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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#80 受かる者、落ちる者

 そうして始まった実技試験だが、まず驚いたのが例のガーディアンの性能だ。


「やあああっ!」


 今戦っているのはラハト。ちゃんとした面識はないが、何かと質問している姿が頭から離れないせいかもう覚えてしまった。


 彼の得物は鉄槍。一定の間合いを取り、堅実に攻撃していく。槍使いの正統な戦い方だ。目立つようなものは無いが、しっかり修練を欠かさず行っているのが分かる。根も真面目そうだしな。


 ガキィィン……!


「くっ……!硬い………!」


 鉄槍とガーディアンの体が衝突した時、鈍い金属音が響く。


 あの人と大差ない大きさのガーディアン、黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)と言っただろうか?あれに使われている人口筋肉とやらの強度。それはとてつもないものだった。なんせ、鉄製の槍でどれだけ突こうと、傷一つ付いていないのだから。


 ネストは特殊な魔力合金………硬度の高い鋼に魔力を注ぎ練り上げたものがあの人口筋肉の素材だと言っていたが、あの一体だけで作るのにどれだけかかるのだろうか?


 更に驚くべきは、金属とは思えないほどの柔軟性。


 ガーディアンは生物ではない。故にその挙動は人や動物と比べると少しぎこちなさが目立つものなのだが、この黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)にはそれが一切存在しない。


 まるで、本物の人間のような動き。曲がり、伸び、縮む。実際の人の筋肉を完全再現しており、これを作った者の技術力の高さと人体への理解が常軌を逸しているのが嫌と言うほどに伝わってくる。


(挙句の果てに、このレベルで受験者用に調整されているのだろう?)


 ということは、第十階級……しかもその下位にあたる程度の性能にまで落とされていることになる。そうなればやはり最大出力がどの程度の物であるかを知りたくなってくるが、私はこの後に戦いを控えている。「全員まとめて」と言いたい所ではあるが、やはり剣無しではできる事が限られてくる。


(魔術………となると―――)


「そこまで!十分経過、ラハト・フォード、冒険者試験合格とします!」


「や、やった!合格だ……!!」


 その瞬間、私の思考が突然の大声に遮られる。どうやら、一人目の合格者が現れたようだ。


 リンにより試験合格を宣言されたラハトは、その場で歓喜する。当然だ。今この瞬間を持って、自分が冒険者の仲間入りを果たしたのだから、嬉しいはずだ。

 

 だが、この後必ず出てくるであろう不合格者を見るのは少し心が痛いな。この試験、全員で同じ場所、一人ずつ行うものだから、個人個人の試験結果が受験者全員に分かってしまう。ここで落ちてしまえば、しばらくはメンタルが崩壊しかねないだろう。


「では次、ネレイス・ハーン!前に出て構えてください!」


「は、はい!」




 そこから二人目、三人目と受験者が黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)にへと向かっていく。だが皆が優秀なのか、それともあの鉄人が甘すぎるのか……おそらく前者ではあろうが、次々と合格者が増えて行っている。


 ほとんどが十分間耐える方だが、中にはしっかりダメージを与えてガーディアンの動きを停止させて勝利している者も見受けられた。


 しかしそれでも、不合格者はちらほらいる。単純に力量が足りなかった者、立ち回りのミスにより向こうに王手をかけられてしまった者、中には「十分耐えればいいんだろ!?」と言いながらガーディアンからずっと逃げ回ろうとしていた者もいたが、そいつはちゃんと失格になっていた。


 第十階級クラス……簡単に言えば、いつも私が狩って食っている石ボアがそれに該当している。素人でも多少修練を重ねた者であれば仕留められるような存在だ。それに勝てないのであれば、流石に冒険者となった今後が心配になる。

 

 そもそも、生半可な実力で冒険者となって命を落とす者を無くすためにこの冒険者試験は作られたのだ。




 その後も試験は続き、かれこれ二時間ほど経過しただろうか?


 途中から五体に追加された黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)。それらによって複数の受験者の試験が同時進行したことによって、思っていたよりもかなり早く一般受験者の試験が全て終了した。


 私とヒユウを除いた七十一人の受験者。その中で見事合格して見せたのは、全部で六十三人。始めに百十六人いたことを考えると、半分近く受験者が減ったことになる。


 受験者にとっては中々厳しい試験であっただろうが、それでも乗り越えた者たちには拍手でも送らねばなるまい。願わくば、この先も冒険者として精進していってほしいものだ。


「さぁ、これを持って、()()受験者の試験全てが終了した。合格した者については、残りの二人の試験が終わり次第手続きを行い、ライセンスカードを今日中には進呈する。なお、ここから先の二人の試験を見ようと思う者は好きにするがいい」


 そのネストの言葉を聞いて、この場を離れる者は誰一人としていなかった。


「おい、私たちは見世物になるために必死になっているわけではないのだぞ?」


「戦う者は平等なレフェリーにはなれない。勝負には必ず見届け人が必要だ」


「まったくああ言えばこう言う………!」


 そろそろ私の堪忍袋の緒が切れてしまいそうだ。この怒りは早急に奴にぶつけなければ収まることはない。


「……視線が暑苦しいぞ小娘。まずはヒユウ・シュドラーテの方からだ。大人しく見ていろ」


「………ハッ!!」


 年甲斐もなくそっぽを向いてやった。そしてそのままヒユウの方を見やる。見たところ、いい集中力だ。そしてそれが途切れる気配もない。


 だが、相対するレイアもそれは変わらない。彼女も強者。そう簡単に負けてくれるような相手ではない。


「ヒユウ・シュドラーテ………参ります……!!」


「悪いが、こっちも先輩としての意地がある………あまり手加減はしないぞ………!」


 双方が構える。そして二人のタイミングで……………とうとう始まった―――――

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