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戦王剣は新米冒険者〜生涯無敗で世間知らずな元騎士長は、我流剣術と共に自由気ままな二度目の人生を〜  作者: 瀧原リュウ
凍結火山編

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#175 初めての乗り物、訪れる分岐点

 初めてトロッコに乗ったが、これは中々に快適かもしれん。


 もちろん、全力で走った時の方が早いだろうが、これは私が足を動かさなくともかなりのスピードで進んでくれる。事前にレールさえ敷いておけば、後はレールが壊れぬ限り場所と場所を一切の疲労を感じることなく進むことが出来る。


「なんか楽しいかも!」


「浮かれてる暇はないかもな……! シルカ、どの方向に行くかはお前に任せるぞ……!?」


「あぁ。引き受けた! っと、早速分岐点か……!」


 引き受けた直後、トロッコの行く手を阻む二つに分かれたレール。その真ん中にはレバー。どちらに傾くなども無く、ただ真っすぐ立てられているそれ。あれをどちらかに傾ければ、その方向に向かいトロッコは進むのだろう。


「………ここは左だな。だが、あのレバー、どうやって動かす……?」


 一旦トロッコを止めればいいのではと考えはしたし、さっきすぐさまグレイに聞いてみたが、どうやら一度魔力を注いでしまうと終点まで止まることはなさそうとのこと。


 魔力を送るのを辞めようとしても、台座の方がどんどん欲し、グレイの体力をも消費して勝手に魔力を生成し、台座自らが取り込んでいるかのような不思議な感覚があるという。




 もちろんそんな感覚味わったことのない私からすればなんじゃそりゃといったところではあるものの、それと同時に改めてこのダンジョンの仕組みの独自性に驚かされる。


 間違った方法で扉を開けようとすると発動される魔法陣。その先に訪れた者のためにずっと待ち続けていたのかと思うようなリザードマン。そしてそれを倒すことで現れる宝箱と出口……まるでリザードマンが倒されること前提で作られたようなあの場所を含めたこのダンジョンは、やはり人間が作るそれとはなにか次元が違うように感じてしまう。




「私に任せて!」


 そんな時、名乗りを上げたのはヒユウだった。


 ヒユウはかなりの速度で走っているトロッコの先頭に飛び乗り、腰に携えた鞘から相棒の刀を抜いた。


「すぅっ……」


 刀を構え、小さく息を吸い、整える。風圧も感じられ、方々と揺れる走行中のトロッコの上でも、ヒユウの体制は一切崩れることがない。鍛え上げられているのであろうバランス感覚と、安定した重心が、ヒユウの体を微動だにもさせない。


「せぇーー………のっ!!」


 トロッコがレールの分岐点に差し掛かった瞬間、ヒユウはタイミングよく刀の峰を用いて、レバーに向けて右側から左にへと思いっきり打った。


 その時響く、少し錆びれた金属の擦れる音。だがそれでも、酸化して完全に茶色くなってしまっているレバーも作用はしてくれたようで、私たちが乗っているトロッコは無事に左にへと曲がった。


「ナイス……!」


「うむ、この調子で行こう……!」




 こうして、グレイが動力源となってトロッコを動かし、私が魔力がより強い方を判別、ヒユウがレバーを倒して進行方向を確定させる役割となった。


「右……次も右……左………これは倒さなくていい、真ん中だ……!」


「よっと! ふんっ! せいやっ……!」


 ここまで何度か分岐点があったが、今もかなり順調だ。どうやら無事に間違えず進めているようで、トロッコでの移動はまだまだ終わりそうにない。


 もし間違えたらどうなってしまうのかというのも少し気になってはしまうが、そんなくだらない好奇心のために命を捨てられるほど、私は人生に絶望などしてはいない。


「っと……少し疲れてきたな………」


 絶え間なく魔力を生成することを強いられているグレイにとうとう疲れが見え始めている。というか、ここまで持っている時点で不思議なのだ。




 なんせ、連戦に次ぐ連戦、挙句の果てには片腕を失っている。魔力を生成する以外でも、体力も相当持っていかれてるだろう。


 精神も肉体もボロボロ。それであるというのに、グレイは疲れは見せるものの、その限界はまだまだ心の内に留めている。


 こんな青年をここまでさせるのは、きっとクライオスへと激しい怒り、そして奴を仇とする復讐心だろう。昨日グレイと出会い、事の顛末を聞いたその時から、奴のクライオスに対する殺意は常軌を逸していた。


 だが、共に過ごしていた仲間がほとんど死んだのだからそれも当然と言える。それでも、どうかこのまま、グレイが復讐心で燃え尽きないことを、内心祈るばかりだ。


 


「………かなりの距離走って来たと思うけど……まだ終着点じゃないのかな?」


「スタート地点から相当離れたようにも思えるが、カーブやレールの高低差などもかなりある……実際はそれほど離れていないのかもしれんな」


 このに来るまでに二十は分岐点を越えてきたが………それでもまだまだレールは続いて―――


「……っ! おい、あれを見てくれ……!」


「どれどれ………あっ! 地面だ! ってことは、あれがゴールかな?」


 ここから少し高い位置に、私たちはゴール地点と思われる場所を発見する。


 そしてそこにたどり着く前でには、まだあと少しとは言えないほどの長さのレールが残っていた。

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