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11.メイド男爵、ご褒美をゲットするよっ! 一方、その頃、ジュピターちゃんはキレていた



「砦ちゃん、ステータスオープン!」


 ゴブリンたちを退けた私は満面の笑みで例の画面を呼び出す。

 にへへへ、死ぬかと思ったほどの攻防戦である。

 きっといい感じのものを用意してくれるのではないか。


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【サラ男爵の砦ちゃんのステータス】 


 ランク:ただのメイド砦(最下級)

 素材:頑丈な岩

 領主:サラ・クマサーン

 領民:1

 武器:なし

 防具:なし

 特殊:なし

 シンクロ率:10% (ざこ卒業!)


※ゆりゆりが足りませんっ! ゆりゆりしませんか?

※防衛戦成功ボーナスとして、プッツンプリンをお出しできます

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「ざこ卒業だって……」


 シンクロ率が上がってザコを卒業したようだ。

 喜んでいいのか悪いのか分かんないし、なんだか罵倒されてる気分。


「メイドさん、ゆりゆりが足りないそうですけど……」


 マツは少しだけはにかんで、そんなことを言う。


 しかし、ここは無視一択である。

 そもそも、前回のは命の危険に迫られての行為なのである。

 べ、別に好きでやったんじゃないからねっ!?


「わ、わかってますよぉ。でも、私は別に嫌だったとかじゃなくて、そのぉ」


 マツはぶつぶつつぶやくけど、私は首を横に振る。

 この砦には二人しかいないのだ。


 安易にマツとゆりゆりして好きになったら困る。

 恋愛とは人を狂わせるものだ。

 お互いを好きな時はいいが、ちょっとでも歯車がずれると嫉妬の炎に身を焦がし、いがみ合ったり、殺し合ったり、恐ろしい結果になると聞く。

 内輪揉めになったら収拾がつかないし。


「喧嘩とかしませんよっ! 私、尽くすタイプですし! 砦とメイドさん、一緒に解明しますよ?」


 マツはふんすと鼻をならして怖いことを言う。

 解明するのは砦だけにして欲しいよ。

 わ、私は別に解明されるようなものもってないしさぁ。



 ま、そんなことよりである。

 私の注目しているのは「プッツンプリン」の文字、これだよね。


 敵をやっつけた私たちにはとっておきのご褒美が用意されていた。

 プッツンはなんだかわからないが、例のプリンに類いするものであることは確かだ。


 プリン、それは私のほっぺたを落としてくれた、美味しいお菓子。

 くふふ、これがあるから頑張れたんだよね。


「プッツンプリン……ですか? 聞いたことがありませんね」


 マツは不思議そうな顔をする。

 どうやら、彼女の郷里でも食べられてはいないものらしい。

 文化圏的に豊かな地域だったと思うけど、プリンとは一体どこの食べ物なのだろうか。


「ふふふ、プリンってのはとっても美味しいスウィーツなのだよっ!」


 取り急ぎ、キッチンに向かった私は熱弁をふるう。

 あのふるふるとした食感が忘れられないよ。

 ゴブリンに殺されるって思ったけど、頑張った甲斐があるというものだ。


 さぁっ、砦ちゃん、この無知な(マツ)を驚かせてくれたまえっ!


「……なんだか、変わった容器に入ってますね。これがプリンなんですか?」


「へ? いや、プリンっていうのは、あれ?」


 マツの質問に固まってしまう私なのであった。

 そう、確かに目の前にはプリンがある。


 しかし、透明のへんてこな容器に入っているのだ。

 上下逆さまだし、私の知っている感じではない。

 ただし、蓋にはプリンの絵が描かれており、我こそはプリンだぞと主張している。

 ひぇえええ、調子に乗った罰だろうか、私こそが無知な女だった。


「このまま食べればいいんですかね?」


 マツは容器の蓋をばばっとはがすと、スプーンを差し込もうとする。

 この子、思い切りがよすぎじゃないのかしら。

 未知の食べ物なんだし、ちょっとは不思議がってもいいと思うんだけど。


 しかし、私は知っている。

 プリンというものは、あのこげ茶色の部分と一緒に食べると、すっごく幸せな気分になることを!

