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#13 成長し、さらに奥へ

 そこからは、相も変わらず鍛錬の日々を送った。


 もちろん家の手伝いも怠ることなく、それ以外の時間はほとんど食事と剣に勤しんだ。

 あの後から、私とナルクは狩猟には毎回参加し、冒険者になった後の魔物との実戦に向けての訓練を行った。前世では人間しか相手にしてこなかったのだ。人外に慣れておくに越したことはないだろう。


 あの一件以来、ナルクの腕はめきめきと上達していった。

 自信過剰な性格から一変して己と向き合い始めたのが良かったのだろうか、一年もすれば、背中のバトルアックスもなかなか様になるような戦いぶりを見せていた。少なくとも、村の中で唯一私と張り合おうとしていたのだ。向上心が高いのは何よりだし、その調子で実戦でも死なない程度に活躍してほしいものだ。


 そして当然、ナルクだけではない。私とてただ調子に乗っているわけではないし、それ相応の力を日に日に身に着けている。

 なんと、あの自他ともに認める剣術しか能のない私が、今度は魔法にも手を出したのだ! 我ながら今更どうしたというのだ!? ……とまぁ、冗談はさておき…………



 いつぞやに村に来た冒険者から、ある魔物についての情報を得たのだ。それが、物理攻撃を無効化する魔物の存在。


 そんなものが存在するのは、これまででも初めてだ。もちろん、前世を含めて、だ。

 なので、それまでの剣術のみでも問題はないだろうという考えは捨て、とうとう苦手分野の魔法系統のものに挑戦することにしたというわけだ。


 で、結果の方だが、やはり苦手ということには変わりなかった。

 相変わらず頭の中で構築式を練り上げることは出来ず、魔力を固めて放つくらいのことしか出来ない。結局魔法をベースとし、そこから組み上げて完成させる魔術というものに関しては一切習得することが出来なかった。


 ちなみに、このシルカ・リザリアという娘の肉体は、水属性の魔法を得意としている。この世界の人間は、髪の色、瞳の色でどの系統、どの属性の魔法が得意なのかということが分かる。


 そして、私の瞳の色は青。髪は水色。水属性魔法系統の最適性体だ。


 だがまぁしかし、水属性以外の魔法が使えないのかと聞かれれば、案外そうでもない。ただ、水属性魔法に適性がある。というだけで、基本的に誰しもが、理論上全ての属性の魔法を使うことが可能だ。と言っても、向き不向きがあるので、全属性使えるものは限られてくるだろうが。


 そんな感じで、出来はともかくとしても、とにかくそういった魔物に対する対抗手段はひとまず用意することが出来た。本番でうまく機能すればいいが………魔法は()()()()()()からな……………


 




 そして、私たちが十五の年になったころ、とうとう一足先にナルクが村を出た。冒険者になるための第一歩、冒険者ライセンスカード取得試験へと向かうのだ。


 冒険者になるための試験は、知識、実力さえ持っているのであれば、基本的に年齢、性別に制限はない。誰でも受けることが出来る。だがそれ故に、合格ラインは少し厳しめに設定した。

 筆記はともかくとして、あれから相当実力を身に着けたナルクであれば、十分に乗り越えることが出来るだろう。繰り返す。筆記はともかくとして。


 私はあと一年残ることにした。今のままでも、いや、今すぐ受けても試験に落ちる気は全くしないが、念には念をだ。試験を受ける前にさらに実力を伸ばしておいても損はないだろう。


 正直、グフストルとしての私が死んでからどれ程の月日が流れているのかを自分自身把握できていない。仮に死んだ直後から、つまり十五年の月日が経っているのだとしても、筆記試験の内容も変わっているはずだ。


 まぁ、基本的な冒険者に必要な知識があるかどうかを試すだけなので、こちらとしてもそこまで難易度が高いわけではないのだが………とどのつまり、ナルクも強くなったし大丈夫だろう、ということだ。あいつ、ちゃんと勉強してるんだろうな……?


「さて、ナルクもいなくなったし、どうするか………」


 日課として行っていた対人戦闘訓練の相手がいなくなってしまった。父さんたちは「もうシルカには勝てない」とか言って相手にしてくれないし………


「う~~ん…………あ、そういえば」






「父さん、狩猟でもう少し歯ごたえのある奴とも戦ってみたいんだが」


「えぇっと……狩猟は生きるための食糧を確保するためにやってるんだけどなぁ………そうだな……シルカの実力なら、あそこに行ってみるのもいいかもしれないな………」


「あそこ?」






「――――というわけで来てみたが…………なるほど」


 これは、予想以上かもしれないな…………


 私が父さんに教えられて訪れた場所は、いつも狩りをしている森のさらに奥深く。とてつもなく大きな湖に隣接するような形で存在している遺跡だ。


 建物の高さは地上から約三十メートルほどはあるだろうか。その面積も凄まじく、ここらの森が広がっている地帯の中ではかなり存在感のあるものだ。もちろん前々からその存在は知っていたし、中がどうなっているのかも気になっていたところだ。


「奥には行き過ぎるな。と忠告されたが…………よし、とりあえず行ってみるか!」


 そんな軽い気持ちで、私は遺跡の中へと入る。だがそこで私は…………予想以上。そんな言葉すら絶するほどの苦戦を強いられることとなる。

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