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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
夜明之戦王編 酸湖の魔窟

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603/685

#603 それを手に入れる方法は

「……とりあえず治してはみたが…………今後動くかは分からんな」


 ルミラ拘束後、ジヴァルは千切れかかっていた己の右腕を自分の魔術でなんとかくっつけた。が、それでも先の感覚は未だないまま。回復魔術も使用し、見てくれだけで言えば元通りとなったはずであるのに。


 城に戻って本格的な治療を受けるなりリハビリするなりせねば、おそらくは動かせない……つまり現時点、今起こっている全ての戦いに一区切りつけなければ、どうすることも出来ないことを意味している。


 無論ジヴァルはこれまで何度も戦場へと赴き、そこがどれだけ危険であるのかを十二分に理解している。これまで腕や足が使えなくなった者達を何人も見てきたし、自分だって何人もそのようにしてきた。いつかは己の番が来ると覚悟はしていた。だからこそ、彼の顔に動揺は無かった。


「ぐぅぅ……! うぐぅぅう……!!」


 そして肝心のルミラはというと、己の全身から強酸を滲み出し、鎧と蔓の鎖を溶かさんとしていた。無意味な行動のように思えるその足掻きは、少しずつではあるが徐々に自分の身を縛るそれらの表面を溶かしつつあり、そこから抜け出すのも時間の問題のように思えた。


 しかし、それもおそらくは十分以上かかるだろう。加えて、それだけの時間があれば再び三人で同じ魔術を発動し、再び拘束するどころか先ほどよりも更に強固な固定を施すことが出来るだろう。つまりこの状況は、ルミラにとってはかなり不味いもの…………




 と、いうわけではない。




「どうした? 先ほどまでの単純な高速移動と酸攻撃だけではないのだろう? なぜ動かない?」


「きぃっ……不快不快……! 困惑困惑困惑…………そっちだって」


 身動きの取れぬまま、ルミラの方も返すように問いかける。


「そっちだって、なんで私を殺さないの? 不明不明、おかしい。何故何故、隙だらけの魔物(わたし)を殺さないの?」


「ふん、勘違いしてもらっては困る。私はこれでも、何十年も国のために……国民のためにという大義名分を掲げ、大勢人を殺して来た……敵国の兵士だけではない。場合によっては、女性子供なども巻き込むほどの大規模攻撃魔術をも使うことを厭わなかった……私の手はすでに汚れ切ってしまっている。私自身、その気になれば今更殺すことに躊躇いなどない」


「だったら――――!」


「だがな」


 少々の沈黙。何かを訴えかけようとしている少女の声を遮り、その魔術師は続ける。側に立っている、ここまで共にやって来た二人に見つめられながら。


「…………この娘が、どうしてもお前を助けたいと目で訴えてくるもんでな。敵に情けをかけるなど甘い……戦場での心構えが全くなっておらん…………はぁ……まったく、それに乗る私の方も、また歳を取った……」


「いやぁ、すみませんね団長。腕の方は多分今作ってる薬打ち込んどけば大事にはならないと思いますのでぇぇ……っと、はい完成! どうぞ!」


 そう言いながらミュウファは何やら液体の入った注射器をジヴァルにへと放り投げる。そしてそれを受け取ったジヴァルは一切迷うことなくそれを己の右腕にへと打ち込んだ。直後からなにかが起こるようなことは流石に無かったものの、どこか記憶として鮮明に残っている痛みというものが和らいでいくような気がした。


「肉体の細胞を活性化させて、神経の回復を促す薬……だそうですよ」


「おっ、早速アレイザちゃんも勉強してるね。関心関心!」


 ただ薬の調合を眺めているだけではなく、アレイザはその間にも学びを得ていたようだ。その知識が今回の戦場にて役に立つことはあまりないだろうが、それでも生き残ることが出来れば、彼女は更なる高みへと登ることが出来るだろう。




「…………ねぇルミラちゃん、さっき聞いてて思ったんだけど……なんで人が困ったら褒めてもらえるの? 多分、その主様って人……人? じゃないか。ともかく、そんな強い力があるのに、ただ困らせるだけなんてもったいなくない?」


「……理解不能。私という存在は、それが役目。生まれたその時から……いや、そのためだけに生み出された。だから、人を困らせることでしか、私は褒めてもらえない……主様には、嫌われたくない」


「ふーん、そっかそっか…………じゃあその考えだと、主様に褒められるのなら、別にこんなことしなくていいってわけだ。湖を強酸に変えて皆を困らせなくても、なんの問題もないよね」

 

 ミュウファは何かを企んでいるかのようにニヤリと笑い、そして――――


「不明不明不明……何言って――――ッ!?」


「かっ、館長!?」


「っおい馬鹿……! 何を……!?」




 あろうことか、彼女は縛られている少女にへと――抱き着いた。その強酸に包まれたその体に、なんの躊躇いもなく。

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