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10.メイド男爵、ゴブリンのお掃除完了しましたっ! しかし、ハグはいけない……




「あのゴブリンども、絶対に許さないからね!」


 私は怒りの炎に包まれていた。

 壁の下から登ってくるゴブリンたちが私の砦を汚すからだ。


 連中はぺったぺったと壁を登ってくるのだが、そのおかげで壁に嫌な粘液がついてしまう。

 屋上までやってきたのを突き落とすんじゃ、壁がかなり汚れてしまうのは明白だった。


「じゃあ、どうするんですか? あんなの攻撃できないですよっ?」


 マツは訝しげに首を傾ける。

 しかし、私にはいいアイデアがあった。

 壁掃除のいいアイデアが!


「マツ、ロープ貸して!」


「ロープ!? なるほど、よぉしきたっ!」


 私は体にロープを結び、もう一端を砦の屋上にある旗の土台に結ぶ。

 ぐいっと引っ張ってみると、強度は十分だし、長さもOK。


 これならいける!


「それじゃ、お掃除してくるっ! ゴブリンの見張りをヨロシク!」


「任されましたぁ!」


 マツの勢いのある返事を聞くと同時に、私は「でぇりゃああああ!」などと叫びながら、砦の壁から急降下。


 そして、目指すはゴブリンの付けた黄色い粘液よごれ。

 片手には雑巾をぎゅっと握りしめて。


 足元には外壁しかないし、もちろん、高い。

 だけど、メイドたるもの外壁掃除ぐらいできて当然だよね。

 王都にいた時はもっと高いところで作業させられたし、命綱があるならへっちゃらである。


 私は外壁を蹴って、汚れのもとへと向かう!


「さぁいくよっ! 壁の汚れは心の汚れ!」


「ぎぃぎゃぴぃ!?」


 突然の私のお掃除開始に悲鳴を上げるゴブリン。

 まさかこっちから出向いてくるとは思いもよらなかったのだろう。


 だけど、私の狙いはあんたじゃない。

 あんたのつけた、そのきったないシミなんだよ!


「ちょおっと失礼いたしますぅううう、ご主人様ぁああああ!」


 私は雑巾を魔法で浄化すると、しゅばばばっと汚れをふき取る。

 

 メイドのお掃除の鉄則!

 それは丁寧かつ大胆にやるってこと!


「ぐぎぴっ!?」


 今回も運悪く、ゴブリンの腕に雑巾が当たる。

 私の雑巾さばきはまさに神速。

 学院時代にはかすっただけでも骨が折れ、肉が削げるまで研ぎ澄ますように指導された。


 それをもろに喰らったら無事では済まないわけで。

 哀れなゴブリンはバランスを崩し、悲鳴をあげながら地面へと落ちていく。


 ごめんね!


 でも、掃除しているところでぼーっとしているのがいけないんだよ。

 指導教官は常に言っていた。

 お掃除の邪魔をするものは国王様でも容赦してはいけないと。

 私も全くもって同意である。

 たとえ、神様であっても掃除の邪魔をさせちゃいけないと思う。


「おぉーい、メイドさん、こっちも汚れてますよっ! べったべたですぅうう!」


 一か所を拭き終わると、マツの声が聞こえてくる。

 もぉおお、しょうがないなぁ!


 そんなわけで私はロープを操ってぐいんと方向転換。

 だだっと壁を蹴ると、怒涛の勢いで外壁掃除をするのだった。


「このズボラなご主人様どもぉおおおお!」


 そうだ、ゴブリンの粘液だけじゃなくて、壁についたコケなんかも落としちゃおう。

 砦の壁掃除はいつかやらなきゃとは思っていたのでちょうどいい。


 懐に入れておいた、苔取りブラシが役に立つんだよねっ!


「ぴっかぴかにしてあげるぅううう!」


 仕上げには王兄様から頂いたハタキで細かいホコリまで完全に落とす。

 このハタキをもらった時には「ふざけんな」と腹がたったものだが、案外、役に立つじゃん。


「ぎげぎゃあい!?」


「ぐぴぎぃ!?」

 

 ゴブリンの悲鳴が断続的に響き渡る。

 だが、私をあれほど恐怖に陥れたゴブリンはもはや眼中に入ってこなくなっていた。


「あははははっ、お掃除楽しいぃいいい! お掃除、さいっこぉおおお!」

 

 私の頭はちょっとだけハッピーになっていたのだ。

 東の国では掃除には不思議な力があると伝えられているらしい。

 私はそれを体験したのかもしれない。

 

 ビバ、お掃除!

 お掃除してれば、嫌なこと全部忘れられるっ!


 

「男爵、見てください、逃げていきますよっ!」


 気づいた頃にはゴブリンは全ていなくなっていた。

 マツいわく、地面に落ちて死んだのも多かったけど、私の掃除に恐れをなして逃げていったのが大半だとのこと。


 なんだかよく分からないけど、掃除している間に勝ったのである。

 壁をピッカピカにできたこともあって大満足の結果。


「やったぁあああ、勝ったぁあああ!」


 二度目の防衛戦を勝ち抜き、私とマツは抱き合って喜ぶのだった。

 それにしても、体のむず痒さはやベタベタした感覚はいつの間にか消え去っていた。

 すっごく不快だったんだけど、あれは何だったんだろうか。


「マツ、本当にありがとねっ! 本当にマツがいなかったら危なかったよっ!」


 生き残れたのはマツがモップをもって立ち向かってくれたからだ。

 私は彼女にぎゅっと抱きついてしまう。

 本当に、本当に、彼女には感謝してもしきれないよ。


「へ、へひゃあ、そっ、そうですか、へひへひ、いきなり大胆過ぎて、そのがっつきすぎと言いますか! いや、その、メイドさんなら嫌じゃないですけどっ!」


 一方のマツは私が抱きしめてきたことに戸惑いの声。


「あわわわ、そ、そうじゃないってば! ええと、今のは普通に友達として!」


 慌てて弁解する私である。

 ぐぅむ、セクハラ行為を働くつもりはなかったのだ。

 本当だよ、私、そっちじゃないし! 




◇ 家政婦は見られたっ! Vol.1



 私の名前はマツと言います。


 私、見たんです、家政婦メイドさんを。


 家政婦メイドさんを見たんですっ!


 家政婦メイドさんは外壁掃除をしながらゴブリンを突き落としていくんです。

 

 お掃除楽しいとか叫びながら、狂ったように笑いながら。


 それはまるで鬼神のごときふるまいで一切の躊躇がありませんでした。


 凶悪なゴブリンたちも若干、引いていたように思います。

 


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「友達同士のハグはいいのでは……?」


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