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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#72 脳で行う食後の運動

「っと、これがあったから何とか助かったな………」


 そう言いながら私の視線の先にあったのは、つい先ほど食べたエナジーバーの入っていた紙袋。

 結局なんやかんやあって貰っていたにも関わらず今の今まで食べることができていなかったが、ようやくそれを腹に入れることができた。


 食べる前は兵糧のような酷い味を想像してしまったが、食べてみればどこか菓子のような雰囲気のある食べ物だった。そこまで甘いわけではなく、それでいて少しパサパサしている。水に関しては水道があるので問題はなかった。


「さて、一応食事も済んだことだ。軽く食後に勉強でもするか」


「そうだね。実技の前に落ちちゃったら本末転倒だし」


 そう。何度も繰り返すが、冒険者試験は筆記試験と実技試験に分かれている。そして、筆記試験で合格ラインに達していなければ、次の実技試験へと足を運ぶことすらできないのだ。


「リンさんには感謝しなくっちゃ!普通貸してもらえないよこんなの!」


「だろうな。試験の問題集はギルド以外では管理することは禁止されているからな」


 故に、冒険者試験の問題は、冒険者ギルドに出向かなければ本来は閲覧することは出来ず、基本的に貸し出しも禁止されている。例え街にどれだけ大きな図書館があろうとも、どれほど品揃えの良い書店に赴こうとも、筆記試験の問題だけは絶対に置いていない。まぁ、それに類している冒険者の心得について書かれた本はあるため、絶対にギルドに行かなければ勉強することができないというわけではないが。


「三、四……六冊あるね。年代とか、出題されてる問題なんかも全部違うね………」


「毎年同じ問題を出し続けてしまえば、いずれはそれを受ける全員が満点合格になってしまう。だから毎年違う問題を出さねばならんのだが………これは考える方も大変だな」


「あぁ……そういう考え方もあるね……!」


 第一回の試験問題はほとんど私一人で考えたのだが、これが中々の苦行だった………


 そもそも基本が無いためにどれ程の難易度の問題を出せばいいのかという基準が分からんし、更には私の我流剣術についてなど誰も知らん。


 よって一番得意であり、かつそれ以外に能がない私の剣術についてなど問題にできるはずもなく………


(一度ハンゼットに見せたら、「分かるかこんなもん!!」って叩き返されたからな………)


 そもそも鍛錬する事以外に取柄のない私にこんな仕事を私に委ねるなと言ってやりたい所だったが、冒険者を生み出したのは私だ。一定の義務と責任がある。やるべき事はやらねばなるまい。


「じゃあ、一問一問感謝しながら解かなくっちゃ!」


「いや、そこまでする必要はないと思うぞ………」






「シルカー、ここの魔術における構築式と魔法陣ってとこ教えてほしいんだけど………」


「あぁ。まず、どの属性の魔術を行使するかというアトリビュートスペル。それとどのような形、動き、どれ程の威力、効果を与えるのかというケイパビリティスペルを頭の中で文字として思い浮かべるんだ。それが構築式となる」


「ふむふむ」


「そしてそれらを実現するための脳内イメージと、その魔術を行使するために必要な分の魔力があり、それがかみ合えば魔術が発動される」


「ほうほう」


「そして、そのイメージを円の中に収めて刻んだ物が、俗に言う魔法陣だ。ちなみに、魔法陣には瞬間起爆型と自然継続型があってな?」


「うぅ~~ん……」


「前者は文字通りその場所その瞬間に発動させることのできるものだ。一瞬で頭の中に構築式を正確に思い描く必要があるためかなり習得が難しいが、扱うことができれば強力な武器となる。そして後者。こっちはさっきの地下修練施設の明かりなんかもそうだな。」


「な……なるほど………」


「あらかじめ物理的に魔法陣を刻んでおくことで、その魔法陣が破壊されるまで周辺の魔力を利用して継続的に魔術が発動し続けるというものだ。だがこっちはその性質上あまり強力な魔法は発動できない。空気中の魔力の濃い地域であれば分からんが………試験でそこまで出されることは無いだろう。頭の片隅にでも入れておけばいい。あ、あと刻んでいる魔法陣にどうやってイメージが反映されるかというとだな……………」


「あががががが……………」


 まずい、ヒユウの脳がパンクしそうだ。




 魔術が使えない私だが、その知識だけはしっかり覚えている。魔術は戦いにおいて起死回生の一手となることも少なくない。私もいつか使えるようになればと思って勉強したのだが、前世では結局最後まで魔術を習得することは出来なかった。


 人にはそれぞれの得手不得手がある。私の場合得手が剣であり、不得手が魔術であっただけだ。そう潔く諦めることも出来たのかもしれないが、戦術の幅が一気に広がるそれへの憧れは多少なりとも存在していたのだ。




「っていうか、ほんとに物知りだねー………私なんて少し覚えるだけで精一杯だよー………」


 ヒユウは問題集を眺めながら軽くため息をついた。


「初めに一気に全部。そこからゆっくりと同じ内容を繰り返せば、知識は自然と頭に沁みついてくる。これはまだウォーミングアップだぞ。じゃあ次、魔法陣に刻まれる構築式の読み取り方についてだな。ここは私もしっかりおさらいしておきたいし、少し入念にいくぞー」


「はあぁぁぁい……………」


 もうしっかり夜だというのに体を動かしたくてうずうずし始めてきているヒユウ。気持ちは嫌と言うほどに分かるが、今日はもう遅い。多少なりとも勉強に集中せねば……私一人で筆記に受かるのも嫌だからな。

この世界温泉あるんだから水道くらいあるだろうという作者の解釈です。

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