなく晒す肉体の悪魔、黒衣のドレスをまとい咲き誇る毒花、我天心酔の幻想スピリットである。
先攻:リーシャ・ダンポート
メインサークル:
《「主演の化身」Mock turtle》
BP1111(+3500UP!)
=4611
鏡に映ったリーシャ先輩が手をかざすと、高圧力に圧縮された水の一撃がレーザービームのように射出された。
私の腕元に光る決闘礼装のライフコアに向かって突き刺さらんとする……!
「いいえっ、終わらせませんっ!」
「なにっ……そのカードは!?」
ライフコアを守るのは、爆炎。
突如、噴出した炎は形を変えて……リーシャ先輩の姿となる!
決闘礼装にセットされたのは必殺の防御カード。
「二枚目の《聖焔城壁》……だとぉ!?」
「いかにもですっ!」
《聖焔城壁》のBPは4611までUPする。
それだけじゃないッ!
「私の使う《聖焔城壁》は「光」のエレメントを持つスピリットです……「闇」のエレメントを持つスピリットを倒せるのは、「光」のエレメントを持つスピリットだけ!」
「これが『光の巫女』の運命力……一枚でも強力なカードを二枚も抱えてるなんてぇ。くそっ、こんなの積み込みじゃないかッ! ユーア君、謀ったなぁ……!」
リーシャ先輩を象った《聖焔城壁》は炎の光線を放った。
水と炎、二つのビームが激突する。
「(よしっ……!)」
相打ちとはいえ、これで「闇」のスピリットを破壊できるはず。
もしかしたら決闘に勝たなくても、先輩を正気に戻せるかも……
「……と、並みの決闘者なら倒されていたかもね?」
「えっ」
「『堕ちたる創作論』においても、我がランクはEX級の規格外……。水場がある場所でしか戦えない「縛り」のためにドロッセルマイヤー君にもずいぶんと苦労してもらった。その働きの分には報いるともさ。そうさ、私もニュータイプの筈だッ!」
「たぶんニュータイプではないと思います!」
「《「主演の化身」Mock turtle》の効果発動! このスピリットが破壊されるとき、代わりに水のエレメントを持つエンシェント・スピリットを手札から墓地に送ることで、自身を再び墓地から蘇生する!」
リーシャ先輩は手札からカードを捨てた。
モック・タートルは蘇り――
倒されたのは私のヴァフルロギだけ!
「闇」の力を持つ幻想スピリットは依然、健在!
「そんな効果があったなんて……!」
「脇役を切り捨てたとて、主役は舞台に立ち続けるのさ!
キャストは引き続き、再演決定!」
思えば、リーシャ先輩は『光の巫女』を倒すために選ばれた刺客。
この世界で唯一、「闇」のスピリットを倒せる私に対する切り札なのだ。
「『光の巫女』対策はガチってことですね……!」
モック・タートルを倒すことには失敗した。
リーシャ先輩がターンエンドを宣言すると、ここで新たな展開が発生する。
「《水舞台の大輪、デンドロビウム》の効果発動!
自分ターンのエンド・シークエンス時に、任意の数のサイドサークルを選択することができる。その後、選択したサイドサークルにあるカードを全て破壊して、手札または墓地から水のエレメントを持つエンシェント・スピリットを任意の数だけ配置する!」
リーシャ先輩が選択したのは、
空になっている先輩のサイドサークルと……
先攻:リーシャ・ダンポート
サイドサークル・デクシア:←【ここと】
なし
領域効果:
[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]
後攻:ユーア・ランドスター
サイドサークル・アリステロス:←【ここだよ】
《聖輝士団の一番槍》
BP1900
……私のサイドサークル・アリステロスだ!
「先輩の狙いは《聖輝士団の一番槍》……!」
「ユーア君は賢いね。
行くよ、オペレーション・メテオブレイク発動!」
華麗に舞う人魚姫、デンドロビウム。
咲き誇る大輪が隕石のように降り注ぎ、私のサイドサークルを破壊した!
聖輝士団の少女騎士は砕け散る。
落下してきた花の蕾が開き、中から現れたのは――
「やはり、また墓地ロックを仕掛けてくるんですね!」
散々、私が苦しめられてきたカード――
そう、《水舞台の花影、ガーベラ》だ。
一方、先輩のサイドサークルには強敵サイサリスが再臨する。
墓地から蘇りしは二輪の客演ッ!
先攻:リーシャ・ダンポート
メインサークル:
《「主演の化身」Mock turtle》
BP1111(+6450UP!)
=7561
サイドサークル・デクシア:
《水舞台の百花、サイサリス》
BP2950
サイドサークル・アリステロス:
《水舞台の大輪、デンドロビウム》
BP3500
領域効果:
[水平思考宮殿シャドウストーリーズ・ウォーターパレス]
後攻:ユーア・ランドスター
【シールド破壊状態】
メインサークル:
なし
サイドサークル・アリステロス:
《水舞台の花影、ガーベラ》
BP2750
なんとか生き延びたものの、窮地は変わらない。
ガーベラが私の場で舞うかぎり、スピリットは墓地に送れないのだから。
私の手札に眠る相棒――ランドグリーズの召喚も叶わない。
「(……でも、逆転の芽は残されています!)」
私は手にしたたる汗を握りこんだ。
デッキに眠る切り札。
フィールドに展開された領域効果。
何よりも――リーシャ先輩の心の奥に眠る本性。
彼女が自分自身の優しさから目を背けるかぎり……
「(広大な水平思考領域の水底に、勝利の鍵が眠ると信じますッ!)」