#168 定めに準ずるか、それとも反するか
グレイの言う通り、たしかにグレアシスタの中は迷路のような構造だ。
入り組みに入り組んだ自然の道。採掘場へと続くルートだけは、運搬のこともあってか多少整備されているようであったが、それ以外は一切手を加えられていない原型そのものと思われるような印象だった。
そして、やはり未知のものがたくさん見られて、私としては物凄く楽しい。凍るマグマの川やマグマ溜まりなどはもちろんのことではあるが、それ以外にも様々な色や模様をした火成岩が辺りに散りばめられていたり、火山であるのにも関わらず所々に雪が降っていたりと、調査のためでなくとも興味を唆られるものが多く存在しており、私としては実に面白い場所だ。
しばらくグレイについていくと、東アシン山とはまた違った雰囲気の作業場と思われる場所にたどり着く。
こちらはたくさんの鶴嘴が綺麗に整頓されており、東アシン山の採掘場よりもしっかりとした管理がなされていたことが伺える。
あと先ほどとは違い、露出している鉱石の類は極めて少なく感じる。こちらの方が採れる鉱石の量は多いと聞いていたが………
「あぁ、こっちでは鉱石を見つけたらすぐに回収しているからな。さっきも言ったが、ここの鉱石の質は相当な物で、紛失する前にしっかりと回収して運搬するようになっているんだ。鉄鉱石一つだけでも、ここと東アシン山三合目採掘場のそれとでは価値が大きく変わるほどだ。ま、危険に見合った対価がちゃんとあるってところだな」
「なるほど……やっぱり石だけでも色々違いがあるんだね……!」
「そうだな。俺はまだまだだったけど、じいちゃんや父さんなんかは、一目見るだけでその鉱石の質が分かっていたな……今考えても、恐ろしいほどの目利きだった………」
物質を解析する鑑定魔術……というのはあるが、おそらくグレイの父や祖父はそんなものを使わずとも、その石の良し悪しが分かっていたのだろう。鉱夫としてその域に達するにはどれ程の時間と熟練度を必要とするのかは、剣士である私には分からない。
だがそれでも、並大抵の努力では辿り着くことは出来ないのであろうことは容易に想像できる。
「よほど尊敬しているんだな」
「当然だ。俺の自慢の家族だよ……本当に………」
グレイは悲し気に笑う。少し、深堀りし過ぎてしまっただろうか。
だが、人は皆平等に死ぬ………私がそうだったからだ。そしてその運命から逃れることは、非常に難しいだろう。おそらく、人であることを辞めねばなるまい。
そしてそれは、己の家族だって例外ではない。こんな言い方をするのもなんだが、グレイの場合、少々それが早すぎただけだ。
今後の人生でも、年月が過ぎていくのならば必ず何度も訪れる。それは師、友、知人、将来結ばれるかもしれない人……そしてそれとの間にできた子供かもしれない。それが、あまりにも当然で、あまりにも自然で、あまりにも残酷な現実だ。
逃れる術はない。どれだけ想おうと、死んだ人間が真の意味で帰って来ることは無い………と、私が言うのは少し間違っているか。
だから、生きれるだけ生きればいいだろう。頑張れるだけ頑張ればいいだろう。私はそう思っている。
様々なものを見れる、聞ける、味わえる、考えられる。こんな素晴らしい体験ができるというのに、何もせず終わりを待つなど、あまりにも寂しいじゃないか。
運命が定められているのなら、自分のそれを最高の物にしなければ、私自身満足できない。そしてそれはきっとヒユウも……グレイだって同じはずだ。
だからこそ、二人には、これからも前に進み続けてほしい。そしてそのためにも、この凍結問題を解決し、再び働ける環境というものを取り戻さなければならない。
そこからもしばらく、私たちは火山の中を進んでいた。
ここへは採掘作業をしに来たわけではない。特に何もなさそうだった採掘場はひとまずスルーし、更に奥、グレイもこれまでほんの少ししか踏み入れたことのないような場所を進んでいく………すると、私たちの進行を阻むものが、そこには存在していたのだ。
「ッ……! なにこれ………!?」
「今までこんな壁……見たことがない……一体これは………」
そこに……自然に形成された火山内の道を塞ぐように存在していたのは、明らかに建物のような壁だった。鉱夫たちが作った人工物………いや違う。私はこれに近しいものを、ほんの一年前に見ている。
「………ダンジョンか……!!」
「「ダンジョン………!?」」
そう。この不思議な装飾がなされた壁……デザインこそ違うものの、かつて私がレイアたちと共に攻略したダンジョン、ノーマリエと非常に酷似している。グレイの言い分からして以前この場所にはなかったようだが………いきなりこのような建物がこんな場所に現れることなどあるのだろうか?
(いや……確かレイアが調査に向かったトコロナにも、突然ダンジョンが現れたんだったか………)
となれば、決してあり得ない話ではないが………
「とりあえず、入ってみるか………! 入り口で突っ立っていても何も始まらないしな………!!」
「クライオスたちも、この先にいるかもね……!」
「油断は出来ないな………!」
そして気合一千、私たちはそのダンジョン……情報の一切存在しない完全なる新規エリアにへと飛び込んだ………!




