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#100  王様は知っている

 部屋に入ってみれば、そこには大量に設置された白いベッド。同じもの、同じ色で統一されたそれらは、突然大量の怪我人が現れたとしても収容できるほどには数があり、部屋も広かった。


 そして、今そこにいるのはたったの二人。先ほど運ばれてきたであろうリンと、その前に運ばれたヒユウだ。


 黒刃の鉄仮面(ブレイダー・マスク)の暴走からまだそこまで時間は経っていないが、それでもすでにリンは目を覚ましている。頭には包帯が巻かれており、右腕はギプスによってしっかりと固定されていた。


 だがヒユウは、未だ眠ったままのようだ。だがそれでも、火傷痕は綺麗に消えてしまっている。


「まぁ、リンの方はひとまずの応急処置は済ませといた。少し休んだら集中治療室の方で骨折も問題無いし頭の傷も塞がる」


「オルフロストさん、どうやら私を運んでいただいたみたいで……ありがとうございます………」


「気にするな。誰だってそうするだろうしな」


 リンは微笑みながらレイアに感謝を述べた。意識を取り戻してすぐだからだろうか、少ししんどそうには見える。


「………で、問題はこっちの嬢ちゃんやな……全身に大火傷、さらには筋繊維もズタズタ、おまけに相当な疲労困憊………ちとやりすぎやせんやろか、レイアの嬢ちゃん?」


「は、はい……すみません………」


 なんとこのドクター、ヒユウをやった犯人を見事当てて見せた……といっても、この面子じゃ一人しかいないだろうが。


「………まぁ、命に別状はない。すでに火傷は全部治しといたし、破壊された筋肉も修復しておいた。もうしばらくすりゃあ自然に起きるやろ」


「よかった……ありがとうございます……‼︎」


「かまんかまん。これが仕事やしな」


 それを聞いて私は心の底から安堵する。木刀こそ無くなってしまったが、あれがあったからこそヒユウの命はきっと繋がれた。相棒の犠牲は無駄ではなかったのだ。


「………それにしても、あのガーディアンが暴走したとかいうん聞いたときにゃあびっくりしたわ……考えられるんは魔力の暴走か、ガーディアンの構築式の問題か……あるいは………」




「それに関しては、私から説明しよう」


「「「「⁉︎」」」」

 

 突如発せられる、これまで聞いたことのない声。ドクターとはまた違う初老付近の男性の声でこちらに話しかけてくる。


「ッ⁉︎こ……」


「国王陛下………⁉︎」


「国王………?」


 隣にはネストもいる。おそらく、こちらに向かっている道中に顔を合わせたのだろう。


 そして、目の前にいるこの人物は、確かに纏っているものはこの国の王族のものだ。だが、目の前にいる男は、私の記憶の中の国王とは違う男だ。


「………が、その前に……シルカ・リザリアといったか………」


「……はい、私がそうです」


「まずは、あなたと話がしたい。少しお付き合いいただきたいのだが………」


 明らかに何かを黙っている。私以外に聞かれたらまずいようなことでもあるのだろうか。


 しかしその笑みは決して悪意を含んだものではない。何かしらの裏があるのは間違いないだろうが、それは一体………


「………分かりました。どちらへ?」


 だが、考えていても仕方がない。行ってみれば分かることだ。それに、リンたちの言うことが正しいのであれば、目の前にいるこの男はこのヴェラリオの現国王。変な真似はしないだろう。それに、私に行くなと言う者も、この場には一人もいないようだしな。






 そうして国王についていけば、そこは今日の初めあたりに適性鑑定を行った少し狭い部屋。そこにはまだ例の魔術師が居座っていた。


 どうやら暗かったのはただ単にカーテンを閉めていたからのようであり、すでにそれは開いている。部屋の中には太陽の光が入ってきており、先の怪しげな雰囲気はかなり薄まったものの、それでも部屋の中の濃い魔力は変わっていない。


「………もういいんじゃないか?……それで、私をここまで連れてきた理由はなんなんだ?」


 まどろっこしいのは嫌いだ。私は単刀直入に国王へと問う。すると国王は無言でこちらへと振り返り………


「………いやはや、随分とお可愛くなられましたな………グフストル殿」


「なっ……⁉︎」






 唐突に国王が告げた、私の前世での名。もちろん私はそれを一切名乗ったつもりもないし、もっと言えば転生してから誰にもそれを言ったことはない。


 だが、この男は確かに私をグフストルだと言ったのだ。なんの迷いもなく、何かを疑うこともなく。


「………貴様は、一体何者だ………?」


「………確かに、あれから随分と歳をとりました………私です……ディーバス・ヴェラリオでございます……!」


「ディーバス………何⁉︎ディーバス様だと⁉︎」


 


 ディーバス・ヴェラリオ。当時国王であり、私が忠誠を誓っていたディノス・ヴェラリオの実子……つまり、王子だったお方だ………それがどうして、今世の私の目の前にいるのか、それが分からない。


 だがしかし、よくよく見てみれば、額に小さいが特徴的な傷が残っている。それは昔修練の際に負ってしまったものだ。


「だがそれでも……なぜそれを……私がグフストル・アンバーの生まれ変わりだと知っておるのですか……⁉︎」


「それは………ジヴァル殿に手伝っていただきまして………」


「………まさか、生きている間にもう一度あなたと話せるとは………」


「ジヴァル………ハハハ……!そうか……まだ生きておったのか………‼︎」


 やっと思い出した。城にいた記憶を見ることのできる魔術師……!まさか目の前の老人がその本人だとは思わんかったがな………!

 はい、もう100話ですね。


 連載開始から1ヶ月半、私からすれば相当な勢いで進んでいるかと思いきや、結構細かくして伸ばしちゃうので話自体はあんまり進んでいないかもですが………ご安心ください。順調に進んでおります……


 いつも見ていただいている方もご新規様も、もし本作品がいいなと思っていただけたのでしたら、ブックマークや下の☆☆☆☆☆から評価などもしていただけたら、作者の励みとなるのでよければよろしくお願いいたします。


 それでは長くなりましたが、今後も戦王剣をお楽しみいただけますと幸いです。

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