#22 永久限界突破、進化は今この瞬間に
水の槍、氷の礫の雨、そしてそれらは勢いを増し、私の元にへは殺意の嵐が降り注ぐ。
「ふぅぅぅ………」
私は意識を集中させる。生半可なものではない。全神経を感覚器官へ、そして我が剣にへと集約させるのだ。我が戦王剣は無敵であるという自負を込めるのだ。
たとえ握る剣が鈍らであろうが、この私が持ったならば、それにもはや斬れぬものなどこの世に存在しない。そんなイメージを固め、そして実行するのだ。
思いを込めた剣は、どこまでも強くなるのだから――――
「――ッ!! やぁぁああああ!!!!」
今度は回避などしない……! 真正面から全て斬り捨てる………!
数百数千の礫、それがどうしたというのだ?全て斬ればいいだけのことではないか。この私が集中力を最大限まで高めたのであれば、そんなことはたいして困難ではない。
礫を斬る……いや、もはや消しとばす勢いで剣を振りながらも、私の足は前に前にへと進ませる。ジリジリと距離を縮め、射程圏内にまで近づかんとする。
だがしかし、礫の勢いは近づけば近づくほどにその威力も数も増えていく。けれどもそれはそうだろう。竜巻の中心にへと自ら赴こうとしているのだから。
それに加えて、激流の槍も消えた訳ではない。嵐のような攻撃の中にも、二本のそれは私めがけてその一撃を食らわせようと突っ込んでくる。
「スゥッ……!」
私は近くの空気を一気に吸い上げる。体を思うように動かすためにも、十分以上の酸素が必要だ。
礫攻撃には、限りなく小さな間が存在している。およそ五秒間に一度、少しずれはあるものの、おおよそはそのタイミングでほんの一瞬の隙がある。
そのタイミングを見計らい、私は一気に自身の体を限界にまで加速させる。正直ここまでの斬撃を繰り出すのもかなり限界に近い。だが、やらねばやられる。限界ならば、今その限界を超えてみせろ‼︎
「せやァァアアアアア!!!!」
一瞬にも満たないスピードで繰り出す回転斬り。右回りに放ったそれはその剣圧、そして風圧による衝撃波によって礫の形を、更には槍の形すらも崩した。
しかし大きく数の少ない槍はともかく、力というよりかは物量で攻めるタイプであろう向かってくる氷の礫全てを破砕させることはできない。だが、一秒………その半分の時間でも構わない。それだけの間が生まれたのならば、こちらも体制を整えることができる。
この間にほんの一呼吸、そして視界をフルに活用して竜の体にへと向かう最短ルートを割り出す。
(右……は少し礫が多いな……上に飛べば格好の的になる……ッ‼︎ 左の下……! そこから軽く跳躍……! 間を掻い潜り、ほんの僅かでも距離を詰める………!)
皮一枚というほどの真横を、本来今私がいたであろう場所に向かい飛んでいく無数の礫。改めて別方向から見ると相当な数だ。だがしかしその光景もすぐに見れなくなる。この礫攻撃は追尾式。すぐさまこちらにへとやってくる。
「そりゃあ、すぐに方向転換もするか……ッ!」
距離は詰められた。だが余計に礫の対処が面倒になってしまった。視界の横一面に広がった礫の全てがこちらに一気に襲いかかってくる。体感秒間に三倍となったそれも、弾く以外の選択肢などない……!
だが、こうしている間にも竜がその場に留まっていてくれるはずがない……自分の射程圏内に私の存在を捉えつつも自分はしっかりと私が届かない距離を保っている。
「えぇい焦ったい‼︎ 一気に貴様の元に辿りついてやるわ!!!」
そのためならば、今の剣の速度を二倍にでも三倍にでもしてやろう……! 例えこの手足がもげようともおまえに食らいついてやる……!
「っあああッ!!!!」
今の私は、それはもう鬼気迫る顔をしていることだろう。この体はとうの前に限界を何段階も超えてしまっている。これ以上出力を上げれば、竜にやられる前に自分の身を滅ぼしてしまうかもしれない。
「……………知ったことかぁぁぁああ!!!!」
前に進め、剣を振れ……! この戦いに活路など存在しない。自分で拓くしかないのだ………‼︎
迫る攻撃にも見飽きてきた。己の全てを賭けて、竜に剣が届く場所にまで全力で進む。十メートルあるかどうかのこの距離で、三十回ほどの全力の回転斬りを加えて千を超える斬撃。私の筋繊維は悲鳴どころか断末魔を上げているが、そんなことは気にする暇も余裕もない。そして…………
「捉えたぞ……‼︎」
また後方に下がろうとしているな?だが無駄だ……ここが地上であったのであれば、この勝負がどうなっていたかはまだわからなかったろう。尤も、おそらくその時は私が負けていただろうがな。だが…………
「おまえの後ろは壁だ……!」
ここは洞窟。広さはあれど、その空間は有限。もはや竜に私の一撃を回避できるスペースも時間も存在しない……いや、私が与えない……!
「あああああああああああ!!!!」
私の魂の剣は、戦王剣は如何なるものも切り捨てる。そんな思いを込めた一刀は、正面から竜の首元、それが繋がっている胴のあたりを捉え、そして放たれた――――――




