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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
冒険者試験編

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#54 受けた愛情

 ―――とまぁそんなわけで、その後管理人に鍵を開けてもらい、奥にあったベッドにレイアを横たわらせ、私は床で眠ったという、昨夜の出来事なのだった……………


「シルカ……昨日酒を飲んでからの記憶が一切ないのだが………よく私の家にまで辿り着けたな……?」


「あぁ……相当苦労したぞ………」


 おかげで風呂に入ったというのに汗でベトベトになり、ほんの少しの酔いもきれいさっぱりなくなり、回復した疲労はすっかり元通りだし床で寝たせいで背中とかいろいろ痛いし……………


「なんというか……すまない………」


「……まぁ、分かればいい……今後は店じゃなくて家で飲んだ方がいいんじゃないか?あとお前は今後一人で酒場に行くのは禁止だ」


「そこまでなのか……!?」


「そこまでだ!!」


 そう言うとレイアも素直に返事を返してきた。これで今後私のような被害者を出さずに済むといいが。私だからまだよかったものの、テリーやダロンなどのまだまだ若い者らがあんなレイアの姿を見たら、一体どうなることやら。理性の箍が外れてしまう危険も十分にあるだろう。


(………おねぇちゃん……)


 レイアがずっと強調していたお姉ちゃんという単語。なんとなく察するに、弟か妹がいるのだろうか?家には誰もいなかったし、いたらわざわざ管理人に合鍵を頼む必要などもなかった。


 一人で冒険者として頑張っているのは凄いことだ。だがそれでも、たまには家族に会いたいだろうに。


 酒は人間を映し出す鏡だ。心の内の枷が自らの意思に背いて開かれ、ついぽろっと本音が漏れてしまうことも少なくない。彼女もまた、自らの求む兄弟に会いたいという本音を口にしたのだろう。それは、レイアが本当に家族を愛しているという証拠でもある。


 前世の両親は、おそらく私を「息子のグフストル」ではなく、「騎士のグフストル」として愛し、そして育てていただろう。騎士としての務めに私情を挟めないというのもあるが、今思えば、あれは自分たちが戦いで死んでも私が引きずらないようにしてくれていたのだと思う。実際、両親の訃報を聞いても私はそうかとしか思わず、ちゃんと弔うこともなく次の戦場にへと向かってしまった。


 そんなことを考えれば、今世の両親はどうだっただろうか。無論言うまでもなく私は二人の間に生まれて良かったと思っているし、今まででは考えられないほどの愛情を注いでもらった。その感謝も恩も、到底返しきれるとは思えないほどに頂いた。


 だが、そんな両親がもしも亡くなった場合、私はどのような心境に陥るのだろうか?


 前世と同じだろうか?はたまた泣き叫ぶだろうか?あるいは必死に無言を貫くか?


 分からない。そんな状況に陥ってしまった時、私はどんな顔をして明日を見ればいいのだろうか。多分そんなものに正解は無いのだろうけど、それでもふと嫌な想像をしてしまった。


(………今考える事でもないな……………)

 

 それを考えるのは、あまりにも早すぎる。私はそのあたりで考えるのを放棄し、現状の確認を優先した。


「で、今日はギルドで何かあるのか?」


「あぁ………ちょっとした依頼の打ち合わせだ」


 レイアが何かを誤魔化すかのようにそう答えた。


「………トコロナ共和国の、突然現れた九つのダンジョンについてか?」


「んなっ⁉なんでシルカがそれを……!?まさか、ギルド側がシルカの存在に………」


「……やっぱり忘れてる………酔ってるオルフロスト様が全部話してくれたよ」


「……………しばらく禁酒しよう………」


「うむ。ぜひそうしてくれ」


 本人曰く、酒の味は好きだがどうもアルコールへの耐性が全くないのだそう。たまに家で耐性を身に着けるべく酒を買い込んでは挑戦しているそうだが、目が覚め気が付いた時にはコップ一杯しか飲み終わってなかったとか………それならいっそのこと諦めてしまえばいいのに………


「そういえばシルカ……!近頃、アルコールが含まれていない酒の開発が始まるらしいぞ………!」


「………それは酒と言えるのか?」


 そんなわけの分からない談笑をしつつも、再びギルドへと足を運ぶのだった―――






 ―――レイアは奥の会議室で依頼内容の打ち合わせ。その間やることのない私は、ギルド内の図書室で勉強でもしておくか、という考えに至った。


 静かに棚から問題集を取り出し、パラパラとめくる。


(………やはり、特に問題もなさそうだ………)


 念のためほかの問題集も見てみるが、こちらもやっぱりなんの心配もいらないような問題ばかりだ。これらを一から覚えようとなればそれは難しいが、生憎私はこれらを最初から全て知っている………


「う~~ん………ここは………」


 おや?私の他にも勉強している奴がいるみたいだ。


 気になって見てみると、そこにいたのはオレンジ色の髪をした少女。銀色の瞳は見ているこちらを不思議な気分にさせるような謎めいた力を感じさせる。が、おそらく気のせいだろう。


 見たところ、歳は私と変わらないくらいだろうか。きっと、次の冒険者試験を彼女も受けるのだろう。


(………どれ、ちょっとばかし手助けでもしてみるかな)


 それは単なる私の気まぐれだった。




 そしてこの気まぐれが、後に世界を揺るがすような出会いになるなど、この時の私には分かるはずもなかった―――――

問題集を見ているシルカですが、決して調子に乗っているわけではないんです。

彼女からすれば、テストの問題は大学生に小1の足し算のテスト見せてるようなものなんです………もうちょい難易度高いか?中一くらいかな………

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