#41 繋がれ、託された
「ッ……!図体は大きいのに、よく動く……!」
「狙いが定まらない………!」
ダロンによる施しのおかげでなんとか再起したレイアたちだったが、それでも状況が急に一変するわけもなく、まずい状況であることには変わりなかった。
「ロヴィエ!エルト!なんとかしてそいつが飛んだ直後に叩き落とせ‼︎その隙に私とテリーで足を切断する‼︎」
「レイア……中々に無理難題……」
「でも……やるしかない………!」
「「………了解……!なんとかする………!」」
二人は同時に深く深呼吸、骨竜を見据え、再び風刃と雷刃をそれぞれ構えた。
「でも……多分これじゃ無理………」
ロヴィエが自身の得物を眺めながらそう呟く。質量を持たない魔力の刃。それであの巨体を叩き落とすというのは相当な難題だった。
「ロヴィ……私たちのこれは魔力………どんな形にだって、きっと変えられるはず………!」
「エル………」
無論、エルトもそのようなことをしたことはない。魔力を武器として扱うことをロヴィエと共に思いついた時も、いかに刃の形に近づけるかをただ模索した。それ以外の形にするなど、やったことなんてなかったのだ。
だが、自然とエルトはできるという確信を持っていた。
それもそうだろう。刃とは、研ぎ澄まさなければならない。それはごく当たり前のことであるが、それがいかに難しいかということは、日々武器を作り続ける鍛治師を見れば自ずとわかるだろう。
だがエルト、そしてロヴィエはそれをやってのけ、実戦で使えるまでに昇華させたのだ。
なにも、豪華絢爛な装飾を施した祭事用のレイピアを作れと言っているわけじゃない。ただ一回、奴を地面に這いつくばせる。それができれば良いのだから。
「……やるわよ……二人で、一緒に………!」
「………えぇ!」
二人はいつも魔力の刃を作る際のイメージ構築に取り掛かる。が、今回は普段とは違う。ただ骨竜を叩き落とせるだけのものを作らなければならない。
刃とは違い、設置面積は大きく……そして、威力が乗りやすいものがいい………
そんなイメージで二人が作り上げたものは………
「これなら………風鎚………!」
「いけるはず………雷鎚………!」
自分たちの体躯を大きく上回るほどの巨大なハンマー。叩き落すのにこれ以上に適した武器は無いだろうと言える代物だった。
凄まじいサイズではあるものの、あくまでもベースとなっているのは二人の作り出した魔力。風刃、そして雷刃同様、それら自体は質量を持たない。
だが、ダロンの強化によっていつも以上の魔力を行使することが出来たため、それを利用し仮想の硬度を生み出すことが出来たのだ。斬撃に特化させた刃状のそれとは大きく異なるが、それでも十分に強力な武器にへと変貌したのだ。
故に、変わらず走れる。変わらず跳べる。変わらず戦うことが出来る。
「残り四十秒……!!」
「テリー、私と息を合わせろ……!二人を信じて構えて待つぞ………!!」
「ッ!!頼むぜ………!って、スケルトンもどうにかしねぇと………!」
こちらが攻撃せずとも、骸骨共は問答無用でこちらに向かって襲い掛かってくる。もどかしさを感じながらも、レイアとテリーは剣を振るいながらその時を今か今かと待ち続ける……………
「カロカロカロロカロカカロロロロ!!!!!」
「うるさい……」
「そろそろ……」
「「静かにして………!」」
変わらず暴れ続ける骨竜。その凶暴性はみるみる増し、もはやダロンの強化がかかっていなかった先ほどまででは相手にならないかもしれないという領域にまで達してしまっていた。
だが、捉えられないわけではない。二人は同時に走り始め、奴が跳躍するタイミングを必死に見極めんとする。
最後に奴が跳躍したのは七秒前、その前はそこから五秒前、その前はそこから更に六秒前………平均して奴は五秒前後の感覚で跳んでいる。
(……魔物の攻撃パターンはそこまで劇的に変わったりしない………)
(シルカが戦った本物の竜とかならともかく……こいつらはそこまで賢いわけじゃない………だとすれば………)
「「このタイミング………!!」」
ゾーン状態に近い集中力、そして戦闘者としての感が、二人に最適解を導き出す。
まったく同じタイミングで、二人は大きく跳躍。それは先ほどまでの骨竜の跳躍よりも遥かに高く、骨竜がやってくると予測した場所にへと最速で辿り着いた。
そしてその直後、骨竜の方も跳躍。その目はエルトとロヴィエ二人を捉えており、自分の向かう先に標的が自らやってきたと思っているのだろうか、皮膚も筋肉もないのにも関わらず、どこか口角が吊り上がっているように見えた。
「……引っかかったのは、そっち………」
「大人しく……堕ちて………!」
「「風雷極堕槌………!!!」」
二人の魔塊のハンマーが、骨竜をそこから垂直に一気に叩き落す。凄まじい速さで撃墜された骨竜は、地面に手を付き、そこから起き上がろうとするが、それをさせてくれるほど相手は優しくなかった。
「これを待っていた……!」
「ナイス双子共……!!」
「「はあぁぁぁあああ!!!!!」」
レイアとテリーは、骨竜が叩き落されているその間にすでに足を動かしていた。辺りのスケルトンはすでに片づけられており、もはや二人を止める者は誰一人として存在して誰一人として存在していなかった。
二人の渾身の一振りは、竜にへと届き得た。
ボロボロの鋼に信念が宿り、思いの籠った一太刀は骨竜の両足を同時に切断。それと同時だった。ダロンの再起の狼煙の効力が切れたのは………!
「くあっ……!?」
四人は突如襲ってくる痛みや疲労感に耐えきれず、その場にてダロン同様倒れてしまった。
だが、どうしても一言言っておかなければならない。レイアは最後の力を振り絞り、シルカに向かい叫ぶ。
「シルカ……!あとは頼む………!!」
「あぁ………よくやってくれた……!!」
強化により魔力のチャージ完了も早まり、すでに詠唱も終わっていた。幸いにも、倒れているレイア達と骨竜の間には少しの距離があった。私のこれから放つもう一撃が、届かない場所まで。
いや、それすらも計算していたのだろう。レイア、テリー、ダロン、エルト、ロヴィエ。彼女らは、この戦いを経て、これからもっと強くなるだろう。
私はまだまだ未熟だ。一人ではこの骨竜を倒せていたかどうかすら危うい。いや、おそらく今の私では無理だっただろう。今私がこうして経っていられるのは、五人の命がけの抗いがあったからこそだ。
だから、それに応えるためにも、この一撃で全てを終わらせる―――
「―――模創太陽原初の火!!!!!」
そうして放たれた、二発目の模創太陽原初の火。動きを封じられた骨竜にそれを避ける術はなく、再びその身体は炎に包まれる。
そして、声にもならない断末魔をダンジョン全域に響かせながら、骨竜招闘飛竜骨は……………
灰となって朽ち果て、その存在をこの世界から完全に消滅させた―――――




