#65 シルカの真骨頂
限られた行動範囲、更には武器を持たぬ巨人のやることなど限られてくる。
再度こちらへと襲い掛かる猛攻。何度も同じ手に苦戦するほど、私は学ばぬ者ではない。
「せいぃぃぃやあっ!!」
私はその場で腰を落とし、二刀を構える。そしてこちらもただ放つ。その間に一切の隙を生み出さず、私に対し攻撃を打ち込める隙など与えない。
拳と剣が衝突する威力は徐々に高まり、次第にそれによって衝撃波が生まれる。自らが出したそれに吹き飛ばされそうになるも、腰を落としていることで私の体をこの場所に留めることに成功している。
だがしかし、このままでは駄目だろう。奴の攻撃に飲み込まれてしまうという意味ではない。この軽い体では、踏ん張っていてもある程度の限界が存在する。
それでも、まだ飛ばされるわけにはいかない。出来る限りこの競り合いの中で奴を知り、攻略の一手を探る………!
「ウゴォォアアア!!!」
最中、樹拳の指南者の速度が増す。体感三割増しに増えた攻撃は、その全てが容赦なく私にへと向けられており、それらを捌くのは中々骨が折れてき始めてきた。
……………面白い、実に面白い………!
訓練とは思えぬほどの、戦いの際に感じるこの高揚感。この何物にも代えがたい感覚は私を更に昂らせる。自然と口角は上がり、剣速、検圧も更に増してくる。
当然実戦、真剣勝負の場では、このように何の気兼ねもなく百パーセント楽しむことなど出来ない。これは修練施設であるこの巨人の間くらいでしか中々味わうことの出来ないものなのだ。そう言った点でも、冒険者になった後も定期的にここに通いたいと思ってしまうほどの魅力がある。
これが終われば、次にこれが出来るのはいつだろうか。
もしかすれば、明日もレイアが連れて来てくれるかもしれないが、そうとも限らない。次は冒険者試験の後かもしれないし、その更に先になるかもしれない。
(ならば、今楽しまないとな………!)
どんな瞬間のどのような出来事にも一切の悔いを残したくない。三度目の人生が約束されているわけなどないのだから、やりたいことはやりたい時にやってしまった方がいい。
「さぁ、そろそろこちらの番だ!!」
散々拳を受けてやったのだ。その分は楽しまないとこちらが損だろう?
「はぁぁぁぁぁ!!!!!」
今度は私から仕掛ける。一瞬にして奴の懐に入り込み、すかさず三連撃。そこから右の剣を振り下ろして急降下。樹拳の指南者の足元へと側方の内側から渾身の一撃を叩き込み、奴の体制を崩す。
攻撃の勢いで少し巨人と距離が生まれてしまったが、そこは急旋回にて修正。再び急接近し、そこから跳躍。樹拳の指南者の顎に打ち込んだ。
「グゥッ……グゥゥオオオオオ!!!!!」
これ以上私の好きにはさせまいと、左手で直前にいる私をまるで羽虫かなにかのように払おうとする。それほどまでに嫌か………ならば更に耳元で羽音を立ててやるわ!!
「っっっあああああ!!!!!」
飛んでくる左腕を空中で受け流し、そのまま流れるように殴打の構えに入っている右手に接近。両方の剣を一気に拳へと振り下ろし、無理矢理その手を開かせ、奴から殴るという選択肢を奪う。
だが、そんなものを奪ったところで、それが掌底に代わるだけの事。だが、想定内だ……!
「私の目的はこっちだ……!!その指もらったぁ!!」
私はそこから斜め十字に斬り上げる。例え木の剣だろうが、例え斬れるわけも無かろうが、結局最後は気合だ………!!
「あああああああ!!!!!」
「グォォアアアアア!!!!!」
その一撃により、樹拳の指南者の右手の内、人差し指と薬指が同時に私の視界から消えた。その二本の指は更に上の宙を舞い、やがて地面にへと辿り着く。
私も後に続いて地に着地。この間にもすでに左手が迫ってきており、私は攻撃範囲から抜け出すために巨人の体へと回転しながら勢いよく跳躍。加速と回転により威力を底上げした攻撃を更に胸元に叩き込んだ。
「っと……!」
するとどうだろうか、樹拳の指南者の奴、とうとう自身の顎すらも武器にしたのだ。
巨人は少し体を後ろに反らしたかと思えば、次に勢いよく頭部を地面の方に持っていく。その間には私がおり、瞬間巨人と目が合う。大きく口を開かせ、呻き声がダイレクトに私の脳をほんの少し揺らす。
「チイッ……!!なんのぉっ!!」
私はそこで剣を振りながらも縦回転。迫りくるそれを弾きながら自由落下。その間に更に横方向での回転斬りを放ち、巨人へのダメージを蓄積させる。
「まだ終わらんぞ……たぁぁぁあああああっ!!!!!」
「グァァァッ……!ウォォオオオ!!!」
そこから再びのラッシュのぶつけ合い。だが先ほどとは違い、奴の拳の片方は指が二本飛んでいる。当然その威力もガクンと落ちており、先ほどよりも捌くのは容易だ。
「さて……残りは早一分程か………最後までとことん付き合ってもらおうか!樹拳の指南者よ!!」
先ほどまで体制を崩されていた樹拳の指南者も、ようやっと立ち上がった。そしてこの十分間の戦いは、最終局面にへと移行する―――




