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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
転生村娘編

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#20 天賦の才

「礫は尽きた……! 攻撃に出――ッ!!」


 確かに奴の纏う氷の礫は一つ残らず消し飛ばした。間も無く生成され続けた氷も底をついた―――――だが、それはおかしい。


 私もまだ魔法の類が使える。つまり、ここら一帯の空気中の魔力が全て枯渇したわけではない。その気になれば、まだ先ほどまでの十……いや、百倍以上は軽く放てるだろうに。


(となれば……考えられる方法は一つ…………攻撃の種別変更……!)


 そんな予測を呟く矢先、再び竜の咆哮。そしてそれに呼応するように、地面から二つの水の柱が現れる。


 流れる滝を圧縮して切り取ったかのようなそれは、確かに水の柱の形を保ちつつも、今もなおその塊は激流を起こし、限られた中で暴れまわっている様子だった。


 そして途端、その流れが一方向にへと変わる。

 常軌を逸するほどの横回転。その勢いはみるみる増していき、やがてそれは二本の激流の槍にへと姿を変えた。


(あれは剣では無理か)


 このごく普通の剣では、結果は先ほどの首への斬撃と同じだろう。先ほどまでの火属性魔法などもってのほかだ。更に言えば、この体に最適性ともいえる水属性魔法でも、今目の前の竜相手に通用するとは思えん。なんせ、剣術ばっかりで魔法の修練はほとんどしてないからな!


(多少なりともやっておけばよかったか………?)


 いや、やろうとはしてたんだが………つい剣に夢中になってしまったというか……あまり気乗りしなかったというか………


「って、今はそんな言い訳を考えてる場合じゃないな……!!」


 うねり、伸び、こちらを穿たんと襲い掛かる二本の槍。おそらく剣で対抗しようものならその激流の中に巻き込まれこの体を肉片にへと変貌させてくるであろうそれに対し、私は回避の道を選んだ。


 二本でも十分に猛攻と呼べるそれらを搔い潜り、竜にへと肉薄する。だがそれでも、何十回何百回斬ろうと、まさに暖簾に腕押しといった結果だった。


(うぅむ……対抗手段がないのが痛いな………)


 全く全力を出していないであろう現在の竜の攻撃には対応出来てはいるが、それ以上は出来ない。私が今やっているのは、単なる時間稼ぎでしかないのだ…………… 


(せめて、あの水の身体が固体であったならば………いや、それだ……!!)


 いやしかし、試したことなど一度もない……だがやらねば、ここで終わる………!


 私は自身に舞い降りてきた天啓を信じ、再び竜にめがけて攻め込む。槍の勢いは先ほどよりも増している。というか、現れた時から勢いの上昇が止まっていない。あれが出ている間永遠に続くとでもいうのか……?


 だが関係ない。当たらなければどうということはないのだ。


 幸い、この槍二本に追尾効果はないらしく、奴の懐付近にまで近づいてさえしまえばそこまで脅威ではない。


 激流の槍はまるで主を守るかのように、竜の動きに合わせてその位置を変えてくる。それでも、竜よりも速くこちらが動けばいい。


 そして何度目か、私は奴の体を目の前に捉える。先ほどまでは考えなしにこのまま剣で攻撃していたが、今回は少し違う……!


「はあああっ‼︎」


 私は左手でやつに触れる。すると、本当に水に触れているかのような感触。皮膚にまとわりつく冷たい水は、竜の体を触っているとは到底思えない感覚だ。


 さぁ、ここからが勝負だ……空気中の魔力、そしてこの竜の体の水を、私自身の手で変化させる……!


 こいつの魔術は水。水を自在に操り己の武器とし、そして水の性質を変化させることで氷の礫を生み出した。やったことはないが、そこはこの体の才能を信じる他ないな……全く、我ながら馬鹿な策だ……!


 パキ……パキキ………


 私は、シルカ・リザリアは魔術を使えない。それの才能が皆無なのだ。だが、才能が一つも無い訳ではない。

 

 本来、黒または茶色であるはずの人の髪。だがしかし稀に、得意な魔法属性の色が髪色に反映される者が存在する。


 普通はその瞳の色でどの適性が適しているのかを判断できる。つまり、持つ適性は属性一つ。だが、そういった人間の場合、髪の色、そして瞳の色の二種類の適性を持っている。例を挙げるならば、赤色の髪に黄色の瞳を持った人間は、炎と雷の二つの属性に適性がある、といった感じだ。


 過去に騎士団の中にも何人かそういった奴がいた。そいつらは武具と魔術を最大限活かす事のできる戦いの天才たちだった。


 そして更にごく稀に、髪の色、そして瞳の色が同じ者が存在する。魔法、魔術本来のポテンシャルを発揮させることができるそういった者たちは、良くも悪くも人の道を外れた力を行使することができる……………


 そう。つまり、今の私だ。


「ぁぁああああ……!!!!」


 パキパキパキパキィィィッ……!!!!


 触れた場所から、竜の水の体をみるみる凍らせていく。

 いや、凍らせるというよりは、水を氷へと変換している。といった方が正しいだろう。この程度は魔術のうちにも入らない。イメージさえ固めれば、今の私でもなんとか出来る。


「手本を見せてくれたこと……感謝するぞ! せやぁあっ!!」


 凍らせた竜の体に、私は再び剣を振り下ろす………すると感じるのは、確かな手応え………!

 

「効果……ありだ………!」

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