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45.エピローグ:メイド男爵、ゆりゆりパワーで飛び立つ




「ふぅ、お茶が美味しゅうございますなぁ……」


 女王陛下との謁見から一夜明けて、私は王都のカフェでお茶を飲んでいた。

 テラス席の一等席である。

 香り高いお茶を飲んでいると、心の隅々まで癒されていくようだ。

 貧乏伯爵家ではあるけど、お茶の楽しみぐらいは知っているのである。


「メイドさん、お待たせしましたぁ!」


 向こうから嬉しそうに駆けてきたのは、我らがエンジニア、マツである。

 彼女は領地のために買い物がしたいというので、お任せしていたのだ。

 たゆんたゆん胸を弾ませながら走ってくるのはちょっと心に痛い。


「お茶、美味しいですねぇ!」

 

 彼女は私の隣に座ると、お茶をくはーっと飲み干す。

 どうやらいい買い物ができたということらしい。


 それにしても、である。

 私は今、気づいたのだがマツはいつも私のことをメイドさんと呼ぶ。

 そりゃあ、メイドの服装をしているし、メイドは天職だ。


 だけど、今の私たちの関係で、ずーっとそう呼び合っているのは違和感がある。

 そんなわけで、私はとあるお願いをすることにした。

 

「メイドさん、じゃなくて、私のことはサラ、でいいよ」


「でも、男爵様ですし……」


「いいから。なんていうか、友達以上の関係なんだし」


 マツが今更ながら遠慮がちにそんなことを言うのには笑ってしまう。

 私のことを自称男爵だとか散々言ってくれていたくせに。


 とはいえ、そういう軽口もひっくるめて私は彼女のことが気に入っているのかもしれない。

 一緒にいて落ち着くってことが私にとって大事なことらしい。

 いや、友達以上の関係なのかも。

 キスまでしてしまっているし。


「友達以上でゆりゆりなこともする……。それ、世間ではセフレっていうのでは?」


 それなのに、こいつときたら!

 乙女のほっこりした気持ちが一気に失せることを言いだしやがる。

 いや、そっ、そういう意味で私、言ってたんじゃないし!

 友達ってよりは領地運営のためのパートナーというか、そういう感じで言ってただけだし!


「んなぁああ!? そこまで行ってなくない!? こ、これはその、何だ、ゆ、ゆりともだからっ! っていうか、あんた、そんな言葉どこで覚えたのよ!?」


 とにかく、である。

 セフレはまずい。

 それは絶対にダメだ。

 そんなただれた関係じゃない、私のは結婚を前提とした関係だし。

 あれあれ、そうなんだっけ。

 うぅう、だんだん頭が痛くなってきた。


「それじゃ、えーと、私のこともティーヌって呼んでくださいよ、その……サラさん」


 ぷすぷすと頭から煙をあげていた私の傍で、マツは照れたような顔をする。

 はにかんだ顔はそれはそれでかわいかった。


「ほへぇ、思ったよりも女の子っぽい名前だったんだね。かわいいじゃん! あはは、ティーヌ、よろしくね!」


 マツは自己紹介の時に、マツ・ド・サイエンと言っていた気がする。

 しかし、実はそれにティーヌなんて続きがあったのか。

 まぁ、お互いに出身が違うし、名前には色んな文化があるよね。

 

 私はマツの手を取り、改めて、挨拶をする。

 一緒に頑張っていこうという意味も込めて。

 

「ありがとうございます! あ、ティーヌって家族だけが呼んでいい名前なんです! 家族になる人だけが……たはは」


「ちょっと、自分で言ってて照れないでよぉ!? へへ、家族かぁ、そっかぁ、ナルホドネー」


 ティーヌの耳は発火しそうなほど真っ赤になっていた。

 当然、私の耳も、頬も、めちゃくちゃ熱い。


 この空気、微妙過ぎるよ。

 そう言えば、メイメイってどこに行ったんだろう?

 誰かに迷惑をかけてなきゃいいけど。

 あの子、お金って概念、知ってるのかしら。


「お師匠様、大変ですっ! 砦が、砦が浮かんでこっちに来てます!」


 噂をすれば影と言うものらしく、メイメイが叫びながらこちらに駆け込んできた。


「なぁあああ!?」


 私は思わず、立ち上がってしまう。

 王都の上に私たちの砦が浮かんでいたのだ。

 地中に埋めておいたはずのあの砦が!

 

「な、なんだ、ありゃあ!?」


「浮いてるぞ!?」


「どこかの国が攻めてきたのか!?」


「大きくて浮かんでるぅうう!? もうダメ、私、死んじゃう!」


 王都の市民たちは砦を指さして、大きな声をあげる。

 そりゃそうだ、砦が浮かぶだなんて聞いたことない。


 ちなみに最後の気持ち悪い叫び声はマツである。


 砦はふよふよと私たちのいるカフェの真上まで飛んでくる。


 そして、


『砦ちゃんから離れてゆりゆりするなんて許しませんよ?』


 と、私たちに声をかけた。

 さらにはしゅおおおっと摩訶不思議な光を私たちに浴びせてくる。


「あきゃあああ!?」


「なにこれぇえええ!?」


「楽しぃいい!」


 砦から光が発せられると、私たちの体はふわりと宙に浮く。

 そして、ふよふよと宙を舞い、砦のなかに吸い込まれていく。


「浮いてるね……」


「伝説は本当だったんですね……、さ、最高ですぅううう!」


「ぬははは! メイメイは最強へ旅立つのですねっ!?」


 驚き焦り、これからどうするか悩む私。

 大きいものに包まれて熱狂するティーヌ。 

 勘違いを炸裂させるメイメイ。


 そんな間にも砦はふよふよと浮かび続け、今では王都が小さく映る。


 私は眼下を眺めて、ふぅっと息を吐く。

 浮かんじゃっているのならしょうがない。

 よぉし、これから世界を見て来ようじゃないか、この砦で!


『もっと、ゆりゆりすれば世界征服できますよ?』


 砦はまるで悪魔のようなささやきを仕掛けてくるが、そんなものに興味はない。

 私はただ一緒にいて楽しい仲間と暮らすだけなのだからっ!


【☆★読者の皆様へ お願いがあります★☆】


お読みいただきありがとうございました。

こちらはトリデンメイデンのオリジナル版となります。

あまりにもゆりゆりしていたので変更したのですが、やはりゆりゆりでしたね。

さくっと10万字程度で書けてすごく楽しかったです。


次回作もお楽しみに!

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