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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
合魔乱行編

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#251 町に漂う濃い魔力

「……こっちか?」


 しばらく猿と戦闘を続けていく中で、私は一つ気付いたことがある。というか、ここまで来てやっと気付いたというべきか。


 猿が湧いて出てくる数が、私たちが訪れてきた場所から見て町の奥……以前の姿を取り戻したニルムヘイズが先にある方角にへと進んでいくにつれ、比例するかのように増えているのだ。


 たしかに、元を辿ればこいつらもニルムヘイズから降りてきた。当然数も多くなるだろう……それが、山から延々と下りてきているのならば。


 だが、当然あの火山から下りてきている猿など、確認できる範囲では一匹もいない。私たちがあの中で探索している中でほとんど始末してしまったか、あるいは再びの環境の激変に、凍った後現れたであろう猿共は堪え切れず死滅したか。いずれにせよ、本来これ以上数が増える道理などないのだ。


「それに……なんだか嫌な魔力を感じるな……」


 それは、空気中に存在している魔力の元となるものではなく、魔法や魔術を行使する際に感じ取れる魔力。明らかに猿の個体数が増えているのに関係しているであろう魔術から感じ取れたそれは、どこか既視感のある嫌な感じがする。


「……あいつが魔術を発動させていた時に感じたそれにそっくりだ………」


 私の言う「あいつ」。それは、つい先日私たちの前に現れ、自ら子供を改造し生み出した魔人を駒として何やら企んでいたあの真正の糞野郎――ヴィーグルスのものだ。


「あの似非(エセ)学者擬きめ……面倒ごとを残して死におって……」


 とはいうが、殺したのは私たちだ。この事態を知っていたならば、捕虜にでもしてこれを止めさせてから殺せばよかったか……?


 そもそも、なぜ死者の魔術が今現在発動しているのだ?


「自然継続型の魔法陣か……いや、生物を増殖するなどという高度なそれが、自然継続型を用いて常時発動するとは思えん……」


 知識は持っている。が、やはり応用となると専門外の私的にはどうもお手上げだ。


 ある程度魔術に詳しい奴がいればだが……ヒユウは私同様普通の魔術は使えないみたいだし、グレイも勉強を始めたのはほんの一か月ほど前だ。少し荷が重かろう。


「何はともあれ、そうと分かれば魔法陣だ。それを探して陣を破壊すれば、この増殖もおそらく止まるはず……!」


 そうして私は、見つけ次第屠り続けていた猿から一旦距離を取り、魔力を感じることに集中することにした。






 そこから、再び三人集合。先ほどの内容を伝えると、二人も納得したような顔をする。今現在街に入って来た時の入り口付近……この町で最も猿が集まりにくい場所にまで戻って再び話し合いを行っていた。


「うーん……でも、なんで魔法陣の魔術が発動したままなんだろうね?」


「やはりそこだよな……自然継続型のそれでも、相当魔力の濃い場所であれば分からなくもないが……」




「いや、絶対それが答えだろ」


「「……え?」」


 同じ疑問を抱いたヒユウと少し喋っていると、横からグレイがさも当たり前かのようにそう呟いた。


「どういうことだ……?」


「どうもなにも、ここらで感じる空気中の魔力は相当濃いだろ?」


「うーん……? ……まぁ……言われてみれば?」


「私はなんにも分かんない……」


 グレイのその言葉の真偽を確かめるかの如く、私とヒユウは全身の感覚を研ぎ澄ませてみる……が、まぁ気持ち濃いかくらいにしか感じなかった。ヒユウに至ってはそもそも感じ取れてすらいなかった。言うほどのものなのだろうかと、どうしても思ってしまう。


「ジヴァードゼイレとの戦いで感覚が狂ってるんじゃないのか……? 言っておくが、俺がこの間まで住んでいた時はこれほどの魔力は感じなかったぞ?」


 まるで自分がおかしいかのように言われたことに少し感じるものがあったのか、グレイは私たちに少し強めにそう返してきた。


 だが確かに、そう言われれば一理ある。そもそも、普通このような町に魔物が住み着くこと自体あり得ないのだ。



 この魔物蔓延る世界では、町や建物はなるべく魔物のテリトリーから離れた場所に建設される。無論、魔物たちから襲われることが無いように、だ。



「なるほどな……と言うことは、このあたりにも強い魔力が漂っている……そしてニルムヘイズの方向へ進むにつれ猿が増えている……つまり、空気中に含まれる魔力の量も増えている……もしかしなくとも、ジヴァードゼイレの存在も関わっているんだろうな」


 思えば、ファレイルリーハの居た湖底の蒼洞窟にも相当強い魔力が漂っていた。竜本体からかなり離れていても、その魔力を感じ取れるほどには。


「ごめんグレイ……疑ってた……と言うよりかは、魔力の感覚があんまりよく分かってなくて……って、これもなんだか言い訳みたい……」


「まぁ、別に気にしてないよ。そこの誰かさんが、自分が強すぎるあまり普通の感覚すら失ってしまっているのがおかしいだけだ」


「いや誰がだ誰が……! っ……ともかく、もやもやも晴れたことだし、本格的に魔法陣の場所を探るとするか……ってグレイ……お前絶対気にしてただろ!?」


 真顔でヒユウの方を向いてそう淡々と述べるグレイにほんの少しの悪意を感じながらも、一刻も早く猿の増殖を阻止するべく、もう一度町の奥にへと足を進めていく―――――

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