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19.メイド男爵、ドラゴンの攻撃にキレる



「……よっしゃ、今日はこれぐらいにしてあげますよっ! 次に会う時がお前の最期だ!」


 メイメイはドラゴンに指をびしっとさすと、そそくさと砦の中に入ってくる。

 もちろん、大急ぎで扉を閉める私たち。


 それにしても、捨て台詞が雑魚すぎるし、そもそも、よっしゃって何。


「ひぇえええ! ドラゴンが攻めてきたぞぉっ!?」


「く、食われちまうぞ!?」


 とはいえ、メイメイにツッコミを入れている暇など私たちにはない。

 ドラゴンは獲物を返せとばかりに砦に突撃してくるのだ。

 あわわ、どうすんのよ。


「男爵様ぁああ、ぜひ、先ほどのお考えとやらで私たちをお助け下さい!」


「お願いしますですじゃ! グッドアイデアをプリーズ!」


 メイメイとのやり取りを聞いていた村人たちは私のもとにひれ伏す。

 その間も砦はずしんずしんと揺れ、耐久性はどんどん低下。


「メイドさん、ここで活躍しないと地位が揺らいじゃいますよ!? 男爵から芋に転落ですよ! 芋は煮られて食べられるのみですよ! いや、今回は焼き芋かも」


「わ、わかってるわい! 芋っていうな!」


 さらにはマツがやたらと煽ってくる。

 そりゃあ、メイメイを助けるために、考えがあるなんて言ったのは私の責任だ。

 今さら、何のアイデアもありませんなんて言えるはずもないわけで。



「ぐおがぁああああっ!」


 まずは敵の観察だ。


 屋上からドラゴンを眺めると、奴は無法図に砦に攻撃をしかけているのがわかる。

 特に厄介なのが、尻尾攻撃だ。

 巨大な鞭のようにしなる尻尾が当たると、石造りの砦がぐらぐらと揺れるのである。


「ひぐうぅっ!?」


 しかもである。

 どういうわけか、奴が砦を攻撃するたびに私の脇腹に痛みが走るのだ。

 一瞬、先ほどのスープが当たったのかと思ったのだが、そんな痛みじゃない。

 まるで透明人間が私の腹を殴っているような感じと言うか。

 とはいえ、耐えられない痛みではない。

 

「ひぇええ、やっぱり帰ってくれないみたいだねぇ」


「お腹が空いてるのかもですねぇ」


「それだよ……!!」


 マツがここで素晴らしいことをぽつりとつぶやく。

 そう、今まで散々、引っ掻き回してくれたマツが初めて役に立ったのだ!


 私にはわかる。


 ドラゴンが執拗に砦を襲ってくる理由、それは単純にお腹が減っているからなのだ。

 ラッキーなことにこの砦にはモンスターのお肉が大量に保管されている。

 ある程度、食べさせても問題にはならないだろう。


 お料理は得意だし、お腹をいっぱいにさせて退散させてしまえばいいのだ。

 ぬはは、これこそ太陽と北風作戦である。

 私の温かい心がドラゴンの冷たいハートを溶かすのだっ!


 お料理のおいしさに感動したドラゴンが私の使い魔になったりしたらどうしよっかな。

 辺境の砦に置いてけぼりにされたけどドラゴン使いのメイドになってしまった件とかで、都で華々しくデビューできるかも!

 そして、王都にいる人達は私のことを偉大なるドラゴン使いとして崇め奉るのだ。

 ぐふふ、かっこいいかもしれない。


「メイドさん、なんでニマニマしてるんですか!? ひぇええ、あのドラゴン、何だか様子がおかしいですよ? あれってもしかしてっ!?」


 私がドラゴンにどんな料理を振舞おうかと考えていた矢先のことだ。

 マツが何か異変を感じたような声をあげる。

 

 ドラゴンを見やると、砦から少しだけ距離をとっていた。

 もしかして、食料をもらえるなら攻撃しないってこと?


「私の心が通じたの!?」


 まさに以心伝心!

  


 一瞬だけそんなことを思ったのだが、もちろん、違った。

 

 ドラゴンは大きく息を吸うそぶりをすると、口を大きく開ける。

 それから胴体をぷくーっと膨らませる。



 そして、次の瞬間。


 ごばぁあああああああああああっ!!


 吐きやがったのだ。

 炎を。

 この砦に!


「ひぇええ、ドラゴンのブレスですよぉおっ! こんなの喰らったら死んじゃいますよっ! かっこいい!」


 悲鳴なのか歓声なのか分からない声をあげるマツ。

 どっちかにしろと言いたい。


 ここは石造りの砦だから、炎ですぐに溶けるわけではない。

 そんな風に私は思っていたのだが、現実は違った。


「ひひゃ、あちゃちゃちゃちゃ! なんか熱いんだけど!?」


 そう、なぜか私の脇腹が猛烈に熱いのである。

 なんて言うか脇腹に熱々のパンを押し当てられたぐらいの熱さである。

 耐えられないこともないが、突然の出来事だ。めちゃくちゃびっくりした。


「メイドさん、冗談やってる場合じゃないですよ!?」


 マツは私のリアクションに冷静にツッコミを入れる。

 そんなの分かってるよ、わかってるけど、なんで私が熱さを感じてるわけ!?


 しかも。


「あ、暑い!」


「し、死ぬぅううう!」


 村人たちは屋上に避難してくるのだった。

 砦の窓や空気穴から炎の熱が伝わってきたらしい。


「ひぇええ、砦のリボンとヘッドドレスがちょっと焦げてます! 防炎加工してたのに!」


 しかも、である。


 マツが作ってくれた、砦のリボンとヘッドドレスが炎の熱で焦げてしまったのだ。

 もちろん、砦だって黒いススがついているし、私の作った看板と花壇もめちゃくちゃになっていた。


 ここで私の怒りに火が付いた。


「お、おのれぇええええ! 私の砦を汚すなんてぇえええっ!」


 私は何が嫌いかって、積極的に建物を汚すやつと脱いだ靴下を床に放置してるやつが一番嫌いなのである。

 ゴブリンもそうだったけど、あんたらに人の心はないのかと言いたい。

 私はぎらりとドラゴンをにらみつけるのだった。




「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「汚したらキレるよね……!」


と思ったら


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