2 映画みたいな話
~第一章のオマージュ~
ローレン「作者は映画好きを自称してますけど、この話の中にはかなりの数のオマージュが使われているんですよね」
イオ「そうですね。まず、始まりがバックトゥザフューチャーをもろに意識してます。タイムマシンは車型じゃなきゃダメというこだわりが見えます」
コピー「それに、出てくるロボット、Bb9とホープはそれぞれ、ターミネーターとSTAR WARSのBB8だな」
ローレン「STAR WARSあんまり観たことないくせに使うんですよね、これが」
イオ「トイロソーヴの髪色や目の色がカラフルなのは本好きの下剋上の影響らしいです。これも完結までしっかり読んでるわけじゃないみたいです」
コピー「色がありすぎて作者もあんまり把握できてなかったよな」
イオ「エクセルにまとめて、その都度見てたようです。映像化したら色は強烈な個性ですが、文字で読む分にはあんまり無駄な設定を増やすのは得策ではなかったかもしれないですね」
コピー「私のイメージは塔の上のラプンツェルってことだが、そんなに似てるかな」
ローレン「西洋風の塔のイメージはそこから得たようです。引きこもりのコピーと外に出たいラプンツェルは全然違いますし、性格も真逆ですね」
コピー「白い髪に赤い目の女の子、おまけに頬っぺたにさそり座のあざって、相当中二の設定じゃないか」
イオ「そういう趣味なんですよ。作者的にはコピーってキャラが一番お気に入りみたいです」
コピー「喜んだほうがいいのか?」
イオ「勉強で化け物とバトルする設定は、暗殺教室の影響が大きいらしいです」
ローレン「自分で考えて、答えにたどり着き、大きな化け物をぶった切る爽快感は癖になっちゃいますよね」
イオ「また、この作品の前半ではよく数学っぽいテーマを取り扱ってまして、それはおそらく浜村渚の計算ノートの影響が大きいですね。数学が美しいって思えたのはその本の影響らしいです」
コピー「ケーニヒスベルクの橋とか、漸近線、RSA暗号とかいう用語が出てきたな」
ローレン「バトルで戦う敵、モンダイは青白く光る馬や鹿の形をしていますよね」
イオ「あれは、ハリーポッターの守護霊の魔法を参考にしたそうです。馬と鹿なのは単純にバカの暗示です」
コピー「一章では時々弓の描写がやけに細かいところがあったな」
イオ「作者は弓道に惚れています。高校時代は明け暮れていたそうで、美しいらしいですよ。のちにツルネって作品も観たようですけど、あのアニメはなかなか見てる世界が同じだと感じたそうです」
ローレン「湖の上で弓を引くシーンは、古文の扇の的からですね。那須与一かっこいいです」
コピー「わりとSFテイストを感じる場面も多いな」
ローレン「作者は一時期AIとかシンギュラリティにハマって、そういう映画ばっかり観てる時期があったみたいです。コピーとBb9の喧嘩の原因、ロボットが命を創っていいのかという問題は、ブレードランナーに出てくるレプリカントからの影響で思いついたそうですよ」
イオ「楽園の地下のイメージは、ブレードランナーの最初のシーンをそのままイメージして使ってるようです」
イオ「地下にはエラーズが住んでいまして、エラーズは義手や義足を身に着けていることが多いんですが、そのイメージは鋼の錬金術師とヴァイオレット・エヴァ―ガーデンからです」
コピー「メタリックな義手が性癖なんだそうだ」
~第二章のオマージュ~
イオ「青の街は、外観はモンサンミッシェル、内部の街はベネチアとか、モロッコのシャウエンをイメージして書いたそうです。青の街って検索すると出てくる、壁の色が青で統一されている町ですね」
コピー「ほんとにあるんだ」
ローレン「青の街は全体的にヨーロッパイメージですね。図書館は純粋な創作ですが、そんな場所があったら住んでみたいそうです」
コピー「メデューサみたいな運命をたどることになるだろうが……まあ、作者も元々引きこもりっぽいし、なかなか幸せにやっていくんじゃないか?」
イオ「レストランでの僕と店主のやり取り、「四匹ください」「二匹で十分ですよ」はブレードランナーからのオマージュですね」
ローレン「あまりに有名だから映画好きにはバレるんじゃないですか」
イオ「バレたいと思ってオマージュしてるみたいです。あまりにブレードランナーが好きなので」
コピー「言うまでもなく、青の街での潜水艦は海底二万マイルからだな」
ローレン「ノーチラスってはっきり言ってますしね。作者はきちんと原作読破はしてないみたいですが」
コピー「けっこうオマージュとか題材にしてるくせにちゃんと読んでないの多いな。教養どうなってんだ」
イオ「あんまり怒らないでください。反省しています」
イオ「楽園内の話に戻りまして、ライとダイという芸術家の話ですが、戦闘シーンの舞台はオペラ座の怪人、ピストルのシーンはダイハードからとのことです」
コピー「あの話は急にダイの口を借りて作者が自分の創作論を語り出すから、そういうの嫌な人は注意したほうがいいな」
ローレン「今言っても遅いですよ」
~第三章~
コピー「闇医者マリアがルートの目を手術するとき、サンドイッチと牛乳を用意するんだけど、あれはマイノリティ・リポートの一コマのオマージュだな」
イオ「シュールな笑いが好みの映画なんだそうです」
ローレン「三章は大きく広げまくった風呂敷をたたむのに忙しくてあんまり露骨なオマージュはなかった印象なんですけど」
イオ「でも意外とこまかなエッセンスはありますよ。コピーがBb9開発してる時の風景はベイマックス、「地獄で会おうぜベイビー」はターミネーターですね」
コピー「最後の私の桜を見てのセリフとか、クライマックスは、岡倉天心の茶の本の一節、「桜は人間のように臆病ではない、花によっては死を誇りとするものもある。日本の桜がそうで、彼らは潔く風に身を任せるのである」だそうだ。茶の本は読んだけどよくわかんなかったらしいが、花に関する文章ではけっこう共感してたので影響が大きいみたいだな」
ローレン「梶井基次郎さんの櫻の樹の下にはという短編もちょっとはオマージュしてますかね」
イオ「最初の一文だけあまりに有名ですね。二人とも桜の木の下に埋まりましたね」
コピー「城にある桜は、私、ローレン、ロボットも入れるならBb9とホープの死体が埋まった桜ということになるな」
イオ「たくさんの作品を参考にさせていただきました。素敵な作品を作ってくれたすべての先人のみなさんに、作者に代ってお礼を申し上げます」