 つまり、スプーンで黄色い部分だけをすくって食べるのは大変モッタイナイのである。


「ちょおっと待って! これはお皿で食べるものなの!」


「えぇえ!?」


 そんなわけで容器を奪い取った私はプリンをお皿の上に置く。

 ささっとひっくり返せば、あの神々しいほど美味しいものが現れるはず。

 ぷりゅんと揺れる姿はこれまた愛らしいのだ。

 ひへへ、たまんないねぇ。


「マツ、これがプリン本来の姿なのだよっ! ……あれ?」


 満を持してひっくり返すものの、異常現象が発生して目を見張ってしまう。

 プリンがお皿に落ちてこないのだ。

 なんで!? どうして!?


「あれ、こんなところに突起がありますよ? えい」


 マツはそう言うと、容器の底についていた透明な突起をぷちっと倒す。

 すると、ぷしゅと音を立てて、プリンが皿に落下するではないか。

 なるほど、プッツンと突起を倒すから、プッツンプリンなのか。


「おぉおおおっ! すごいです! これ、真空技術を利用してるじゃないですか!」


「ひへへ、どんもんよ! 砦ちゃんのプリンはすごいのよ!」


 妙なところで感心するマツである。

 真空技術とやらが何なのか分からないが、とりあえず胸を張っておくことにした。

 それにしても、容器にさえ変わった趣向が施しているとは……。

 恐るべし超古代文明!

 

「お、美味しいっ! しょっぱいのかなって思ってましたけど、これ、美味しいですね! 甘いですっ!」


「でしょでしょ!」


 その後に起こったのは、マツからの大絶賛の嵐なのだった。

 やっぱり、プリンはこの形で食べなきゃだよね!


 口の中にとろけるプリンのお味はこの間のものとはちょっと異なっていた。

 前回のはもっと固くてしっかりした口当たりだったけど、今回のは溶けるようになくなっていく。

 どっちのプリンも美味しいわけで、甲乙つけがたい。

 ぐぅむ、いつの日かプリンのレシピを見つけ出したいところだよ。



 

◇ ジュピター・ロンド伯爵、逃げ出したドラゴンが見つからない



「伯爵様、ドラゴンは未だ見つかっておりませんっ! 危険なレッドゴブリンが群れで行動しておりまして、近づけないと調査隊が戻ってまいりました」


「なんですって!? 相手はゴブリンじゃないの! 何をやってるの、この臆病者ども!」


 部下の報告にジュピターは声を荒げて怒り狂う。

 先日より行方不明になっていたドラゴンがいまだに見つからないという話だからだ。

 

 ジュピターは平時は美少女なのだが、怒らせると厄介な人物だ。

 残忍な性格であり、無能な人物は部下であっても容赦をしない。

 部下たちは平謝りに謝るのだった。


 だが、彼女は知らない。

 群れで行動するレッドゴブリンは非常に厄介なのだ。

 過去には堅牢な城壁を乗り越えて、山城を壊滅させたことさえある。

 軍隊を出して数で押さなければ、とてもではないが戦うべき相手ではない。


 年配の部下の一人はそんな風に現状について弁明をするのだった。


「ふぅ、そう言えば辺境はモンスターの巣窟だったわね。赤ゴブリンの群れとなると、百人ほどは必要ってことかしら」


 それを聞き入れたのか、ジュピターはここで平静を取り戻す。

 彼女も辺境はモンスターが溢れる危険地帯であることを思い出したのだ。

 部下たちの撤退は不甲斐ないことだが、むやみに責め立てても士気を削ぐだけである。

 とはいえ、ここで放置しておいていい問題でもない。


「……わかったわ。砦の件は私が手を打ってあげるわ。あなたたちにジュピター・ロンド様の華麗なる一手を見せてあげる」


 ジュピターはニヤリと口元を歪める。

 彼女はすでに対策を思いついていたのだ。

 この女、わざと部下をしっ責したのであり、なかなかに性格が悪い。


「さ、さすがでございます! 伯爵様!」


「それでこそ、名門ロンド伯爵家の当主でございます!」


 部下たちは彼女のいう「華麗なる一手」とやらに想像が追い付くことはない。

 それでも、彼らはジュピターをたたえ、ジュピターはふふんと鼻を鳴らすのだった。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「もしかして、どっちもチョロいのでは……?」


と思ったら


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