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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#76 頭の戦いの行方

「……………はい!ではそれまで!」


 筆記試験開始から早くも制限時間である一時間が経過し、リンは私たちに試験終了を知らせた。


「ふへぇ~~っ………つ、疲れた……………」


 それにしても、改めて凄まじい数の問題だった。


 内容自体は、基本的に過去の問題集と類似しているものであった。少々難度の高い問題もあったが、それでも私にとっては容易いものだった。


 そして私とは反対に、ヒユウはもうすでに満身創痍と言った感じだ。様子を見た感じ全く解くことができずに絶望しているようではなかったため、少なからず自信はあるはずだ。しかしそれでも一時間頭をフル回転させるのは骨が折れたようで、今は机の上に顎を置いてぐでーっとしている。


「二人ともお疲れ様………それにしても、二人ともこれを最後まで解いちゃうなんて……!相当勉強を頑張った証拠ね」


「あぁ。努力を怠るのが嫌いな性質(タチ)でな」


「私はギリギリでしたあ~っ………」


「それでも解けてるのだから上出来よ。じゃあ、採点が完了次第他の受験者と一緒に発表するから、それまではロビーで待ってて」


「分かりました。お願いします」


 リンは私たちの問題用紙と解答用紙を回収し、部屋を後にした―――






「それで、筆記試験はどうだった?」


「うーん………自信が無いわけじゃないんだけど……やっぱり結果が出るまでは不安だな………」


 言われた通りギルドのロビーにへと戻ってきた私たちは、近くの椅子に座って試験の様子を話し合っていた。


 他の受験者も皆ここに集まっており、試験結果を今か今かと待ちわびている。


「そういえば、試験の合格点って何点なんだろう……?」


「八十点だ。そしてそれ以下は問答無用で不合格だ」


「えっ……!?あれだけの問題の八割合ってないといけないの………!?」


 というか、ヒユウはなんでそれを知らないんだ………?


 確かに口頭による説明は無かったが、それでも試験概要が載っている資料を事前に配られており、そこにも掲載されていたはずなんだが………さては読んでないな?


 まぁいい……どうせ筆記試験はすでに終わってしまった。後は祈るのみだ。






 そうして、更に小一時間ほど待っただろうか。リンが巻かれた大きな紙を抱えてロビーにやってきた。

 

 他の受験者たちも、一斉にざわつき始める。なんせ、今彼女が抱きかかえているのは、筆記試験の合否が一発で分かってしまう張り紙。


 もうあと数秒後には、次の実技試験へと駒を進めることができるのか、それともここで夢が遠のいてしまうのか………もう確定した未来を嫌でも見なければならないのだから。


「大変お待たせいたしました。それでは、先ほどの筆記試験の結果をお知らせいたします。今私が持っているこちらの紙には、受験者の中で筆記試験に合格した者の名前、それと得点が順位付けされ、記されております。そしてここに名前がある者は、ここから休憩を挟んだ一時間後に行われる実技試験の受験資格が与えられます………それでは……………こちらです!!」


 本来、依頼内容が記された紙が貼られているクエストボード。そこにリンは持っている紙を広げ、勢いよく貼り付けた。


 受験者たちは、必死で自分の名前を探そうと張り紙にへと近づく。クエストボードの前はもうすでに受験者たちが大騒ぎ。人ごみによる人口密度はかなりのものになっているだろう。


「………!!やった!合格だ……!!」


「畜生……!!もっと勉強しておけば………!!」


 喜びに歓喜する者、落胆し絶望する者。試験……そして合否が存在している以上、それらは結果がどうであろうと受験者に纏わりついてくる。


「……………あ………あった……!あったよシルカ!!」


 六十七位 ヒユウ・シュドラーテ 八十二点


 そう書かれているのが、私の目にも入った。


 合格点ギリギリと言ってしまえばそれだけだが、ヒユウの合格は私も物凄く嬉しかった。ほんの一週間ほど前まで図書室で唸りながら分からない問題を眺めていたヒユウが、あれだけの量相手に知識で戦い、見事勝利してみせたのだ。私としても教えた甲斐があったと、心の底から思える。


「さて、私は………っと、」


 一位 シルカ・リザリア 百点


 お、私も無事合格だ。まぁ、問題の元となったのは自分だ。ここで間違えてしまっては、過去の自分に敗北したと同義。私は負けるという言葉が大嫌いなのだ。


「シルカ………百点!?あれだけの問題があって……!?やっぱりシルカ凄い!!」


「ありがとうな。だが、これもまだまだ通過点……心配事が一つ減っただけだ。残る実技試験を突破しなければ、私たちの努力は全て水の泡だ………!」


 まだまだ喜ぶのは早い。そして油断などできない。ここまではまだセオリー通りだが、ここからは全くの未知だ。あの男(ネスト)が一体どのような無理難題を押し付けてくるか……………


「ここまで来たんだ。絶対に受かるぞ、ヒユウ」


「うんっ!!筆記が終わればこっちのものだよ!!」


 本人が一番心配していた筆記試験が終わり、勢いづき始めているヒユウ。それが空回りしない事だけを祈りながら、ひとまず一時間の間に英気を少しでも養っておこう。

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