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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#84 少女は憧れを追いかけ

「ッ……!?ぐあっ………!!」


 ヒユウの体がその場から吹き飛ばされ、そのまま地を滑る。そして痛みと疲労で力が抜けたヒユウの体は、数秒間自分の意思で動かすことができないほどだった。


 レイアが二番煎じかのように生み出した火圧縮弾(フレアボール)は、壮大なカモフラージュだった。


 その中に点々と織り交ぜた集束炎弾(フレアクラスター)の起爆点となる火球にヒユウが気付かなかったのは、目の前の膨大な情報量と、そこに至るまでに蓄積され続けた疲労故なのだろう。そして更には、レイアが始めた詠唱。様々な警戒網を敷かなければならなかったヒユウは、そんな小さな搦め手に見事乗っかってしまった………そうなってしまうまでに、彼女はすでに追い詰められていたのだ。


「………星の数ほど存在せし世界の理……狭間を縫い……辿り着く先に何があるかを未だ我は知らず……………」


 そんなヒユウに構うことなく、レイアの詠唱は止まるところを知らない。


 着実に積み重ねられていく詠唱。魔力、そしてイメージが彼女の中で練り上げられている。現に彼女の周りでは、相当な魔力が集約しているようだ。


「う……ぐっ………」


 一刻も早く起き上がらなければ。


 そう言い聞かせるヒユウだったが、体が思うように動かない。


(ッ……!?っ足が……!)


 どうやら、先ほど爆風で吹き飛ばされた際に捻ってしまったようで、思うように立つことができなかった。何とか木刀を杖代わりに立ち上ろうと試みているこの瞬間にも、レイアの得体のしれない大技が迫っていることがなんとなくヒユウには分かった。


 いや、それ以前にも、宙に浮いている火球はまだまだ存在している。


「……っ……っっ!!」


 それでも、何とかヒユウは立ち上がった。そのあまりにも痛々しい姿に、見ている一般受験者は全員が絶句している。




 これは、命がかかっていないとはいえ、れっきとした戦い。部外者がとやかく言う権利は一切存在しない。それでも………


(見るに堪えん………)


 そんな、戦う者に対して最も失礼であることすら考えてしまう。それは必死に足掻いている者に対する冒涜であり、決して口に出してはいけないもの。


 だがそれでも、得物を持たないとはいえ、現役の第二階級冒険者、レイア・オルフロストの全力と戦うのは、今のヒユウにはあまりにも荷が重すぎたのかもしれない。そう思ってしまう。






「………けんっ……ろうの……型……!」


 先ほどの被弾を最後に、とうとう限界を迎えてしまった体を、ヒユウは無理矢理動かした。しかし、火球の中にまだあの集束炎弾(フレアクラスター)が混じっているかもしれない………そんなことを考える思考能力など、すでにヒユウは失っていた。ただ目の前のそれを今までにないほどの剣圧で全て吹き飛ばす。それだけを考え、ただ我武者羅に刀を振るった。




 そんな中、ヒユウが思い浮かべたのは―――ある一人の男の姿。


 実際に会ったことは無い。だが、そいつについてはよく知っている。なんせ、自分の母国も、その男に敗北を喫しているのだから。


 今の己よりも下の歳で戦場を駆け始め、ただひたすらに己の剣を貫き、結果人類間の争いを無くした伝説の英雄の姿。


 そんな男に憧れ、ヒユウはヴェラリオの騎士を志した。そちらから見ればただの外国人であるのに、本来敵であったはずだというのに。


 それでも、そんな憧れが己の夢として定着したころには、それをすんなり諦めることなど出来なかった。


 なるのだ。必ず。


 騎士になるために、この国の人々に受け入れてもらうために……そして、いつの日か憧れに追いつき、隣を歩き、そして超えていくために―――――




「絶対なるんだ………冒険者に!!」


 突如、ヒユウの目に光が戻る。限界のその先……力尽きるその直前に起こる疲労感や痛みの消滅。


 実際はただの気のせい。だがヒユウはそれでよかった。目の前の戦いに勝てるのならば………!


「………これでっ………全部……!!」


 そこからとうとう、宙に残っていた全ての火球を消し飛ばしたヒユウ。しかし、その間にもレイアの詠唱は一度たりとも止まることは無かった。それはもう………完了してしまう―――――


「……………ならば、完全に朽ち果てるその日まで、この命を灼熱に変え狂い咲こう―――日炎試練(ヘリオス)!!!!!」


 次の刹那、レイアの頭上に巨大な炎の魔力塊が現れる。そしてそれは―――


「……………模創太陽原初の火(プロメテウス)………!?」


 いや、厳密には違う。あれは恐らく魔術だ………!しかしそれでも、その灼熱の大玉は私が至った模創原初魔法(ジェネシス・レプリカ)のそれにひどく類似している。


 たしかに、ネストの言っていた通りだ。きっと、私のあれを見て習得したのだろう。


「あれから、一年経つかどうかくらいだというのに………いや、ネストはこの数日間で、と言っていたか……………」


 天才。そんな一言で片付けてしまえばそこまでだが……まさか魔法である模創太陽原初の火(プロメテウス)を、魔術によって再現してしまうとはな………


 ハッキリ言ってしまえば、火力、サイズ。そのどれをとっても現段階では私の方が上だが、もしかすれば近い将来……………いや、今はそんなことよりも……………




「……………ヒユウ……最後の正念場だ……これを乗り越えられれば―――お前の勝ちだ………!!」

レイアの日炎試練(ヘリオス)詠唱全編




世界を創りし神よ、我が名はレイア・オルフロスト。人の世を照らす灯火となることを望む者。


我は求む。この手に太陽を生み出すことを。


我は見た。この目で、人の手により生み出されし太陽を。


その光は人を照らし、その熱は全てを焼き尽くし、その姿は最強に君臨する。


星の数ほど存在せし世界の理。狭間を縫い、辿り着く先に何があるかを未だ我は知らず、されど進むことをここに誓おう。


練り上げる炎は万物を飲み込み、練り上げる思いは未来を紡ぐ。


炎は模倣。在りし日の少女の真似事。新芽は天へと伸び、伸び終わった芽は朽ちる。


ならば、完全に朽ち果てるその日まで、この命を灼熱に変え狂い咲こう―――日炎試練(ヘリオス)!!!!!




 はい。この技はレイアがシルカの模創太陽原初の火(プロメテウス)を参考にして生み出した疑似太陽を生み出す魔術です。


 レイアとかいう天才、魔術の才能が全くないシルカ………というか、グフストルがせめて魔法だけでもと必死こいて編み出した技をたった一年で再現してしまったやべぇ女なのです。

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